悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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プロローグ

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翌日。
俺はやはり朝露を採るためセリオンを起こしに行き、上半身を剥かれていた。
……なぜ……?

「せ、セリオンくん? そういう事に興味津々なのはいいけど、お兄ちゃんにするのはちょっと違」
「黙って」
「ええ」

冗談は置いておいて。
微かに明るくなっていく窓のそばに寄りかかり、寝巻きのまませっせとローブをたたむセリオンを眺める。いまだに少し肌寒いからか、腕をさすれば鳥肌が立っていた。

昨日から王子が滞在しており人は増えているが、こんな朝に起きているのは俺とセリオンくらいだ。二人きりだね……♡

「? なんか不愉快なんだけど……」
「か、勘のいいガキ!!」

さすがセリオンである。兄の心を読むなんてお茶の子さいさいということか。もう魔法の天才とかそういう話じゃなくなってきたな。

「……やっぱり」
「ん?」

セリオンの大きな目が痛々しげに歪む。普段無愛想無表情の弟なので、ここまで感情を発露するのは珍しい。
えっ、なんか可哀想なんだけど…………。なんでこんな捨てられた子犬みたいな顔してるの……? お兄ちゃんが拾って一生お世話してあげるから……。

ずぼしっ

「っでぇ!!!」

母性(?)を漲らせた次の瞬間俺の腰を思い切りセリオンがついた。つっついたとかそういう可愛い物じゃない、もはや“突き”。普通に攻撃である。
骨盤に当たった!!

「なっ、何どうしたのセリオンくん!? 俺そんなに悪いことした!?」
「……やっぱり痛いんじゃん」
「ンまぁそりゃダメージ受けたら痛いよ!? お兄ちゃんは人間なので……」

涙が滲む。本当に痛い。殺しに来ている?
セリオンといえばさすさすと俺の腰を撫で始める。飴と鞭……? ヒモの素質もある。

「腰、むらさきになってる。昨日、変な動きしてたから」
「エ……」

そういえば、水面下でヴィンセントと攻撃しあってた時に青痣なるわとか言ってたな……。
宝石みたいなお目目を伏せるセリオンにつられて、今現在小さな手が撫でている場所を見る。

俺は彼より三つも年上で、体も大きい。セリオンの『おてて』みたいな手では、腰の一部を覆うことも出来ない。
セリオンの白皙の肌からちらちらと、焼けた肌にくっきりとついたドス黒い紫がみえている。

……心配してくれてる、ってこと……?

「ヤダ……どれだけ天使になるつもりなんだセリオンは……空の上なんかに渡さないからね、セリオンにはお兄ちゃんだけなんだぞ……」
「うるさい。手当する」
「ッダァイ待って白衣の天使手当雑!!!!!!!!!」

とんでもない痛みにひっくり返れば、セリオンが氷魔法で生成した氷を俺の腰に押し当てていた。

いや冷やすのは正解なんだが、冷やし過ぎなんだよ皮膚くっついてるから!!
内出血と凍傷を戦わせたら相殺できると思ってる??? それで出来るのは凍傷と内出血を兼ね備えた最悪コンディションだぞ!!

「オッケーセリオン心配ありがとう今すぐ手を離せ魔力を切るんだお兄ちゃんを凍らせたくないなら」
「え……………………うん」
「熟考……?」

もう先ほどの比じゃないくらい鳥肌が立っている。ほとんどターキー。俺がローストチキンですという事でね。

「セリオン、ローブ返して。自分で処置しておくから……なんですかその不満そうな顔は」
「信用ならない」
「心配してくれる俺の弟は思慮深くて可愛い」

出来の悪いラノベタイトルみたいなこと言っちゃった。
セリオンは俺に処置させたくないのか、俺のローブをぎゅっと抱きしめたままイヤイヤしている。可愛い。甘えてくれてるのかな?? お兄ちゃん調子乗っちゃうぞ??

「なんでいい子なんだ、セリオン……お兄ちゃんがチュウしちゃお!」
「いいから癒し手のとこ行く」
「もしかしてそれ王子のこと言ってる?」

不敬だな一国の王子様を……。
ちゅうはガン無視されたがローブを投げつけられ、もそもそと上から着る。
普通に寒いのでシャツとかも貰いたいが、まぁ魔術師なんか見てくれだけ整えられてたらそれでいいみたいな偏屈研究者の集まりだからな。

小さなおててが俺の手のひらを両手で握るので、ベッドから立ち上がった。まだ成長期のきていないセリオンは年齢が一桁だった頃から変わらず可愛らしい。

(そういえば、昔は俺が怪我しても何も言わなかったよな……)

まぁそんなに大きな怪我をしたこともないが。
幼い頃のセリオンは俺を心から信頼していて、多少の怪我ならすぐに治るんだと思い込んで俺も大変な目にあったことがある。
弟の期待を裏切るくらいなら死ぬぜ!!

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