妹に婚約者を奪われた冷たい令嬢は、辺境伯の溺愛で本当の美しさを取り戻す

丸顔ちゃん。

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第17話「御前会議――静かなる断罪」

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御前会議当日。
皇宮の大広間は、いつもより重い空気に包まれていた。

私は深呼吸をし、
震える指先を隠すように手を組んだ。

(……今日、すべてが終わる)

そう覚悟していた。



扉が開き、皇子レオンハルト殿下が入室する。
その隣には――ミレイユ。

淡いピンクのドレスに身を包み、
殿下の腕に軽く触れている。

(……やはり、ミレイユ様も同席)

周囲の視線が、私ではなくミレイユに向けられていた。

「殿下は、あの子を選ぶのだろう」
「リディア様は冷たいからな」
「皇太子妃には向かない」

ひそひそ声が、胸に刺さる。



皇帝陛下が静かに口を開いた。

「本日の議題は、
 レオンハルトの婚約についてである」

会議室が静まり返る。

皇子は一歩前に出て、
まっすぐ私を見た。

その瞳には、
もう迷いはなかった。

「リディア・フェルナンデス」

名前を呼ばれた瞬間、
心臓が強く跳ねた。

「君との婚約について……
 再考を願いたい」

(……再考)

その言葉は、
婚約破棄と同義だった。

私は静かに頭を下げた。

「……理由を、お聞かせいただけますか」

皇子は息を吸い、
決定的な言葉を告げた。

「君といると、息が詰まる。
 僕は……君の無表情が怖い」

(……怖い)

胸が、ひどく痛んだ。

「君は完璧だ。
 だが、僕には“心”が見えない。
 皇太子妃には、国民に愛される明るさが必要だ」

ミレイユが一歩前に出る。

「殿下……わたし、殿下を支えたいですわ。
 殿下の隣に立てるよう、努力します」

皇子は優しく微笑んだ。

「ミレイユ。
 君の素直さは、僕にとって救いだ」

その光景を見ながら、
私は静かに目を伏せた。

(……私は、殿下の“救い”にはなれなかった)

皇帝陛下が言う。

「リディアよ。
 そなたの意見を聞こう」

私はゆっくりと顔を上げた。

声は震えていなかった。

「……殿下のお考えに、異論はございません。
 殿下が苦しいと感じられるのであれば、
 私はその隣に立つべきではございません」

皇子の表情がわずかに揺れた。

(……殿下は、私が泣くと思っていたのだろうか)

でも私は泣かない。

泣き方を、もう忘れてしまっていたから。

皇帝陛下が静かに頷く。

「では――婚約は白紙とする」

その瞬間、
胸の奥で何かが静かに崩れた。

(……終わった)



会議が終わり、
私は一人で廊下を歩いた。

背後から、ミレイユの声が聞こえる。

「お姉様、殿下はわたしを選んだのですわ。
 お姉様は冷たいから、当然ですわよね?」

私は振り返らなかった。

ただ、静かに歩き続けた。

(……これでいい。
 殿下が望んだのだから)

でも胸の奥は、
ひどく痛かった。

それでも私は泣かなかった。

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