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19 居場所 (裕斗)
しおりを挟む「いや、アンタ…。」
風祭の態度や言葉が崩れた事に合わせて、俺もそれに倣う。
この風祭って奴、何だか変だ。
まさか本條だけじゃないのか。コイツとも?
と、一瞬疑いの気持ちが生まれたが、やすはそんなに器用な奴じゃない。
もしやすがそんな事を平気で出来るタイプなら、今頃俺だってとっくに転がされてる。
それより。
「勝手にやってるんすか、それ。泰は知らないんですよね?」
やすがホイホイ他人の個人情報も入ったスマホを明け渡すとは思えない。
もう、俺を見る風祭の目には敵意が篭っていた。
敵意。
つまり、コイツはやすに友人以上の感情を持っているんだとわかる。
やすは気づいているのか?
コイツに俺の事を話していたんだろうか。
いや、それは考え難いな。
やすはあれで結構秘密主義だ。
どの程度の友人であっても、同性の幼馴染みにずっと片想いしてたなんて事を話すとは思えない。
だけど、幼馴染みとして話しただけなら、こんな敵意の意味がわからない。
ところが風祭は、ふいと俺から視線を外して言った。
「…僕は知らない。何もやってない。見てない。」
「…あ?」
いや、もう無理だろ。
あれだけ口を滑らせたら…。
「いや、ならやすに俺の事、聞いてたの?なんて?」
「……知らない。」
風祭は不機嫌な表情でしらばっくれ出した。
イラつくが、…此処で問い詰めても仕方ないか。
「まあ…ならそれは今は良いとして。
やすの居所に心当たりは?」
と言うと、風祭は 我に返ったように俺を見た。
「そうだ、泰!」
「そう、今はやすの事だ。他はどうでも良い、やすの無事を確認しないと。」
此処に向かう迄に、念の為 事件や事故に巻き込まれたんじゃないかとニュースにも目を通した。めぼしい事故は無かった。
けれど、実際本人と連絡が取れないと言う事は…。
「本條って奴の家、知ってます?」
「…知ってる。」
それを疑うのが普通、だよな。
「でも、別れ話をする予定なのは、今日の筈だよな。」
「それも聞いてたんだ…?」
「まあ。」
「…アンタ、やっぱ只の幼馴染みじゃないんだ。」
「それ、今必要?」
「…そうだった。泰…。」
やすとその周りの男共の関係性が何だかよくわからない事になってるのはこの際置いとく。
「本條の家、案内して下さい。」
そう言うと、風祭は頷いたが、直ぐに顔を曇らせた。
「…でも、泰がそこにいるとしても、僕らが入れるかが…。セキュリティが結構厳しい。」
「…なるほど。でもまあ、とにかく、行ってみよう。」
此処で何もせずにボーッとしてる訳にはいかないんだから。
近くのパーキングに風祭の車があるというので同乗させてもらえる事になったんだけど、風祭…コイツ…。
やけに育ちの良さげな野郎だと思ってたら、マジでボンボンなのか。
パーキングにはグレーのレクサスが停まっていた。
「……お坊ちゃまなんだな、アンタ。」
「父の車を借りてきただけだ。僕のじゃない。」
そう言う横顔は何かに張り詰めて神経質そうに見える。
「行った事、あんの?本條んとこ。」
「…何度か。」
「ふーん。」
風祭は本條を知ってんのか。どういう関係なんだろう。同じ大学ってんなら、友人?
「アンタは本條とは…友達?」
そう聞くと風祭は整った顔を歪めて、
「そんな訳あるか。あんな下衆。」
と、吐き棄てるように言った。
ん?下衆野郎…?
コイツ、本條の何かを知ってるのか。泰と本條の間にあった事とか?
泰が話…したんじゃ、ないよな。
何だかコイツ、いちいち引っかかる話し方するんだよな。気になる。
何を何処迄知ってるんだ。
「本條のマンションはこっからどんくらい?」
取り敢えずそれを聞いてみると、
「15分もあれば。」
と返ってきた。
意外に近いな。
「電車使うと徒歩が入ってもう少しかかるかな。
大学からの方が近いんだ、アイツんち。
だから泰は何時も大学の帰りにそのまま行ってた筈だ。」
「ふーん…。」
今度は俺が不機嫌になってしまう。
マジで本條と付き合ってたんだというのが、突きつけられたようで胸の奥がチリついた。
そして気づく。
中学から、俺はカノジョが切れた事がなかった。
やすの気持ちを知らなかったとはいえ、俺はやすに何年もこんな思いをさせてきたんだ。
…嫉妬する資格、あんのかよ。自己嫌悪。
それからは到着する迄無言だった。
「此処に停めて少し歩くよ。」
風祭はそう言って、とあるパーキングに車を入れた。
「見えてるアレがそう。あの25階。」
「…タワマンじゃん。」
「まあ、そうだね。」
「…え、学生だよな?
あ、家族で住んでるって事?…いやでもそれなら泰を連れ込めないか…。」
「いや、1人住まいだよ。
親の所有なんだろ。」
「…金持ちしかいない大学?いや、でも泰が行ってるもんな…。」
「何言ってんの?」
風祭だけじゃなく本條もそんな感じなのか。何だか面白くない。
いや、俺や泰は平均的な中流家庭だ。
たまたま本條がそういう富裕層にいる人間だってだけで。それに、泰はそんな事に惹かれるような奴じゃない。だから劣等感を感じる必要も無い。
その建物に向かって歩きながら、風祭が言う。
「泰のLIME、既読つく?」
「つくのに反応が無い。」
「そっか…。僕のLIMEには既読もつかない。」
何処か悔し気な風祭。
「そうなのか。」
「多分、本條は君の事を認識しててそうしてるんだろうな。」
そう言われて、不可解に思った。
どういう意味だ。
「本当に…何処迄も苛つく奴だよ、本條も、君も。」
やっぱり俺もかよ。
マンション前で足を止めて、風祭は硬い表情でマンションを見上げている。
そして、俺も。
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