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二年目の魔法学校
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何度も顔を出した交流会。本校舎の、皆が集まるホールで行われるものだ。戴冠式と違ってテラスで風に煽られなくて言い分、髪型含めて気合の入っている子供達が大変多い。微笑ましいことだ。
かくいう俺もかっちりとしたオールドスタイルの燕尾服を着込むことにしている。元々交流会という名目なので実のところ制限は緩いのだが、昔のジャケットやシャツは胸がきつかったのだ。
新しく仕立てた分は傷の多い体を覆い隠してくれるし、何よりセリオンとお揃いだ。
「あれ? 学級長じゃん」
「……ん。ヴィンセント? と、大鷲寮の生徒か。交流会ならもう始まっているぞ」
「知ってっし! てか何その服、制服とローブ以外初めて見たんだけど? あれ以外持ってたんだぁ~?」
ウオーッッなんで絡んで来るんだお前マジ! 友達少ないのか? 大はしゃぎか?? 俺は故郷に友達いるのにな。
学年は一つ下だろうか? 着飾った大鷲寮の生徒が戸惑ったようにヴィンセントを見つめている。ヴィンセントといえばだらしないとまで行く程度に着崩したシャツにジャケット、ベストだが、何故かそれがだらしなく見えない。
「いつも思うが、お前の正装は見事なものだな。素材がいいから何でも似合うんだろう。羨ましい限りだ」
「ッ、まぁ!? 違うしねお前みたいな凡人顔と!! 王族ですし!? 学級長にもまともな審美眼あったんだぁ~!?!?」
「うるさ」
少なくとも緩い交流会程度なら奇異の目で見られることはないだろう。むしろ見惚れられるくらいだろうか? 明るいベージュのベストが嫌味なくらいに似合っている。
交流会のパートナーとは待ち合わせて赴くものだ。ホールに繋がる広めの渡り廊下で他人に絡むもんじゃないが、ヴィンセントはその辺考えてなさそうだ。
「さて、これでいいか? 用が終わったらさっさと行け。すまないな邪魔して」
「あっいえ、大丈夫です……! ええと……」
「アーノルド=フィレンツェ。獅子寮五年だ。フィレンツェとはいえ大して魔法も使えないし、適当にアーノルドとでも呼んでくれたらいい」
「はーいよろしくなーアーノルド!」
「なんで今更お前に自己紹介するんだ」
ヴィンセントの中で五年間とか虚構だったのか? 記憶ないのか? お前。
変なノリにドン引きしていれば、フィレンツェの名を聞いて一瞬青ざめていた生徒が微かに笑いを漏らす。なるほど、同伴者の緊張をほぐしたわけか。
「一応この陰茎脳王子とは同じ学級で、監督生を務めている。言ってくれれば二度と笑えないようにするから、何かあれば気軽に相談してくれ」
「気軽に二度と笑えない目に遭わせないでほしい。あと陰茎脳王子って何?? 凄いこと言うじゃん自国の王子にさ……」
「嫌ならいい加減節度を覚え、俺に迷惑をかけないでほしい。あとこの間お前窓割ってたけど犯人を俺に偽造したな? 偽造魔法かかってたぞ」
「ワァ凄い学級長魔法の鑑定だけはピカイチ!」
「うん、解いておいたからな」
「ヤベそういえばもう使えるんだった……」
何で結構な時間経ってるのに俺が魔法使えるのに慣れてないんだよ。大体一年くらい経ってるぞもう。マーガレット先生に泣くほど怒られればいいのに……。ちなみに俺は結構な頻度で本気で泣くくらいには怒られていたぞ、流石に低学年の頃だけだが。この歳になると多少のことでは泣かないからな。
こんなふうに、長らくこいつには苦労をかけさせられたが、他人を口説く術なんかは見習ってやってもいいかもしれんな……
「──アーノルド! ごめん、待たせて……」
「セリオン!」
なにしろ、俺は今から世界一きゃわいい弟のエスコートをしなければならないのだから……!
廊下の曲がり角から現れて走ってくる弟を抱き留める。ああ、せっかくお兄ちゃんがやってやった髪型が崩れちゃって。セクシーになっちゃってるぞもう!
