2 / 252
プロローグ
1
しおりを挟む
ふわふわした白銀の髪に、鮮やかなアメジスト。子猫ちゃんのようなアーモンドアイは大きくて、白磁の肌はお人形さんのようで、つるつるの膝小僧とふにふにのほっぺを持つ俺の天使ちゃんだ。
対する俺は消えないそばかすに凡庸な茶髪、日に焼けた肌と同年代の中でも大きめの体格。しかも顔には火傷のあざがあると来た。
あまりにも似ていない。同じなのは瞳の色だけときている。
(まぁ顔面はさすがフィレンツェなんですが……)
雰囲気イケメンの逆と考えてくれていい。そしたら本質ブスでは? いやそれも雰囲気イケメンに入るだろ。
まぁそう、よく見ると顔が良いのだ。家系的にこれで醜いとか凡人は難しいだろ。最低保証顔をしている。
「種って種類とかの種にもなるのになんか漢字にするとえっちな方にも持っていけるの、文字としてのポテンシャルが高いよなー」
「カンジって何。てか多分気持ち悪い話してる。どいて」
「本当にそれはそうなんだけど……」
あまりにもツンツン対応。おいコレがBLゲームのヤンデレ執着依存攻がやって良い態度か? 良いんです、なぜなら俺は悪役令息なので。
とは言え、嫌われすぎな気もする。
ゲーム本編のセリオンはクール系無気力イケメンで、とにかく周りに無関心。それは心を壊した母への諦めと捨てきれない愛のせいだったのだが、そんな彼を主人公が癒やし、いつしかその感謝が恋に変わる──みたいな感じ。
実際、俺が愛人の子供としてこの家に来た時、蔑む他の大人と違ってセリオンは当たり前に受容した。愛人への嫉妬で心を壊し始めた母を抱えてなお。まあ普通に興味なかっただけだろうけど。
「は? ちょっと、何座ってるの。隣に座るの、許可した覚えないんだけど。てかどっかいって。なんで帰って来てるの。無視とかありえないんだけど」
「放置すると弾丸のように罵詈雑言」
ブチギレ仔猫である。え? そんな嫌う? って位ブチギレている。十年以上構って慈しんで愛して来た兄にこの仕打ち。良いけどね。三年くらい前はもうちょい素直でにいちゃんにいちゃんと後ろについて来てくれてたんだけどなぁ。
「まーったく、口が悪い奴め。久々に帰省したお兄ちゃんを前にして拒絶とはな。お兄ちゃんの心が広くてよかったな?」
帰省。
そう、俺は普段魔法学校に通っている。十三歳から貴族の子息たちが入学できる全寮制の魔法学校で、入学後は七年間寄宿舎で過ごすことになる。とはいえ長期休みは普通に家に帰って来てるけど。
ちなみに実技の成績はカスなため実技以外でどうにか挽回しようとしている。特段ダメダメではないが、魔神を封じている影響でデカめのデバフがかかっているらしい。
その点領地に帰ってくれば、土地の力で魔法がわりかし好きに使えるのだ。とはいえ昔のように大規模な保存魔法は不可能だが……。
「……あんたなんてお兄ちゃんじゃない」
「え? 普通に傷付く……」
まぁ、セリオンが俺を拒絶している理由。わからんえみもない。
なにしろセリオンに魔法を教えたのはこの俺である。
原作軸だと心を壊した母と劣情を向けてくる兄に疲れたセリオンは父の書斎で魔法を知り、それを縁とするのだが。自分の支えになるものとは早く出会っておいて損はないだろ?
