悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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いざゆけ魔法学校

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「あのさぁ、学級長。どんな状況かわかってんの?」
「呑気すぎない? 校則とか今関係ないでしょ、あんた今、尊厳奪われかけてるんだよ」
「助けでも求めたらいいじゃん……ああ、嫌われてるから無理なんだっけ!」

性格悪こいつら。
ネチネチと詰められている。シナリオ通りに行けば俺はこの後こう、エロいことをされるのだろう。確か。ルースみたいな美少年ならともかく俺にして楽しいか?

「ま、いっか! ヴィンセントが良いんなら俺たちのことも楽しませてくれるよね?」

シナリオ通りに行ってる!!
分かりやすいなお前たち。

「こんな顔の奴とヤっても楽しくないけどな」
「それは同意。もうちょっと綺麗な顔しててくんないとさ」

しかもなんか言われてるし失礼すぎる。
いや、喜ばれても困るけど。俺はまだ後ろの潔癖を失うつもりはないぞ!! 前の高潔も失われてないっつーのに!!
取り巻きのうちの一人、端正な可愛らしい顔をした少年とも言える男が何やら呪文を唱える。ぎし、と固まる身体。確か催眠の一種だったか?

「拘束魔法だと後ろの具合も悪くなっちゃうからさ、感度はそのまま~ってことで」
「良いじゃん」
「まっせめて具合は良くないと困るもんね」

下卑た笑いだ。口は動かせるらしい、無言のまま伸ばされた手を見つめていれば、コートに手をかけられる。

「魔法での私闘は禁止だぞ」
「まーた校則。それ以外言えないんだ」

けらけらと笑う姿はあくまで天使のよう。
ヴィンセントの取り巻きとしているだけあり、可愛らしく美しく、まさに陽キャ一軍といった感じ。

「混乱してるんでしょ。カワイソー」
「友達もたっくさん呼んだから、学級長遊んでもらいなよ」

友達、というかまぁ平たく言えば俺を傷つけるための人だろうな。回されたってなったら清廉潔白な学級長様は深く傷ついてしまうだろうと思われたのだろう。その通りである。本当にやめてほしい。
身体は催眠状態でうまく動かない。迫ってくる手が乱暴にブローチを千切り、コートを無理やり脱がせ、背中が地面に押し付けられる。
湿った感触が背中を濡らし気持ちが悪い、いつの間にかシャツとズボンだけの姿にされていた。

「うわーっ、身体傷だらけ! ヴィンセントったらこんなのに欲情するくらい溜まってたわけ?」
「最近遊んでくんなかったよねぇ~。僕たちに声かけてくれたら良かったのに」

体が傷だらけなのは十中八九ヴラド先輩の無茶振りに次ぐ無茶振りのせいだろう。ちなみにヴィンセントには見せたことがない、確実に怒られるので。
前開きのシャツが開かれる。脱がされているな。
うーん、どこまでやったら校則違反なんだっけ?

「校則違反は即刻退学。それを理解した上でお前達は今こんなことをしているわけか?」

俺がそう首を傾げると、その取り巻き達は顔を見合わせ口々に嘲笑した。

「わかってるよ、でもその頃にはアンタのプライドなんてズタズタにされてる」
「てか、恥ずかしくないわけ? 天下のおつよ~いフィレンツェ様がこんな僕らに負けて犯されましたーって!」
「貧民の子なんでしょ? 貴族の遺伝子なんて貴重じゃーん! 逆に感謝してよね」

確かこいつらは成り上がり貴族の出身だったか。古くから続く伝統的な血筋は束縛を生むし、それだけで判断するものではないが、生まれた頃よりの教育水準における価値観の差は存在する。

この世界は金があればあるほど精神が清涼だ。そう言う世界で過ごすことができるから。

言うなれば、家庭環境すら無菌室のようなもの。
当然そこから飛び出すことを望む者もいるが、決して生まれによる上品さは消えることがない。
当然心の清らかな貧民もいれば性根の腐った大貴族も山ほどいるので一概には言えないがな。

「しかし……自分の状況が把握できないというのも教養のなさとも言えるだろうか?」
「は? 何言ってんの」
「基本的に高位の貴族であればあるほど、王族についてフィレンツェの家にはこうべを垂れる。あまりここで家の名前を振りかざしたくはないが、必要があれば使わないとも言っていない」

別にそれはフィレンツェが高位の貴族だからではない。いや、それはそうなんだが。公爵ってすごいんだぞ。
戸惑っている取り巻き達はまだ分かっていないみたいだ。名前、紹介しようかな。いや良いか。

「理由としては──フィレンツェはイカれていて、何をするかわからないからだ」

どうせもうすぐ消えるんだから。

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