【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

文字の大きさ
34 / 51

第34話

しおりを挟む

任命式が終わり、
大広間はゆっくりと静けさを取り戻していた。

貴族たちはざわめきながら退出し、
侍従たちは片付けに追われている。

だが――
その中心で、
エリシアはまだ胸の鼓動が収まらなかった。

(……わたし……
 本当に殿下の隣に立ったんだ……)

精霊たちが、
嬉しそうに彼女の周りを舞っている。

――エリシア。

――よく頑張った。

――殿下、ずっとあなたを見てた。

エリシアの頬が熱くなる。



「エリシア」

振り返ると、
アルベルトが静かに立っていた。

任命式の緊張が解けたのか、
いつもより柔らかな表情。

エリシアは慌てて頭を下げた。

「で、殿下……!
 あの……わたし……失礼は……」

アルベルトは、
そっと彼女の肩に触れた。

「失礼なんて一つもなかったよ。
 君は……本当に綺麗だった」

エリシアの胸が跳ねた。

(……殿下……
 そんな……)

精霊たちが、
ひそひそと囁く。

――殿下、言う気だ。

――今日こそ言う。

――大事な言葉。

アルベルトは、
エリシアの手をそっと取った。

「エリシア。
 少し……歩かない?」

エリシアは頷いた。





任命式の喧騒から離れた回廊は、
夕陽が差し込み、
金色に染まっていた。

二人の影が並んで伸びる。

アルベルトは、
ゆっくりと口を開いた。

「エリシア。
 今日……君が隣に立ってくれて……
 本当に嬉しかった」

エリシアは胸に手を当てた。

「わたしも……
 殿下のお役に立てて……
 光栄でした……」

アルベルトは、
少しだけ歩みを止めた。

そして――
エリシアの方へ向き直る。

「エリシア。
 君に……どうしても伝えたいことがある」

エリシアは息を呑んだ。

(……殿下……
 昨日の“続き”……?)


アルベルトの瞳は、
夕陽を受けて揺れている。

「君は……
 僕にとって――」

その瞬間。

ガシャァンッ!!

遠くから、
何かが壊れるような音が響いた。

エリシアは驚いて振り返る。

精霊たちがざわめく。

――嫌な気配。

――荒れてる。

――危ない。

アルベルトの表情が険しくなる。

「……レオンか」

エリシアの胸が凍りついた。

(……レオン様……?)





その頃――
王城の別の廊下では、
レオンが壁を殴りつけていた。

ドンッ! ドンッ!

「なんでだ……
 なんでエリシアが……
 兄上の隣に……!」

侍従たちは怯えて近づけない。

レオンの目は赤く、
呼吸は荒く、
魔力が不安定に揺れている。

(……エリシア……
 お前……
 俺を捨てたのか……?
 兄上を選んだのか……?)

胸の奥で、
何かが壊れていく。

(……許せない……
 兄上も……
 エリシアも……
 誰も……)

その魔力は、
まるで“暴走”の前兆のようだった。




エリシアは不安そうにアルベルトを見上げた。

「で、殿下……
 レオン様が……」

アルベルトは、
エリシアの手を強く握った。

「大丈夫。
 君は……私が守る」

エリシアの胸が震えた。

(……殿下……)

精霊たちが、
二人の周りを守るように舞う。

――エリシア。

――殿下のそばに。

――離れないで。

アルベルトは、
もう一度エリシアを見つめた。

「エリシア。
 さっきの続きは……
 必ず言う。
 君に……どうしても伝えたいから」

エリシアの胸が熱くなる。

(……殿下……
 わたしも……)

夕陽が二人を包み、
静かな回廊に影が揺れた。

だがその裏で――
レオンの心は、
静かに、確実に壊れ始めていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

分厚いメガネを外した令嬢は美人?

しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。 学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。 そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。 しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。 会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった? この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。 一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。

処理中です...