あと兄ヅラがしたかった。それがデカいです。
だがその影響で、セリオンは魔法に魅了され──魔法以外で物事を判断しなくなっていった。
そのためほぼ魔力無しな俺は無関心どころか嫌悪の対象に成り下がったというわけ。
「なぁ弟よ……可愛い弟……お前は十三になれば、学校に入学するだろう……」
「は? 何急に。“招待状”も来てないのに……」
魔法学校に行くには招待状に選ばれなければいけない。この基準が謎であり、名家の子息が選ばれずその辺の孤児が選ばれることもままある。年齢もばらつきがあるので、ルースが十五歳から入学するのはこのためだ。
こんなにも魔法の才に溢れた可愛い弟も選ばれるかはわからない──が、世界で唯一俺にはわかるのだ。
なぜなら創作者のため。
「そこはほらまぁ、お兄ちゃんの千里眼ということでね。なにしろこーんな可愛い弟、すぐにでも招待状が来ちゃって大変だぜ」
「本当なんなの……」
「でもお前人間との交流力がカスだから」
「ほんとうになんなの??」
キレるなキレるな。お兄ちゃん怖いよ。
ぐぎぎぎと抱きしめる俺を退けようとする弟をよちよちと撫でればさらに嫌そうな顔をされる。キス拒否する猫みたいなものである。
「お兄ちゃんは心配だぜ。猫と妖精しか友達のいないかわい子ちゃん。全寮制男子校なんて獣の巣窟だし、何か嫌なことなんて言われたら耐えられない。公爵家の力を使ってしまうかもしれない」
「やりそうすぎる。やめろ……」
「家が裕福って便利」
結局アーノルドとはアーノルドであったので。
突然目の前に現れた砂糖菓子みたいな弟にとりこになって、今はもう目に入れても痛くないほど溺愛している。昔はセリオンと俺二人きりの世界だったけれど、入学してからはそうもいかない。
心配である。
「人と仲良くする方法、覚えような……」
「はぁ?」
──結局、その夜にセリオンへと招待状が来て。
どうして分かったのかだとか散々詰められたが、戸惑ってるのが可愛かったので額にチューしたらブチギレて帰っていった。
「ただの拒絶だとしてもやりすぎだろうがよ」
『まぁセクハラ過ぎた感はありますがね』
「お? なんだテメェちゅーしてやろうか」
半壊した部屋を魔法でのそのそと直しながら、俺はため息をつくなどしたのであった。
対する俺は消えないそばかすに凡庸な茶髪、日に焼けた肌と同年代の中でも大きめの体格。しかも顔には火傷のあざがあると来た。
あまりにも似ていない。同じなのは瞳の色だけときている。
(まぁ顔面はさすがフィレンツェなんですが……)
雰囲気イケメンの逆と考えてくれていい。そしたら本質ブスでは? いやそれも雰囲気イケメンに入るだろ。
まぁそう、よく見ると顔が良いのだ。家系的にこれで醜いとか凡人は難しいだろ。最低保証顔をしている。
「種って種類とかの種にもなるのになんか漢字にするとえっちな方にも持っていけるの、文字としてのポテンシャルが高いよなー」
「カンジって何。てか多分気持ち悪い話してる。どいて」
「本当にそれはそうなんだけど……」
あまりにもツンツン対応。おいコレがBLゲームのヤンデレ執着依存攻がやって良い態度か? 良いんです、なぜなら俺は悪役令息なので。
とは言え、嫌われすぎな気もする。
ゲーム本編のセリオンはクール系無気力イケメンで、とにかく周りに無関心。それは心を壊した母への諦めと捨てきれない愛のせいだったのだが、そんな彼を主人公が癒やし、いつしかその感謝が恋に変わる──みたいな感じ。
実際、俺が愛人の子供としてこの家に来た時、蔑む他の大人と違ってセリオンは当たり前に受容した。愛人への嫉妬で心を壊し始めた母を抱えてなお。まあ普通に興味なかっただけだろうけど。
「は? ちょっと、何座ってるの。隣に座るの、許可した覚えないんだけど。てかどっかいって。なんで帰って来てるの。無視とかありえないんだけど」
「放置すると弾丸のように罵詈雑言」
ブチギレ仔猫である。え? そんな嫌う? って位ブチギレている。十年以上構って慈しんで愛して来た兄にこの仕打ち。良いけどね。三年くらい前はもうちょい素直でにいちゃんにいちゃんと後ろについて来てくれてたんだけどなぁ。
「まーったく、口が悪い奴め。久々に帰省したお兄ちゃんを前にして拒絶とはな。お兄ちゃんの心が広くてよかったな?」
帰省。
