悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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プロローグ

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ふわふわした白銀の髪に、鮮やかなアメジスト。子猫ちゃんのようなアーモンドアイは大きくて、白磁の肌はお人形さんのようで、つるつるの膝小僧とふにふにのほっぺを持つ俺の天使ちゃんだ。
対する俺は消えないそばかすに凡庸な茶髪、日に焼けた肌と同年代の中でも大きめの体格。しかも顔には火傷のあざがあると来た。
あまりにも似ていない。同じなのは瞳の色だけときている。

(まぁ顔面はさすがフィレンツェなんですが……)

雰囲気イケメンの逆と考えてくれていい。そしたら本質ブスでは? いやそれも雰囲気イケメンに入るだろ。
まぁそう、よく見ると顔が良いのだ。家系的にこれで醜いとか凡人は難しいだろ。最低保証顔をしている。

「種って種類とかの種にもなるのになんか漢字にするとえっちな方にも持っていけるの、文字としてのポテンシャルが高いよなー」
「カンジって何。てか多分気持ち悪い話してる。どいて」
「本当にそれはそうなんだけど……」

あまりにもツンツン対応。おいコレがBLゲームのヤンデレ執着依存攻がやって良い態度か? 良いんです、なぜなら俺は悪役令息なので。

とは言え、嫌われすぎな気もする。
ゲーム本編のセリオンはクール系無気力イケメンで、とにかく周りに無関心。それは心を壊した母への諦めと捨てきれない愛のせいだったのだが、そんな彼を主人公が癒やし、いつしかその感謝が恋に変わる──みたいな感じ。

実際、俺が愛人の子供としてこの家に来た時、蔑む他の大人と違ってセリオンは当たり前に受容した。愛人への嫉妬で心を壊し始めた母を抱えてなお。まあ普通に興味なかっただけだろうけど。

「は? ちょっと、何座ってるの。隣に座るの、許可した覚えないんだけど。てかどっかいって。なんで帰って来てるの。無視とかありえないんだけど」
「放置すると弾丸のように罵詈雑言」

ブチギレ仔猫である。え? そんな嫌う? って位ブチギレている。十年以上構って慈しんで愛して来た兄にこの仕打ち。良いけどね。三年くらい前はもうちょい素直でにいちゃんにいちゃんと後ろについて来てくれてたんだけどなぁ。

「まーったく、口が悪い奴め。久々に帰省したお兄ちゃんを前にして拒絶とはな。お兄ちゃんの心が広くてよかったな?」

帰省。
そう、俺は普段魔法学校に通っている。十三歳から貴族の子息たちが入学できる全寮制の魔法学校で、入学後は七年間寄宿舎で過ごすことになる。とはいえ長期休みは普通に家に帰って来てるけど。

ちなみに実技の成績はカスなため実技以外でどうにか挽回しようとしている。特段ダメダメではないが、魔神を封じている影響でデカめのデバフがかかっているらしい。
その点領地に帰ってくれば、土地の力で魔法がわりかし好きに使えるのだ。とはいえ昔のように大規模な保存魔法は不可能だが……。

「……あんたなんてお兄ちゃんじゃない」
「え? 普通に傷付く……」

まぁ、セリオンが俺を拒絶している理由。わからんえみもない。

なにしろセリオンに魔法を教えたのはこの俺である。
原作軸だと心を壊した母と劣情を向けてくる兄に疲れたセリオンは父の書斎で魔法を知り、それを縁とするのだが。自分の支えになるものとは早く出会っておいて損はないだろ?
あと兄ヅラがしたかった。それがデカいです。

だがその影響で、セリオンは魔法に魅了され──魔法以外で物事を判断しなくなっていった。
そのためほぼ魔力無しな俺は無関心どころか嫌悪の対象に成り下がったというわけ。

「なぁ弟よ……可愛い弟……お前は十三になれば、学校に入学するだろう……」
「は? 何急に。“招待状”も来てないのに……」

魔法学校に行くには招待状に選ばれなければいけない。この基準が謎であり、名家の子息が選ばれずその辺の孤児が選ばれることもままある。年齢もばらつきがあるので、ルースが十五歳から入学するのはこのためだ。
こんなにも魔法の才に溢れた可愛い弟も選ばれるかはわからない──が、世界で唯一俺にはわかるのだ。

なぜなら創作者のため。

「そこはほらまぁ、お兄ちゃんの千里眼ということでね。なにしろこーんな可愛い弟、すぐにでも招待状が来ちゃって大変だぜ」
「本当なんなの……」
「でもお前人間との交流力がカスだから」
「ほんとうになんなの??」

キレるなキレるな。お兄ちゃん怖いよ。
ぐぎぎぎと抱きしめる俺を退けようとする弟をよちよちと撫でればさらに嫌そうな顔をされる。キス拒否する猫みたいなものである。

「お兄ちゃんは心配だぜ。猫と妖精しか友達のいないかわい子ちゃん。全寮制男子校なんて獣の巣窟だし、何か嫌なことなんて言われたら耐えられない。公爵家の力を使ってしまうかもしれない」
「やりそうすぎる。やめろ……」
「家が裕福って便利」

結局アーノルドとはアーノルドであったので。
突然目の前に現れた砂糖菓子みたいな弟にとりこになって、今はもう目に入れても痛くないほど溺愛している。昔はセリオンと俺二人きりの世界だったけれど、入学してからはそうもいかない。
心配である。

「人と仲良くする方法、覚えような……」
「はぁ?」

──結局、その夜にセリオンへと招待状が来て。
どうして分かったのかだとか散々詰められたが、戸惑ってるのが可愛かったので額にチューしたらブチギレて帰っていった。

「ただの拒絶だとしてもやりすぎだろうがよ」
『まぁセクハラ過ぎた感はありますがね』
「お? なんだテメェちゅーしてやろうか」

半壊した部屋を魔法でのそのそと直しながら、俺はため息をつくなどしたのであった。

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