悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

文字の大きさ
12 / 252
プロローグ

11

しおりを挟む
最終的に、朝露の採取はヴィンセントも同行する事になった。
今日も昼間に女遊びに行くらしく──酒場とかで出会いを待つらしい。勝手にしてくれ──俺と出かける約束を取り付けだしたので、セリオンがついでに採取に呼んだのだ。

「ほんと最悪なんだけど。お前らこんな朝早くから起きてんの?」
「謝罪はもうしたはずだが」
「王族のくせに錬金術もできない奴に言われたくない」
「こっ、このガキ!」

誰がガキだ俺の可愛い弟をつかまえて。

怪我をさせた相手を治療するとかいう無駄行動をさせたのには申し訳ないと思っている。し、朝五時なので眠いのはわかる。
分かるが我らがプリンセスがやりたいと言っているので仕方がないね。

さっさと採取しながらヴィンセントを観察する。

文句を言いながらも動きは迅速。
教科書通りの真面目な動きだが、本人の要領の良さで乗り切っている。俺が初めての頃とは比べ物にならない。

「別にいちいち測らなくていい。どうせ後で精製するし、採取が優先だ」
「は? 言えやし」
「言った」

言ってなかったらごめん。
女性の理想を詰め込んだみたいに甘い顔立ちは朝早い気だるさが滲み出ていて、それがまた匂い立つ色香を醸し出している。
朝の白んだ淡い光によく似合う美しい男である、思考回路は最悪だけどね……

セリオンはさっきからなぜか不機嫌で、普段よりずっとヴィンセントに当たり散らかしている。一応相手は王子であることも自覚しているはずなのだが……

「セリオン。殿下の前でその態度は何だ、シャキッとしなさい」

どうせ君がこの家を継ぐんだから──とは言わない。未来予知はこの好奇心旺盛な弟を刺激しすぎるらしく、言っちゃ悪いが碌なことがないので。

「……った」
「?」

パシリと言い含めると、セリオンがふわふわの頭を下げて何やらモゴモゴ言う。しゃがんで首を傾げてやれば聞こえてないのに気づいたらしく、普段より少し大きな声で拗ねた顔をした。

「……今日は箒見に行くって言った」
「? そうだな」

ええーーーッッッ覚えてたのセリオンきゅん相変わらず世界一可愛くまた天才的な頭脳をしていらっしゃる~!!!!!!!!!

そう、セリオンの入学届が来たために、入学セット一式を買わなければならなくなったのだ。

幼い頃に使わなくなったお道具箱はボタンや小さなペンの一つにまで名前を書かなければならない。
俺が使わなくなったものをいくつか渡したが、お下がりも申し訳ないしな。

しかしそれ以外にも新調しなければいけないもの──七年通して使うものや逆にもう捨ててしまったもの──もある。箒もその一つで、今日はそれを見に行く約束があったのだ。

(いくら金払って欲しいとは言え、お兄ちゃんと一緒に入学準備したいとか可愛すぎるな)

本格的に細かい必要物を買うのは今週末……明後日だが、箒屋は週末に空いていないのだ。落下版ハリポタみたいなシナリオだからインフラでも負ける。

「はぁー? 買ってくりゃいいだろ」
「あんたはついてこないでいい」
「どうしてそんなに人を煽るの? このおガキ様」


しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼2025年9月17日(水)より投稿再開 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

処理中です...