王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

密着！ 夏休み旅行！

13

去っていく生徒の後ろ姿を眺め、俺はソファにぐったりと背中を預けていた。

「……はぁ～～～～」
「お疲れっすセンパイ」
「田中くんお疲れ様ー」

ハムをあげて犬の人たちにも帰ってもらう。犬の人たちって名前怖すぎ。めちゃくちゃ怯えてたな嫌がらせ犯。わかる。

「俺めちゃくちゃ怖い人だったぁ～～」
「めちゃくちゃ怖い人やったですね」
「めちゃくちゃ怖い人だったよ」
「やだーーーッッッ！！」

できれば内密に、そして出来れば怪我をさせることなく、親衛隊にも喧嘩を売らず嫌がらせに報復する方法。それが先ほどのダーク田中作戦（俺命名）である。

内容としては簡単で、俺の勢力として認識されていない佐藤くんに嫌がらせの犯人達を呼び出してもらい俺が叱る、というものだった。簡単だね！

さっきの生徒は運良く見なかったけど、基本的に呼び出すタイミングは被るので犬の人に押さえつけられた同志を初手で見ることになり恐怖は倍増というやつだ。

「実力行使に出られた時のために獅童くん呼んだけど～、なんか必要なかったねぇ」
「ずっと聞きたかったんだけど、獅童くん？　ってその、大月くん？　その子が？？」
「せやですね。ちょうど顔面がいいので使っとこっかなち思いました」
「ヒョエ～～～～自己肯定感も頷ける顔！」

ちなみに作戦内容を伝えて呼び出して、今日の初対面でこの美少年モードだった。佐藤くんは今まで知らん美少年を侍らせてると思っていたらしい。気持ちは分かるけど俺の人脈エグすぎだろ。

「実力行使に出たアホをぼてくりこかす二度と笑えない目に遭わせる用心棒、兼怖さ演出の装飾です。なんかおきれーなもん侍らせとるやつって強そうやないですか？」
「今方言に紛れてすごいこと言った気がする」
「そこまでは指示してないかも～」

しかも怖さ演出に関しては犬の人たちがいれば充分である。
敵がけしかけてきた際にあれより恐怖を煽る存在を俺は知らない。

あの、あれに似てる。マッドサイエンティストが人間の名残を残した存在をけしかけてくる冒涜感に。

「なんかすごい酷いこと言われた……」
「まぁまぁ、多分次から関わってこないし……もちろん言ってきたことは許せないけどね」
「追いかけて吊るしときますか？」

吊るしはしない。今日は暴れ足りないのかソワソワしている獅童くんを諌めて、今日この日に言われた悪口あとで全部思い返して悲しくなるんだろうなぁと確信した。

別に復讐したいとかではなく（うっせ～バーカカスうんことは思ってる）そういう確信である。

まぁともかく、これでもうこれ以上は手を出してこないだろう。
全員分脅したし、名前、顔、クラス、出席番号、実家、家族構成、家族の位置まで押さえている。

「俺あれです、あの、センパイが分からんやつにそきつの家族の名前と顔と現在通ってる職場と幼稚園言い始めたあたりでやべ～って思っとりましたよ！」
「僕は『妹さんは来年高校生なんだ、楽しみだね』とか言ってたところかな～」

別に嘘は言ってない。知ってる情報を話しただけだ。

それで言うなら佐藤くんも俺が呼んでるとは思わないが嘘は言ってないみたいな内容で誘い込んでたらしいし。
パニックになって叫んでた生徒から聞いただけだけど。

「意外と噂って馬鹿にできないんだなーって思ったよ」

それどう言う意味ですかァ！

不服な俺とは逆に、三日後くらいに俺は悪のカリスマとして祭り上げられていたし最終的に一族郎党皆殺しにしたとすら言われていた。どうして？