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lets休暇
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セリオンはここ最近、どこに行くにしろくっついてくる。俺が街に行こうとすればついて行くと言って聞かず、結局危ないので中止にするということも多々あった。
「オーロラ様」
「あら、セリオン……と……アーノルドくん……」
「お久しぶりです。帰省したというのに、挨拶にも出向かず申し訳ない。色々とバタバタしていて」
今日も後ろにセリオンをひっつけて歩いていれば、オーロラ様とばったり出くわしてしまった。できれば会わずに済みたかったが……まぁ、同じ屋敷にいる限り無理な話だろう。弟が嬉しげにソワっとした気配を感知し、俺はその腕から抜け出した。
「しかもおかしなところを見られてしまい……オーロラ様に甘えられないので、私を保護者がわりにしているようで。今日は街歩きの予定なので、構ってやっていてくれませんか?」
「え。ちょっと、街行くならぼくも行くけど」
「あらあらセリオン……ええと」
戸惑っているオーロラさんに、セリオンに聞こえないよう声を顰めて耳打ちする。俺とオーロラさんが仲良くしているのは嬉しいのか、積極的に邪魔はしてこない。純朴で可愛いやつである。
「すみません。セリオンがどうしても街に着いてきたがって……その、友人のもとに顔を出したく……場所が場所だけに連れて行くわけにもいかなくて……」
「そ、そういう。そうよね……あの子、貴方があの場所に居ると知ったら怒っちゃうもの……」
「怒……? まぁそうですね。教育に悪いんで」
これは半分くらい事実である。
セリオンが望むのなら俺は永遠にここに居たって良いんだが、望まない場合普通に出かけたい願望もある。というか実家にこもってるってフラストレーション溜まるよな。出かけるの好きなタイプなので。
(でもセリオンに娼館を知って欲しくないのは事実だし、街に降りてステラ達に合わないのもな)
そのため、セリオンが大好きなオーロラさんに構われている間、俺は自由に街歩きなんかをしておきたいのだ。
もちろん貧民街にも顔を出すが、今回のお目当ては闇市だ。
奴隷やら何やらも取引されているアングラな場所で、当然いわくつきのマジックアイテムやよくわからん漢方や呪われた本などが売っている。その大半が眉唾物なんだが、本当に時折良いものが売っていてな。
(アイツら、本物の価値もわかんないからな。偽物にしちゃ高いが本物にしちゃ破格な値段で売ってある)
こういう時にもこの目が役に立つのだ。他人の魂の質がわかる目。たとえばヤバいものが封印されていたり、まだ呪いで縛り付けられている魂があったりすると俺にだけわかる。当然他人の魂を操作できる道具は本物だ。購入して無辜の魂を解き放てば、空っぽのマジックアイテムが手に入る。
当然見た目がカッコ良ければ偽物でも買うけどな! 一応マジックアイテムと銘打たれているので役に立たないこともないし。
「ねぇ、ちょっと。街に行くならぼくも行く。お母様も一緒に行こう? きっと楽しいよ。聞いてる、兄さん。あんた一人で行動させると碌なことないんだから」
「セリオン……心配症だなお前は……」
「もう、わがまま言わないの。アーノルドくん、困っているでしょう?」
「お母様、兄さんがぼくの望むことを迷惑に思うわけないから大丈夫だよ」
その通りである。俺がセリオンのわがままを迷惑に思うわけがない。なぜこいつは大きくなるに連れて甘え上手になってゆくのか。普通逆じゃない?? 可愛くて仕方ないからやめなさい! やめないで。何でもしてあげちゃう!
「この子ったらもう。ごめんなさいね、アーノルドくん」
「いえいえ。可愛い盛りですから。セリオン、今日はお家で大人しくしてような?」
「じゃああんたもずっと家にいて。ねぇお母様、前焼いてくれたクッキー、兄さんにも食べさせて良い?」
セリオン~~~~自分の可愛げで何でも許されると思ってないか?? 許されるんだけども。
全く譲らない弟に少し困りながら、それ以上の可愛いで埋め尽くされて行く。もう良いのでは? 家にいておいて。明日こそ早起きして街に行けばいいし。闇市の場所は分かりにくいから、セリオンの見てないうちに抜け出せば諦めるだろう。
と思って一週間なんだよな。
セリオン、必ず俺より先に起きる。俺が寝ている2時間程度の間に侵入し仮眠とって寝てるの? ちゃんと寝れてる?
