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密着! 夏休み旅行!
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俺の有能ムーブを噂が凌駕していく。誰? 真実は小説よりも奇なりとか言った人。普通の人生送ってて創作の奇妙に勝てたら創作はいらないんだわ。
「見ろよあれ、田中さんだ」
「シッ声上げんな! 殺されるぞ……!」
「嫌がらせの報復に家族を晒し上げたって……なんて恐ろしい人なんだ」
「やったことの落とし前はつけさせる……漢だぜ」
道を歩けばサッとモーセのように人波が割れ、俺の道ができる。食堂での執行部みたいなことを俺にするな。
昇降口までみな頭を下げて顔を上げず、ヒソヒソと言葉を交わし合っている。その声以外音は鳴らず相当に静かだ。
「あの~……みんな? 別におれ、そんな道開けてもらわなくても……普通にしてくれたらいいから」
「いえそんな、滅相もない!!」
「ジブン達の気持ちなんで、これは!!」
「やりたくてやってるんで!! やらせてください!!」
「そんな教師がやる気ないなら帰れとか言ってきた時みたいな態度取らなくても」
「!!!! 田中さんの冗談だ!! 総員笑えーーーッッッ!!!!!!!!!」
ドッッ!!
号令が敷かれた瞬間爆笑が巻き起こる。うおお話の流れで出した例えを思いの外重く受け止められた時の恥じらいレベル100!
「わぁぁあやめて~~!」
「やめッッッッ!!!!!!!!!」
耳に痛い静寂。心も痛い。
そんな命令のように笑われても俺は、俺は……。
ずらりと寮の方まで整列した生徒達に半泣きになる。ギリギリ顔には出さなかったけど。
俺は自分がどう見られているかも、どう振る舞えば角が立たないかも把握するようにしている。姉に似た顔立ちと、一応は役員であることからわりと目立つので。
なので当然今回も田中宗介のパブリックイメージを下調べしておいたのだけれど。
(大体が悪の帝王とか……裏番とか極道の跡継ぎとか根も葉もない噂だったし)
うちは由緒正しくない成金である。一代で成功してるので金の余裕はあるが俺に才能とかは特に無いので普通に落ちぶれると思う。いや甥がどうにかしそうだな。
はぁ~マジで憂鬱。
旧校舎に行けばこんな待たれない──俺の庇護下にある人以外は出禁にしている──し、逃げちゃおっかな。でも、たまには俺が顔を出さない身内だけの時間も必要だろうし。
「よォチャラ男。今日も囲まれてんな」
「っわ……! 会長さま~!?」
ウワーーーーーッッ今日ラッキーデイかも!!!!!!!!!
のしっと肩に腕がかかる。肩を組まれたのだと気づいた頃にはふわりと香る、華やかで品のある香り。苛烈で美しい武藤様によく似合うと常々思っていた。
「ッ……! ……!」
「抑えろ! 田中さんの御前だ……!!」
「騒がしくしたら殺される、騒がしくしたら殺される」
黄色い歓声が珍しく上がらない。俺のせいである。あまりにも恐れられすぎじゃない? 普段誰彼構わずキャアキャア騒いでるのに。
「……ほーう」
「うわなんか企んでる顔!」
「いや? テメーの訳わからん噂も、なかなか役に立つじゃねぇか。よくやった」
えーなんか褒められてる嬉しい。なんで?
「ちょうど、騒がれるのはうざったるいと思ってたんだよ。どうせ帰るところも一緒なんだ。なぁ?」
最後あたりの言葉は耳元で囁かれる。肩を組んだ手があやすように優しく首元を撫で、ゾクゾクと背筋が震える。低い声が色気たっぷりに脳をくすぐり、心臓が跳ねた。
「せいぜい良い隠れ蓑になれよ、裏番さん」
「……えっ」
「おら行くぞ」
「……え!?!?!?!?!?」
全然話聞いてなかった。が、俺の手を恭しく引く仕草で言いたいことがわかってしまう。
「おれと会長さまが一緒に帰る……ってこと?」
「今かよ。話聞かねぇなお前は」
聞ける訳ないだろこっちはオタクだぞマジ距離感考えろよ!!!!!!!
