身の程を知るモブの俺は、イケメンの言葉を真に受けない。

Q矢(Q.➽)

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18 裕斗、動く。(裕斗side)

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(何でずっと既読スルーなんだ…。)


俺は焦れていた。

やすを見送り、その後アパートに着いたと連絡があってからは、LIMEの遣り取りは頻繁にしてたのに。
昨日の昼過ぎに来た、『 バイトに行ってくる』、というのを最後にずっと返事が無い。

妙な胸騒ぎがする。
何かあったのか。

知らない間に付き合っていたらしい本條という男と、別れるつもりで話をするとは聞いていた。
でもそれは明日に約束を取り付けたと知らされたから、俺は今日の午後の予定だけを済ませて明日の朝の高速バスでやすの元へ向かうつもりだった。

最初のきっかけを聞いてしまうと、そんな相手に一人で別れ話をしに行かせるのは流石に危険過ぎる。
少しはなれた場所で見守って、何かあれば出るつもりだった。

なのに、バスにに乗る時間になっても連絡は取れない。
やっぱ俺も一緒に行くべきだった、と後悔する。

昨日は久々のバイトで疲れて寝てるのかも知れない、取り越し苦労だろうと思ったけど、流石に今朝迄連絡が無いのはおかしい。
既読は付いてるんだ。
なのに電話も取らないって、明らかに異常だ。

スマホを何処かに忘れた?
なら拾った人間がまともな奴なら、もしかして落とし主かそれに繋がる人間からではないかと考えて出る可能性が高い。それが嫌なら最寄りの警察にでも届けるだろう。
大体、やすはスマホにロックをかけていた。それなのにLIMEに既読が付いてるって事は、本人が見ていても返信が打てない状況にあるか、パスコードを解ける第三者が見ているのか…。
本人以外にロックの解ける可能性があるのは、パスコード入力しているのを見る機会がある、ごく近しい人間だろ。

ココ最近の話を総括すると、本條と一緒にいると考えるのが自然だよな。


少しでも到着時間を早める為、俺はバスをキャンセルして新幹線で行く事にした。

胸騒ぎはおさまらない。





何度か泊まりに行ったやすのアパートから新幹線の最寄り駅迄は電車徒歩込みで20分程度。
逆だってそんなもんだろう。
でも一刻でも早く着きたいと思って駅からタクシーに乗った。
それでもせいぜい短縮出来たのは5分程度だったけど。

けれど、やっと着いたやすのアパートの部屋の前には知らない男が立っていた。
まさかコイツが本條だろうか。
何だか聞いてたイメージとは違うな、と思いながら立ち止まって見ていると、向こうも俺に気づいて目を見開いた。
その反応に、違和感を覚える。

「あの…ここ、田中 泰の部屋ですよね?」

俺が近付きながら男に問うと、男はこくりと頷いた。

「俺は九重と言います。泰とは幼馴染みです。貴方は、泰を待っているんですか?」

「はい。風祭です。泰君とは…友人、です。」

変な間を挟んで話す人だな、と思った。


やすの、部屋はインターホンにも、ノックにも全く反応が無かった。
俺は仕方なくキーケースから1本の鍵を選び出し、鍵穴に差し入れた。
その時何故だか風祭は少し息を飲み、その反応にも引っかかる。
何なんだ、この人…。

部屋の中はしんとして、やはり泰はいない。
と言うか、これは…。

「…昨夜から、帰って、ないのか…?」

冷蔵庫を開けてみた。
ミネラルウォーターと数本のドリンクとマーガリンがあるだけの、ほぼ空に近い状態。
昨日の昼、バイト前のLIMEでは、今日は早く帰れるからスーパーに買い出しに寄るんだと言っていた。

風呂場を開ける。

床もバスタブも乾き切っていて、少なくとも今日は使った形跡がない。
晩に風呂に入っても、泰には出かける前にもシャワーをする習慣がある。

昨日帰ったとして、今日の午前中に再び出かけたとしても、それならシャワーでバスルームは使った筈だ。

ドラム式の洗濯機の中にはタオルや下着が、洗濯乾燥を終えた状態で入ったままだった。これはあまり参考にはならないな。


「…泰、やっぱり帰ってないと思う…。」

不意に風祭が呟いた。
振り返ってみると、風祭はキッチンのシンク横の洗いカゴに洗い済みで置かれているマグカップと皿や箸を見つめていた。

「無理を言って、一昨日 泊めてもらったんです。
それで昨日、僕が朝買っといた昼ご飯を食べてから、昼過ぎに一緒に此処を出て…。」

その時使って洗った食器が、棚に直されずにそのままなんだろう。

…と言うか、そうか…泊まったのか。
泰が此方の事を話す時、よくカザが、カザが、と言ってたのはこの彼の事なのかと今更思い出した。

何だか面白くないな、と思ったが、俺にだってやすの知らない大学での交友関係もある。
そんな所でいちいち嫉妬しても仕方ない。

今はそんな事より泰が何処にいるのかが大事だ。

「風祭さん…も、泰とは全く連絡は取れず、ですか?」

まあ、だから此処へ来たんだろうが、と思いつつ、聞いてみる。一応の確認だ。
風祭は、こくりと頷いて俯いた。

「泰の行きそうなとこ、心当たりってあります?
…と言うか、風祭さん、本條って…知ってます?」

やすと親しい友達だったなら、知っているだろうか。
周囲のにんには言えないまま、本條と付き合っていたとも考えられるから関係性は伏せておく。

けれど、風祭は本條と言う名に、肩を震わせるという過剰反応をした。

「本條を知ってるんですね。」

「…少し前に聞いたんです。」

「…九重さん、でしたっけ。貴方、泰の…幼馴染みって言いましたよね。

お名前は、なんて言うんですか?」

風祭は相変わらず俯いたまま、少し震えているようだった。
変な奴だ、との思いを深くしながら俺は答えた。


「九重、裕斗ですが。」


それを聞いた風祭は、バッと顔を上げて、俺の顔をまじまじと見た。まるで風穴を開けそうなほどに。
綺麗な顔をしてるけど、コイツの目はなんかこう…ヤバい。



「やっぱり、そうだよな。
見た顔だと思った。
九重って名も。

髪が変わってるけど、フォルダの中にあった顔だよな…。フォルダの中に、一番…。
そう、アンタがヒロト…。」

フォルダ…?
写真フォルダの事、だよな。

泰が、見せてるのか?
でも本人同意で見せてる場合って、写ってる人間の名前や、それが何時頃写したものだとか、何のイベントがあって、とか…その時あった事や状況を説明したりしながら見ないか?

風祭は、俺の数々の画像が泰のフォルダに存在している事を知っているのに、俺の名を知らなかった。

それって、つまり…

泰のスマホを勝手に見てるって事?


俺の風祭に対する猜疑心が一気に深まった。




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