悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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いざゆけ魔法学校

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その、俺とヴィンセント添い寝事件以降。どうもそこかしこから怪しい目で見られているような気がする。
ヴィンセントが俺にやけに絡んでくることとか、情報通の人間なんかはフィレンツェに宿泊したことも知っており、そこから芋蔓式にそこでも添い寝していたことがバレ、今は噂段階でまことしやかに囁かれている程度であった。

まあそうなると、清廉潔白な学級長、という肩書きもなかなか限界があるというわけで。
主にヴィンセントの態度のせいである。あいつが余計に絡んでこなければ俺はまだ舞えた。
今は舞えないのかって?

「……あのさあ、何のつもり?」
「何のつもり、とは」

こういうことである。
放課後の校舎裏。ベッタベタな場所に呼び出されたかと思えば、ヴィンセントの取り巻きとか多分ファンとかそういう人たちが集って俺を睨みつけていた。
ヴィンセントの彼氏(?)はいなかった。ああいう素直なやつが悪い男に騙されているところは見ていられないからなぁ。別れたかな。

「いや、なんか誤魔化してるつもりかもしれんけどバレバレだからね? 学級長、ヴィンセントと寝てるでしょ」

グァーーッッ心外すぎる!!!!!!!!!
地球がひっくり返ってもあり得ないことを言われて流石に動揺するが、彼等にとっては本気らしい。こういう思考の違いがあるから争いってなくならないんだな。

彼等にとってヴィンセントという男は、あの甘い顔に甘い声で誰も彼もを魅了するとびきりの雄なのだろう。男のくせに自分より強い雄に屈服し、それが全人類の幸せだと信じ込んでいる。

「大体ヴィンセントだって、なんでこんな火傷男……」
「娼婦の息子ってマジ? お母さん譲りの名器なんだ?」
「体で取り入ったんでしょ。勘違いしないほうがいいよ、ヴィンセントがほんとにあんたのこと好きな訳じゃないんだからさぁ」
「そうそう、困ったやつだよねぇあいつ」

本当に困ったちゃんである。あいつのせいで俺最近すごい量のトラブルに巻き込まれるな……。
遠い目をして茜色の空を見つめていれば、鳥のような生き物がバサバサと飛んでいった。

大きく四角に途切れている空。赤く染まった城門。空は美しく、風は心地よく、俺は囲まれて身動きも取れず四肢を拘束されていた。

というか今思い出したけどこれルースの取り巻き嫉妬イベントだな。攻略対象のルートに入ったらアーノルド筆頭にこのイベントが起こり、好感度によってヤられる前に助けに来てもらったりするのだ。じゃあ俺今ヴィンセントルートってこと?? やばすぎあいつ絶対助けに来ないよ。

「……ひとまず、平和的に解決できるのならばそうしたいのだが」
「は? 無理に決まってるじゃん」
「そうだろうな」

二度とヴィンセントに関わるな、とか言われそうだけど学級長としてもそれは困る。校則違反をやめてほしいため。セリオンがいる期間だけでいいからマジで大人しくしていてほしい。

「お前達、それ以上は拘束違反になることは認識しているか?」

周囲を見回せば取り巻きであった男達が一瞬で殺気立つ。七人くらいかな。七人!?!?!?!?!? この数をどう取り込んだんだアイツは、何がそんなに魅力的なんだ。
キャラクターとしては魅力的だと思っているが、現実で関わるにはスライムと戯れるより心躍らないんだけど。
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