「見ろよあれ、田中さんだ」
「シッ声上げんな! 殺されるぞ……!」
「嫌がらせの報復に家族を晒し上げたって……なんて恐ろしい人なんだ」
「やったことの落とし前はつけさせる……漢だぜ」
道を歩けばサッとモーセのように人波が割れ、俺の道ができる。食堂での執行部みたいなことを俺にするな。
昇降口までみな頭を下げて顔を上げず、ヒソヒソと言葉を交わし合っている。その声以外音は鳴らず相当に静かだ。
「あの~……みんな? 別におれ、そんな道開けてもらわなくても……普通にしてくれたらいいから」
「いえそんな、滅相もない!!」
「ジブン達の気持ちなんで、これは!!」
「やりたくてやってるんで!! やらせてください!!」
「そんな教師がやる気ないなら帰れとか言ってきた時みたいな態度取らなくても」
「!!!! 田中さんの冗談だ!! 総員笑えーーーッッッ!!!!!!!!!」
ドッッ!!
号令が敷かれた瞬間爆笑が巻き起こる。うおお話の流れで出した例えを思いの外重く受け止められた時の恥じらいレベル100!
「わぁぁあやめて~~!」
「やめッッッッ!!!!!!!!!」
耳に痛い静寂。心も痛い。
そんな命令のように笑われても俺は、俺は……。
ずらりと寮の方まで整列した生徒達に半泣きになる。ギリギリ顔には出さなかったけど。
俺は自分がどう見られているかも、どう振る舞えば角が立たないかも把握するようにしている。姉に似た顔立ちと、一応は役員であることからわりと目立つので。
なので当然今回も田中宗介のパブリックイメージを下調べしておいたのだけれど。
(大体が悪の帝王とか……裏番とか極道の跡継ぎとか根も葉もない噂だったし)
うちは由緒正しくない成金である。一代で成功してるので金の余裕はあるが俺に才能とかは特に無いので普通に落ちぶれると思う。いや甥がどうにかしそうだな。
はぁ~マジで憂鬱。
旧校舎に行けばこんな待たれない──俺の庇護下にある人以外は出禁にしている──し、逃げちゃおっかな。でも、たまには俺が顔を出さない身内だけの時間も必要だろうし。
「よォチャラ男。今日も囲まれてんな」
「っわ……! 会長さま~!?」
ウワーーーーーッッ今日ラッキーデイかも!!!!!!!!!
のしっと肩に腕がかかる。肩を組まれたのだと気づいた頃にはふわりと香る、華やかで品のある香り。苛烈で美しい武藤様によく似合うと常々思っていた。
「ッ……! ……!」
「抑えろ! 田中さんの御前だ……!!」
「騒がしくしたら殺される、騒がしくしたら殺される」
黄色い歓声が珍しく上がらない。俺のせいである。あまりにも恐れられすぎじゃない? 普段誰彼構わずキャアキャア騒いでるのに。
「……ほーう」
「うわなんか企んでる顔!」
「いや? テメーの訳わからん噂も、なかなか役に立つじゃねぇか。よくやった」
えーなんか褒められてる嬉しい。なんで?
「ちょうど、騒がれるのはうざったるいと思ってたんだよ。どうせ帰るところも一緒なんだ。なぁ?」
最後あたりの言葉は耳元で囁かれる。肩を組んだ手があやすように優しく首元を撫で、ゾクゾクと背筋が震える。低い声が色気たっぷりに脳をくすぐり、心臓が跳ねた。
「せいぜい良い隠れ蓑になれよ、裏番さん」
「……えっ」
「おら行くぞ」
「……え!?!?!?!?!?」
全然話聞いてなかった。が、俺の手を恭しく引く仕草で言いたいことがわかってしまう。
「おれと会長さまが一緒に帰る……ってこと?」
「今かよ。話聞かねぇなお前は」
聞ける訳ないだろこっちはオタクだぞマジ距離感考えろよ!!!!!!!
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