「せ、セリオン。貴方こんな押しが強かったかしら……」
「兄さんは紅茶にミルク入れるんだよ。苦いの飲めるのに。不思議だよね」
「あらもう紅茶の話してる……!」
ヤバいオーロラさんが不審に思ってる! 俺のせいで親子の絆が壊れかけるの、地雷です。
仕方ない、ちょっと本気出すか。
「兄さん、茶葉は何が──」
セリオンが振り向きざま、俺は最近覚えた魔法を唱えた。瞬時に掻き消える姿。次に見えたのは中庭の薔薇。
というか、多分生垣に突き刺さっている。顔がチクチクするし頭に血が昇っているので。
「まさか、弟を振り切るために瞬間移動魔法なんて開発するハメになるとはな……」
これもお前の明るい教育のためなんだセリオン。許してくれ。
「オーロラ様」
「あら、セリオン……と……アーノルドくん……」
「お久しぶりです。帰省したというのに、挨拶にも出向かず申し訳ない。色々とバタバタしていて」
今日も後ろにセリオンをひっつけて歩いていれば、オーロラ様とばったり出くわしてしまった。できれば会わずに済みたかったが……まぁ、同じ屋敷にいる限り無理な話だろう。弟が嬉しげにソワっとした気配を感知し、俺はその腕から抜け出した。
「しかもおかしなところを見られてしまい……オーロラ様に甘えられないので、私を保護者がわりにしているようで。今日は街歩きの予定なので、構ってやっていてくれませんか?」
「え。ちょっと、街行くならぼくも行くけど」
「あらあらセリオン……ええと」
戸惑っているオーロラさんに、セリオンに聞こえないよう声を顰めて耳打ちする。俺とオーロラさんが仲良くしているのは嬉しいのか、積極的に邪魔はしてこない。純朴で可愛いやつである。
「すみません。セリオンがどうしても街に着いてきたがって……その、友人のもとに顔を出したく……場所が場所だけに連れて行くわけにもいかなくて……」
「そ、そういう。そうよね……あの子、貴方があの場所に居ると知ったら怒っちゃうもの……」
「怒……? まぁそうですね。教育に悪いんで」
これは半分くらい事実である。
セリオンが望むのなら俺は永遠にここに居たって良いんだが、望まない場合普通に出かけたい願望もある。というか実家にこもってるってフラストレーション溜まるよな。出かけるの好きなタイプなので。
(でもセリオンに娼館を知って欲しくないのは事実だし、街に降りてステラ達に合わないのもな)
そのため、セリオンが大好きなオーロラさんに構われている間、俺は自由に街歩きなんかをしておきたいのだ。
もちろん貧民街にも顔を出すが、今回のお目当ては闇市だ。
奴隷やら何やらも取引されているアングラな場所で、当然いわくつきのマジックアイテムやよくわからん漢方や呪われた本などが売っている。その大半が眉唾物なんだが、本当に時折良いものが売っていてな。
(アイツら、本物の価値もわかんないからな。偽物にしちゃ高いが本物にしちゃ破格な値段で売ってある)
こういう時にもこの目が役に立つのだ。他人の魂の質がわかる目。たとえばヤバいものが封印されていたり、まだ呪いで縛り付けられている魂があったりすると俺にだけわかる。当然他人の魂を操作できる道具は本物だ。購入して無辜の魂を解き放てば、空っぽのマジックアイテムが手に入る。
当然見た目がカッコ良ければ偽物でも買うけどな! 一応マジックアイテムと銘打たれているので役に立たないこともないし。
「ねぇ、ちょっと。街に行くならぼくも行く。お母様も一緒に行こう? きっと楽しいよ。聞いてる、兄さん。あんた一人で行動させると碌なことないんだから」
「セリオン……心配症だなお前は……」
「もう、わがまま言わないの。アーノルドくん、困っているでしょう?」
「お母様、兄さんがぼくの望むことを迷惑に思うわけないから大丈夫だよ」
その通りである。俺がセリオンのわがままを迷惑に思うわけがない。なぜこいつは大きくなるに連れて甘え上手になってゆくのか。普通逆じゃない?? 可愛くて仕方ないからやめなさい! やめないで。何でもしてあげちゃう!
「この子ったらもう。ごめんなさいね、アーノルドくん」
「いえいえ。可愛い盛りですから。セリオン、今日はお家で大人しくしてような?」
「じゃああんたもずっと家にいて。ねぇお母様、前焼いてくれたクッキー、兄さんにも食べさせて良い?」
セリオン~~~~自分の可愛げで何でも許されると思ってないか?? 許されるんだけども。
全く譲らない弟に少し困りながら、それ以上の可愛いで埋め尽くされて行く。もう良いのでは? 家にいておいて。明日こそ早起きして街に行けばいいし。闇市の場所は分かりにくいから、セリオンの見てないうちに抜け出せば諦めるだろう。
と思って一週間なんだよな。
セリオン、必ず俺より先に起きる。俺が寝ている2時間程度の間に侵入し仮眠とって寝てるの? ちゃんと寝れてる?
「せ、セリオン。貴方こんな押しが強かったかしら……」
「兄さんは紅茶にミルク入れるんだよ。苦いの飲めるのに。不思議だよね」
「あらもう紅茶の話してる……!」
ヤバいオーロラさんが不審に思ってる! 俺のせいで親子の絆が壊れかけるの、地雷です。
仕方ない、ちょっと本気出すか。
「兄さん、茶葉は何が──」
セリオンが振り向きざま、俺は最近覚えた魔法を唱えた。瞬時に掻き消える姿。次に見えたのは中庭の薔薇。
というか、多分生垣に突き刺さっている。顔がチクチクするし頭に血が昇っているので。
「まさか、弟を振り切るために瞬間移動魔法なんて開発するハメになるとはな……」
これもお前の明るい教育のためなんだセリオン。許してくれ。
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