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2 少しばかり昔話をしましょうか
しおりを挟む前世、魔女に使役していてロクな事が無かった記憶のある僕は、朧げだった記憶が徐々に鮮明になってきた5歳頃から密かに考えていました。
もしや、他の登場人物達にも僕のように転生している可能性があるのでは?という事を。
...いや、十分有り得るでしょ。魔力が練り込まれて対象人物の位置情報を検索し映し出す機能やお喋り機能も搭載されていたとはいえ、一応は無機物だった僕が人として転生するくらいですよ?元から人として登場していた他のキャラクター達が転生していないと思う方が不自然では?
考えれば考えるほど、それは信憑性のある考えに思えました。そして、5歳、6歳と年齢を重ねていく内に、僕の胸の中にはある想いが募り始めました。それは…。
(今世はお后様には絶対お会いしたくない)
という事です。
だって、考えてもみてください。再婚相手の子供が自分のご自慢の美貌を超える超美少女だったからといって、亡き者にしようとかします?いくら何でも普通はそんな事考えないでしょ?相手、子供ですよ?今でいうと、中高生くらいの。僕もびっくりしましたからね、あの時は。あまりの大人げなさに。
…まあでもね?
王様の後妻になったお后様と共にお城に入って、あの可愛らしい白雪姫を間近で見るようになったんですが、成長していくにしたがってどんどん綺麗になっていくんですよ。そりゃもう、怖いくらいに。
あまりの将来有望さに、
(あちゃー、こりゃ時間の問題だなぁ)
だなんて、一応はお后様の鏡である僕も戦々恐々としてたのは事実です。お后様の毎朝のルーティンである、『鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰だい?』に、『貴女です』と言ってあげられなくなる日が来る事を思うと、無い胃が痛む思いでした。ガッカリするだろうなあ…って。
まあそれも心苦しかったですけど、それ以上に気が重かったのは、その事態に陥ってしまった場合のお后様のヒステリーです。
僕、お后様とは彼女がごく若い頃からの付き合いだったので、その性質はよく知ってるつもりでした。気分屋で気性が激しくて執念深くて、お世辞にも性格が良いとは言えませんでしたね。そして彼女は、世界一の美貌である事がご自身のアイデンティティだと考えていらした方でした。ですから、それが奪われた時、暴走するであろう事が僕には容易に想像できたんです。だって、王様と結婚してお城に上がる以前にも、自分の世界一の座を脅かす女性を数人〇〇して……まあ、〇〇内は察して下さい。
ですが僕は、お后様と一緒にお城に上がったお后様の単なる所持品のひとつに過ぎませんでしたが、白雪姫と呼ばれていた幼い姫君様の成長も見守ってきました。ですから無機物の魔道具の身ながらも、姫君様にはお健やかに過ごしていただきたかった。僕の答えに激昂したお后様の毒牙にかかって欲しくはないと思いました。
ですが、僕は命じられればその通りに様々なものを映し答えを述べるだけの単なる魔道具に過ぎず、数百年存在したゆえに自我を持てども、その意志を反映する事は出来ませんでした。
姫君を助けたいと思っても、何も出来なかったんです。不甲斐ない。
それに……長くお仕えしていたお后様にも、情があったんですよね。
おかしいですね、鏡の癖に。自分でもそう思います。
でも、お后様にも良いところはあったんですよ。世界一の美を保つ為に並々ならぬ努力をしているのも、ずっと見てきてましたし。
だから、彼女にはどこかで気づいて立ち止まって欲しかった。
まあ、無理でしたけど。
で、全てを思い出した時に思ったんですよ。
無機物である僕が人に転生している。という事は、命あるキャラクターだった人達もその可能性があるという事では?って。とすると、お后様も…?
お后様の事は決して嫌いじゃありませんでしたが、やはり人として生を受けたからには、あまり人格的に問題のある人とは付き合いたくないじゃないですか?人情というか、防衛本能というか?
だから小学校でも中学校でも、万が一にも他の転生キャラに出会ったりしないよう、静か~に過ごしました。と言っても、幸い人並みというか地味な顔立ちに生まれる事が出来たので、成績を上手くセーブ出来さえすれば、それはそう難しい事じゃありませんでした。あ、すいません。外見はともかく、頭と運動神経は何故だか、出来が良かったもので、少し考えながらテストの点数を故意に抑えなければ、"まあまあ出来る"の辺りをキープしておけなかったんです。そこそこ教育熱心な両親の手前、ある程度の順位はキープしなきゃいけないし、その辺の兼ね合いは結構面倒でした。
志望校を親の希望した有名私立進学校にせず、ワンランク落としたまずまずの公立の男子高校にしたのは、何となく嫌な予感がしたからです。
ほら、小説や漫画やゲームなんかでもよく転生や異世界転生モノってありますけど、大体私立っぽくないですか?特殊設定が付けやすいんですかね、よくわかりませんけど。
その点、公立、しかも男子校なら、あんまり変な事も起こりそうに無いなと思ったんですけど、それが甘かったと気づいたのは、合格して入学した初日でした。
まさか、お后様が同じ歳の、しかも同じ男性に転生してて、記憶まであるなんて思ってもみなかったんですから。
その上、異性になってるというのに前世の顔と生き写しの美男子。
(…関わりたくない…)
と、思いを新たにした瞬間でした。
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