王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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密着! 夏休み旅行!

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しかし当然オタクは弱い。推しの頼みを断れるわけがなく、しかも推しがごく至近距離で一緒に帰ってくれるのだ。ガチ恋勢じゃなくとも新婚かと見紛う距離感。

「ファンに殺されちゃうよ……」
「ウチのは躾けてある。安心して歩いてやがれ」
「うわっカッコいい」
「皮肉か?」

なんで??
武藤さまは獅童くんの件が起こった後、自ら親衛隊を指揮するようになった。当然過激派ユニコーンは多いがあいつらは武藤様にだけは従うのだ。

俺の賛辞に顔を顰めた武藤様が、じっと見つめてきていた。これは褒めるやつだ。

最近分かった事だが、武藤様は人を不服ながら本心から褒めようとする時相手の目をしっかり見る。

「……大月の事があるまで、俺ァあいつらに無関心だった。テメーと違ってな」
「……ウーン、まぁ、杜撰ウカツ世間知らずだなーとは思ってたけど……」
「お? 言うじゃねぇか」
「最初に言い出したのは武藤様なのに!」

見た目だけはただの親密な友人のように、周囲に聞こえないよう声を抑えて会話を交わす。

普段こんなに近くでは話さないから、なんだか声が近くて吐息の音まで聞こえてきてドキドキしてしまう。本当の友達みたいだ。

「でも生徒会はみんなそうだったろ。もちろんオタクからしても、雲上人に振り向いてほしいと思わない人もいるからな。バランスは元々保たれてたんだ」

ある意味、獅童くんがノイズになってしまった。皆想いをおさえて我慢していたものを、獅童くんがあの、お世辞にも良いとは言えない見た目と言動でぶち壊してしまったのだ。

もさもさの頭にびんぞこ眼鏡。

今でこそ俺の側近であり武力担当の一人として名が知れており畏敬の対象になっているが、入学当初はひどいものだった。

「ハッ、嫉妬か。くだらねぇ」

だが、武藤様のその発言は賛同しかねる。眉間に皺が寄った。

「たとえ誰だろうと、他人の感情を嘲笑う資格はないな」
「ハァ?」
「それが自分に来たものなら尚更、拒絶はしても嘲笑うのは違うだろ」
「…………悪かったよ」

ヨシ。
やったことは悪いことだし、当然自分の後輩に手を出されたら報復はする。だが嫉妬を禁じられたらそれは恋ではないのではないかと俺は思うんだな。

「まっ、迷惑してるのはわかるけど! でもさぁ、嫉妬もエゴも無くなった感情ってもはやただの愛じゃない?」

寮に向かうまでの並木を二人で歩く。ここまでくれば生徒はもう並んでいないので(たまに玄関までずらっと居ることはあるが)パッと離れていつもの距離をとった。

俺の言葉が難解なのか、武藤様は眉を顰めた。

「愛、結構じゃねぇか」
「本気?」
「愛は真心恋は下心ってな。気に入ったヤツの幸せは願って何が悪い」

結構俗な言葉だと思っていたが、武藤様も知ってるのか。俺もそれに関しては確かにと頷けるところがある。

何か見返りを求めて、相手の関心をかいたくて相手に何かするのが恋だ。相手のためになることを無償で行うのが愛だ。

そういう事を話せば武藤様は少し幼なげにきょとんとしていた。珍しい顔に思わず笑みこぼす。
武藤様と恋バナしているのがなんとなくおかしい。数ヶ月前の自分は多分、こうなるとはかけらも思ってなかったことも踏まえて。

「下心で求めてくれないとな。つまんねぇよ」

いや、だって、恋愛系の漫画って大体真心じゃなくて下心じゃないか? それが真心になる過程が良いってのに、下心も嫉妬もエゴもないのは恋じゃないし愛にもなり得ない。身内以外はね。

「……テメー、マジで噂は嘘なんだよな」
「嘘だけど? 童貞です」
「噂が広まる理由みたいな感じだったぞ、今の」

マジで??

ちなみに俺は恋がしてみたいとは常々思ってはいるが、花音さんたちはなんか最近そういう対象ではないので困ってしまった。

多分あの二人に女の子を紹介してもらっても、『花音さんと萌さんのお友達だ』としか認識できないと思う。

「まぁー武藤様が恋じゃなくて愛を重視してんのは解釈一致って感じ。けっこう真面目だもんな」
「真面目とかいうな気色悪ィ」
「急に貶さないでほしい」

わちゃわちゃと二人きりで他愛もない会話をしながら、家路についた。
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