純白の小物で統一したフォーマルな燕尾服を着こなした少年が、その時特有の無垢さと危うさを振りまいている。うーんやっぱり基本に則ったやつ注文してよかった!! オールドスタイルにはオールドスタイルにしか放てない魅力があるんだよ。
来年成長期スパートが終わったら社交界用の服と交流会に来てこれるカジュアルなやつを仕立てます。絶対に。
「セリオン、今お兄ちゃんの名前呼んだ?? 可愛いねぇ~大人のふりしてるみたいで……大人のふりしてる子供が一番可愛い!! ひな祭りみたいで!!!!!!! ハァーーッ!!!!!!!!!」
「声でっか。学級長はそんな気持ち悪いこと言わないんだけど?」
「もう二度と呼ばない」
思わず可愛すぎて逆立ちをし、頭に血を上らせることで冷静になることに成功。周囲のドン引きは知らなかったことにする。
セリオンにドン引きされるのはいつものことだし、セリオン以外のことなどどうだっていいので……。
「学級長のその感じ、最近清々しく見えてきたんだけど……日に一度見たい」
「見せてたか? 日に一度」
「頭に血上るからやめなそれ。頭で倒立してるの怖。あと割と見てる」
「ンン……」
「えなにどしたの恥ずかしいの何その顔面白いんだけど二度とやるなよ」
情緒おかしいんじゃないかこいつ
かくいう俺もかっちりとしたオールドスタイルの燕尾服を着込むことにしている。元々交流会という名目なので実のところ制限は緩いのだが、昔のジャケットやシャツは胸がきつかったのだ。
新しく仕立てた分は傷の多い体を覆い隠してくれるし、何よりセリオンとお揃いだ。
「あれ? 学級長じゃん」
「……ん。ヴィンセント? と、大鷲寮の生徒か。交流会ならもう始まっているぞ」
「知ってっし! てか何その服、制服とローブ以外初めて見たんだけど? あれ以外持ってたんだぁ~?」
ウオーッッなんで絡んで来るんだお前マジ! 友達少ないのか? 大はしゃぎか?? 俺は故郷に友達いるのにな。
学年は一つ下だろうか? 着飾った大鷲寮の生徒が戸惑ったようにヴィンセントを見つめている。ヴィンセントといえばだらしないとまで行く程度に着崩したシャツにジャケット、ベストだが、何故かそれがだらしなく見えない。
「いつも思うが、お前の正装は見事なものだな。素材がいいから何でも似合うんだろう。羨ましい限りだ」
「ッ、まぁ!? 違うしねお前みたいな凡人顔と!! 王族ですし!? 学級長にもまともな審美眼あったんだぁ~!?!?」
「うるさ」
少なくとも緩い交流会程度なら奇異の目で見られることはないだろう。むしろ見惚れられるくらいだろうか? 明るいベージュのベストが嫌味なくらいに似合っている。
交流会のパートナーとは待ち合わせて赴くものだ。ホールに繋がる広めの渡り廊下で他人に絡むもんじゃないが、ヴィンセントはその辺考えてなさそうだ。
「さて、これでいいか? 用が終わったらさっさと行け。すまないな邪魔して」
「あっいえ、大丈夫です……! ええと……」
「アーノルド=フィレンツェ。獅子寮五年だ。フィレンツェとはいえ大して魔法も使えないし、適当にアーノルドとでも呼んでくれたらいい」
「はーいよろしくなーアーノルド!」
「なんで今更お前に自己紹介するんだ」
ヴィンセントの中で五年間とか虚構だったのか? 記憶ないのか? お前。
変なノリにドン引きしていれば、フィレンツェの名を聞いて一瞬青ざめていた生徒が微かに笑いを漏らす。なるほど、同伴者の緊張をほぐしたわけか。
「一応この陰茎脳王子とは同じ学級で、監督生を務めている。言ってくれれば二度と笑えないようにするから、何かあれば気軽に相談してくれ」
「気軽に二度と笑えない目に遭わせないでほしい。あと陰茎脳王子って何?? 凄いこと言うじゃん自国の王子にさ……」
「嫌ならいい加減節度を覚え、俺に迷惑をかけないでほしい。あとこの間お前窓割ってたけど犯人を俺に偽造したな? 偽造魔法かかってたぞ」
「ワァ凄い学級長魔法の鑑定だけはピカイチ!」
「うん、解いておいたからな」
「ヤベそういえばもう使えるんだった……」
何で結構な時間経ってるのに俺が魔法使えるのに慣れてないんだよ。大体一年くらい経ってるぞもう。マーガレット先生に泣くほど怒られればいいのに……。ちなみに俺は結構な頻度で本気で泣くくらいには怒られていたぞ、流石に低学年の頃だけだが。この歳になると多少のことでは泣かないからな。
こんなふうに、長らくこいつには苦労をかけさせられたが、他人を口説く術なんかは見習ってやってもいいかもしれんな……
「──アーノルド! ごめん、待たせて……」
「セリオン!」
なにしろ、俺は今から世界一きゃわいい弟のエスコートをしなければならないのだから……!
廊下の曲がり角から現れて走ってくる弟を抱き留める。ああ、せっかくお兄ちゃんがやってやった髪型が崩れちゃって。セクシーになっちゃってるぞもう!
純白の小物で統一したフォーマルな燕尾服を着こなした少年が、その時特有の無垢さと危うさを振りまいている。うーんやっぱり基本に則ったやつ注文してよかった!! オールドスタイルにはオールドスタイルにしか放てない魅力があるんだよ。
来年成長期スパートが終わったら社交界用の服と交流会に来てこれるカジュアルなやつを仕立てます。絶対に。
「セリオン、今お兄ちゃんの名前呼んだ?? 可愛いねぇ~大人のふりしてるみたいで……大人のふりしてる子供が一番可愛い!! ひな祭りみたいで!!!!!!! ハァーーッ!!!!!!!!!」
「声でっか。学級長はそんな気持ち悪いこと言わないんだけど?」
「もう二度と呼ばない」
思わず可愛すぎて逆立ちをし、頭に血を上らせることで冷静になることに成功。周囲のドン引きは知らなかったことにする。
セリオンにドン引きされるのはいつものことだし、セリオン以外のことなどどうだっていいので……。
「学級長のその感じ、最近清々しく見えてきたんだけど……日に一度見たい」
「見せてたか? 日に一度」
「頭に血上るからやめなそれ。頭で倒立してるの怖。あと割と見てる」
「ンン……」
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情緒おかしいんじゃないかこいつ
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