そう、俺は普段魔法学校に通っている。十三歳から貴族の子息たちが入学できる全寮制の魔法学校で、入学後は七年間寄宿舎で過ごすことになる。とはいえ長期休みは普通に家に帰って来てるけど。
ちなみに実技の成績はカスなため実技以外でどうにか挽回しようとしている。特段ダメダメではないが、魔神を封じている影響でデカめのデバフがかかっているらしい。
その点領地に帰ってくれば、土地の力で魔法がわりかし好きに使えるのだ。とはいえ昔のように大規模な保存魔法は不可能だが……。
「……あんたなんてお兄ちゃんじゃない」
「え? 普通に傷付く……」
まぁ、セリオンが俺を拒絶している理由。わからんえみもない。
なにしろセリオンに魔法を教えたのはこの俺である。
原作軸だと心を壊した母と劣情を向けてくる兄に疲れたセリオンは父の書斎で魔法を知り、それを縁とするのだが。自分の支えになるものとは早く出会っておいて損はないだろ?
あと兄ヅラがしたかった。それがデカいです。
だがその影響で、セリオンは魔法に魅了され──魔法以外で物事を判断しなくなっていった。
そのためほぼ魔力無しな俺は無関心どころか嫌悪の対象に成り下がったというわけ。
「なぁ弟よ……可愛い弟……お前は十三になれば、学校に入学するだろう……」
「は? 何急に。“招待状”も来てないのに……」
魔法学校に行くには招待状に選ばれなければいけない。この基準が謎であり、名家の子息が選ばれずその辺の孤児が選ばれることもままある。年齢もばらつきがあるので、ルースが十五歳から入学するのはこのためだ。
こんなにも魔法の才に溢れた可愛い弟も選ばれるかはわからない──が、世界で唯一俺にはわかるのだ。
なぜなら創作者のため。
「そこはほらまぁ、お兄ちゃんの千里眼ということでね。なにしろこーんな可愛い弟、すぐにでも招待状が来ちゃって大変だぜ」
「本当なんなの……」
「でもお前人間との交流力がカスだから」
「ほんとうになんなの??」
キレるなキレるな。お兄ちゃん怖いよ。
ぐぎぎぎと抱きしめる俺を退けようとする弟をよちよちと撫でればさらに嫌そうな顔をされる。キス拒否する猫みたいなものである。
「お兄ちゃんは心配だぜ。猫と妖精しか友達のいないかわい子ちゃん。全寮制男子校なんて獣の巣窟だし、何か嫌なことなんて言われたら耐えられない。公爵家の力を使ってしまうかもしれない」
「やりそうすぎる。やめろ……」
「家が裕福って便利」
結局アーノルドとはアーノルドであったので。
突然目の前に現れた砂糖菓子みたいな弟にとりこになって、今はもう目に入れても痛くないほど溺愛している。昔はセリオンと俺二人きりの世界だったけれど、入学してからはそうもいかない。
心配である。
「人と仲良くする方法、覚えような……」
「はぁ?」
──結局、その夜にセリオンへと招待状が来て。
どうして分かったのかだとか散々詰められたが、戸惑ってるのが可愛かったので額にチューしたらブチギレて帰っていった。
「ただの拒絶だとしてもやりすぎだろうがよ」
『まぁセクハラ過ぎた感はありますがね』
「お? なんだテメェちゅーしてやろうか」
半壊した部屋を魔法でのそのそと直しながら、俺はため息をつくなどしたのであった。
844
あなたにおすすめの小説
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?
パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」
「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」
カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦
初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました!
その後のお話もあるので良ければ
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼2025年9月17日(水)より投稿再開
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる