悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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二年目の魔法学校

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実のところ、最近学級長として俺はクラスの連中と仲が悪いというほどではなくなってきている。
まず不眠症の周知があるだろうか。目の前のレイが言っていたことだが、真面目くさって忌々しい相手だと思っていた人間が、思ったより努力していたこと。案外追い詰められていたことが罪悪感になり、強く返せなくなっていて。

そんなクラスの雰囲気に、俺に助けられただとかそういうの話が上がり、好感度上昇に繋がったらしい。さすがは名家の子息が多い獅子寮、大変素直でちょろくて心優しい奴らが多いぜ。我は強いけど。

「いやぁ、あの清らかな乙女にしか懐かん暴れん坊を主人より早くしつけるんはな。一部で話題やったんよ」
「誰も動かんから行っただけだ」
「やけん評価されるよるんやろ? 口だけやないんやってね」

ついでにヴィンセントの召喚した一角獣ユニコーンを手懐けたことも一端にあったらしい。曰く実技が出来ないくせにしゃしゃってくる堅物真面目野郎から、有言実行の男だと。いやそんなのずっと証明してますけど??

「人間は愚かやからな」
「本当にそう。人間ってバカ。目の前の人間を侮ってばっかり、実力差なんて一目で分かるのに」
「オ……学級長って思ったより弟に懐かれとる?」
「何のことだ?」

しかしセリオンの人間嫌いも筋金入りである。なんでも否定したいお年頃だからなぁ。
とはいえ、蛇蝎の如く嫌われていた頃から随分進歩したものだ。同じクラスの初めて話した隣の席の生徒曰く、元々その真面目さばかりは認めていたというらしいが。

「学級長って意外となつこいのがええなぁ。もう王子さまより友達多いんちゃう?」
「薄々思ってたけどアーノルド先輩ってすごい対話力ですよね」

まぁ少なくとも元々は友達に困るような性質ではないな。話しかけて貰えば普通に返すし、休日遊ぶし、スポッチャ的な奴とかも行く。
魔法でないのは残念だが……実力を見せたことで受け入れられたのだ。傾聴能力のない魔法使いたちは逆に、力を示されればなつく傾向にある。

「最近はわりと市場にも降りるようになったしな……プライベートは別にさして禁止事項もない。そうだユミル、今度お土産渡すから部活で待っててくれ」
「え? 絶対嫌なんですけど。無限増殖クッキーとかでしょ?」
「残念! クラッカーです」
「本当に嫌!」

しかし無限増殖して困ってるんだ食ってくれ。最近出てた屋台に遊びに行ったら、食糧難の際に気が狂って開発された“増える麦”を使った無限増殖クラッカーが売られていた。買った。引かれた。おもろいのあったら買うだろうが!!

だが、流石に無限ではないものの最近増殖しており、錬金部で置き場に困っているところだ。教室に置いておいたらマーガレット先生に見つかって自分で処理できないなら変なものを買うなと怒られた。

「おもろいことやるならレイくんも呼んでや~! え、何なんずっとそんなおもろかったん先に言ってくれん?? なぁー弟くん」
「うん。元々この人、結構ふざけた人だから……面白くはあると思う。少なくとも、なんで混ざってないんだろうって思ってた……」

結構ふざけた人って言われてる? 俺。そんなにふざけ……てはいるか。公衆の面前で倒立するもんな。リスの金玉の話とかし始めるし。男子にはバカウケなんだぞ。
どうやら従来の真面目で律儀なイメージが先行しているらしく、下ネタを言えば言うほどドッカンドッカンだ。

「ふふ。セリオン、ヤキモチも焼いてたけど心配もしてましたもんね」
「え何その可愛い情報先に言って? 詳しく。今俺は冷静さを欠いている」
「そういう所、本当に兄弟なんだなって思いますよ。仲いいですよねぇ」
「まぁ…………ぼくの友人関係ばっか、心配してるのも。何かなって感じだし」
「へぇ、こんなに近距離で聞こえないふりされることあるんだ」

俺以外が別の話題に移りダラダラと歓談していると、また一組ペアが入場してきた。受付(?)が、ヴィンセント王子殿下がお見えになりました的なことをアナウンスする。
ちなみに俺たちの時もこれをされていて、基本的に招待状を持つ貴族は会場に周知されるシステムになってるぞ。挨拶とか行かなきゃいけないし、結婚相手を探している子達もいるから。

「じゃ本番行くかー。ほんでな学級長~」
「失礼します! クラッカーは自分で処理してください!! 燃やすとかして!」
「お焚き上げじゃん。呪物だと思われている……?」

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