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プロローグ
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誰の弟がおガキ様だ。失礼なやつだな……。
確かに多少王子に利く口とは思えないが、可愛いからいいのだ。この世が可愛いだけで回ったらセリオンはきっと無双できていたのだろうな。
「箒は飛ぶ上で重要な役割を果たすからな。そろそろ俺のお下がりではなく、専用のものを作って貰うべきだろう」
「ヘェ~。学級長も作ってもらったほうがいいんじゃね? ろくに飛べもしないんだから」
「…………土産に、お前の性格を治す薬でも買ってきてやろう。法に適してなくとも構わないか?」
和気藹々(?)と火花を散らす俺たちを見ながら、セリオンの顔は晴れることがなかった。やはり身内ノリはおもん無いのか。こいつは身内では無いが。
「じゃあ……」
「?」
採取の手も止めて何やら不満そうなセリオンにしゃがんで視線を合わせる。
弟は毎日何らかの不満があるのだが、それなりに彼にとっては正当な理由があるらしい。どれほど正当性があるかというと、昨日気に入っていた葉っぱが今日は無いとか鍛錬の剣がお気に入りから新調されたとかだ。
「……何で今日、遊びに行くの。箒、一日ちゃんと見るってあんたが言ったのに……」
「かッッッッッッ」
想定よりデケェ声が出た。ヴィンセントは急に大声を出した俺に慣れないのか何だこいつみたいな顔をする。ウルセーーッッッこんなに可愛いんだから“かッッッッ”の一つも出るだろうがよ!!
(でもそっか、一応外面的には俺とヴィンセントが今日街歩きに出てる設定だから……セリオンにとっては約束を蔑ろにされたようなものなんだ)
全く一緒に出かける気がなかったから忘れてたぜ! ヴィンセントの方をチラリと見上げると、静かに首を振られた。
まぁ俺としてもセリオンに娼館の紹介はしたくないし──まだ早い──幼い彼が誰に事情を漏らすか分からないし、できれば秘密にした「ちっちゃい頃から、大人になったら道具買ってくれるって言ってたのに、嘘つき」
「ごめんなセリオン俺大嘘ついてるだけでヴィンセント殿下とは一緒に行動しないんだ」
「おーーーい」
「事情があってヴィンセント殿下が抜け出すのに協力しなきゃいけなくてな。だから今日は予定通り一緒に箒を見に行こうな、公爵家の財産が尽きるくらいの箒を買ってやるから」
「全部言うし家名に対して気負いがなさすぎ」
じわっと大きな目に滲んだ涙を見た瞬間、俺の記憶が一瞬消えた。気づいたら全部言ってた。普通に考えて王子の名誉と俺の事情を天秤にかけてセリオンを取らないわけないから。
あまり思い上がるなよ。協力者を間違えたな!
「もう早速行こうか、朝露は適当に保管して仕舞えばいいし今日くらいサボってもまぁ構わんだろう」
「うわっ普段の学級長なら絶対言わない言葉すぎなんだけど」
「何ついてきているんだ俺は今から弟との蜜月がある帰れそれか死ね」
「暴言すぎ。さっき王子の前で云々言ってだ人とは思えない。違うのかもしれない」
残念ながら同じ人だ。
ヴィンセントと俺は同じクラスだが、この三年間俺が学級長──クラス委員みたいなもの──を務めている。
本編軸だと十八のヴィンセントに骨抜きになった俺が二年目にして役割を譲っていたが、この軸の俺は絶対にそんなことはしない、悔しいからである。
「さっセリオン、こんな虫は無視して屋敷に戻ろう。虫だけにっつってな! ワハハ!」
「待って俺今初めて学級長の笑顔見た?」
「何でいっつもあんたはつまらないことばかり言うの?」
きびし~!! でも良いんだ、セリオンが俺のこと好きなので……。一緒に買い物に行けるくらいには懐いているので……。
気もそぞろだったらしく、いつもより少ない量の収穫を握りしめるセリオンを抱き上げて運ぶ。
細い体に小さい手足は、くらくらするくらい頼りない。
「──こんなの俺の学級長じゃね~……!」
誰がお前のだこのクソガキ。
確かに多少王子に利く口とは思えないが、可愛いからいいのだ。この世が可愛いだけで回ったらセリオンはきっと無双できていたのだろうな。
「箒は飛ぶ上で重要な役割を果たすからな。そろそろ俺のお下がりではなく、専用のものを作って貰うべきだろう」
「ヘェ~。学級長も作ってもらったほうがいいんじゃね? ろくに飛べもしないんだから」
「…………土産に、お前の性格を治す薬でも買ってきてやろう。法に適してなくとも構わないか?」
和気藹々(?)と火花を散らす俺たちを見ながら、セリオンの顔は晴れることがなかった。やはり身内ノリはおもん無いのか。こいつは身内では無いが。
「じゃあ……」
「?」
採取の手も止めて何やら不満そうなセリオンにしゃがんで視線を合わせる。
弟は毎日何らかの不満があるのだが、それなりに彼にとっては正当な理由があるらしい。どれほど正当性があるかというと、昨日気に入っていた葉っぱが今日は無いとか鍛錬の剣がお気に入りから新調されたとかだ。
「……何で今日、遊びに行くの。箒、一日ちゃんと見るってあんたが言ったのに……」
「かッッッッッッ」
想定よりデケェ声が出た。ヴィンセントは急に大声を出した俺に慣れないのか何だこいつみたいな顔をする。ウルセーーッッッこんなに可愛いんだから“かッッッッ”の一つも出るだろうがよ!!
(でもそっか、一応外面的には俺とヴィンセントが今日街歩きに出てる設定だから……セリオンにとっては約束を蔑ろにされたようなものなんだ)
全く一緒に出かける気がなかったから忘れてたぜ! ヴィンセントの方をチラリと見上げると、静かに首を振られた。
まぁ俺としてもセリオンに娼館の紹介はしたくないし──まだ早い──幼い彼が誰に事情を漏らすか分からないし、できれば秘密にした「ちっちゃい頃から、大人になったら道具買ってくれるって言ってたのに、嘘つき」
「ごめんなセリオン俺大嘘ついてるだけでヴィンセント殿下とは一緒に行動しないんだ」
「おーーーい」
「事情があってヴィンセント殿下が抜け出すのに協力しなきゃいけなくてな。だから今日は予定通り一緒に箒を見に行こうな、公爵家の財産が尽きるくらいの箒を買ってやるから」
「全部言うし家名に対して気負いがなさすぎ」
じわっと大きな目に滲んだ涙を見た瞬間、俺の記憶が一瞬消えた。気づいたら全部言ってた。普通に考えて王子の名誉と俺の事情を天秤にかけてセリオンを取らないわけないから。
あまり思い上がるなよ。協力者を間違えたな!
「もう早速行こうか、朝露は適当に保管して仕舞えばいいし今日くらいサボってもまぁ構わんだろう」
「うわっ普段の学級長なら絶対言わない言葉すぎなんだけど」
「何ついてきているんだ俺は今から弟との蜜月がある帰れそれか死ね」
「暴言すぎ。さっき王子の前で云々言ってだ人とは思えない。違うのかもしれない」
残念ながら同じ人だ。
ヴィンセントと俺は同じクラスだが、この三年間俺が学級長──クラス委員みたいなもの──を務めている。
本編軸だと十八のヴィンセントに骨抜きになった俺が二年目にして役割を譲っていたが、この軸の俺は絶対にそんなことはしない、悔しいからである。
「さっセリオン、こんな虫は無視して屋敷に戻ろう。虫だけにっつってな! ワハハ!」
「待って俺今初めて学級長の笑顔見た?」
「何でいっつもあんたはつまらないことばかり言うの?」
きびし~!! でも良いんだ、セリオンが俺のこと好きなので……。一緒に買い物に行けるくらいには懐いているので……。
気もそぞろだったらしく、いつもより少ない量の収穫を握りしめるセリオンを抱き上げて運ぶ。
細い体に小さい手足は、くらくらするくらい頼りない。
「──こんなの俺の学級長じゃね~……!」
誰がお前のだこのクソガキ。
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