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しおりを挟むまるで王が2人、並んでいるようだと、その国の王と王妃を見る者は皆、口を揃えた。
実際、そんなものだ。
血筋、容姿、体躯、才覚。
共に玉座に並び座る二人に、能力差は殆ど無い。
だからこそ、この国は黄金期を迎えたとも言われているのだ。
ザルツ王国とレトナス国は仲良く並んだ隣国同士。古の昔には同じ国だったなんて時代もあったようだが、長い時の流れの中、袂を分かち、その後色々あって今の状態に落ち着いていた。現在、国土面積や国力にもそう差は無く、付かず離れずの状態で数百年。時には互いの領土を狙いたくなりながらも、表向きは当たり障りなくやってきた。
双方には奇遇にも同じ年に第一子が生まれており、どちらも秀でた容姿に生まれながらの王族としての品格を備えていた。
何方もそうとなれば、彼らの周囲の者達は自国の王子の方がより優れているだろうと思うもので、何かにつけては比較し、噂した。
未だ幼い内はわからなかったが、成長していくとそんな噂もよく耳に入ってくるようになる。
彼らは互いを意識するようになった。だが、良い意味では無い。ライバル意識という形で、である。
表向きは隣国同士、恙無い付き合いをしていたので、12、13歳にもなり、王太子として王を補佐し公式の場に出るようになると、顔を会わせる機会も増えた。
聡明な2人が敵愾心を滲ませる事などは無かったが、互いに良くは思っていないという事は、なんとはなしに感じとれるものだ。
そんな風に、公的な場での形式的な言葉しか交わす事もないまま、2人はそれぞれ、美しい若者に成長した。
ザルツ王国の第一王子・ルシエルは、恵まれた体躯の、長身に編んだ長い金髪を背中に垂らし、澄んだサファイアのような瞳の天使のような美青年に。
特に剣技に長けており、王家主催の剣術大会でも毎年1、2位を争う腕で、剣を振る姿に感動して失神する令嬢が続出中だ。
片やレトナス国の第一王子・エンドリアは、艶やかな黒髪が、金にも見紛うヘイゼルの瞳にかかるさまが神秘的な美青年。長身痩躯で槍の名手。特注で作らせた、自分の身長よりも長く重い異国の大槍を振り回し、自在に操る姿が姿絵にもなっていて、若い女性…いや、男性達にも等しく人気だ。
それぞれの国で、共に正妃腹の第一王子であり、血統に於いても他の何人もの兄弟姉妹とは並ぶべくもなく、器量にも優れている。何をさせても優秀で、人を惹きつける求心力もある。先は玉座を継ぐ者として異論無しとされ、早くから王となる為の教育を受けて育った。
順調にいけば、将来的には国を治める王同士として対峙する事にもなるであろう、2人。
だが、2人が18になった年、その未来を激しく揺らす出来事がレトナス国を襲ったのだ。
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