魔法の鏡、DKに転生する〜モブですらない無機物キャラだった筈ですが〜

Q矢(Q.➽)

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4 過去最高得点記録保持者

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衣替えが終わって数日、秋風も冷たくなってきた、とある週末。

木崎君のウザ絡みにより疲弊した心身に
(お疲れ様、僕。今週も頑張ったな)
などと心の中で自分を労いつつ、昇降口で靴を履き替えて帰路につきました。

今日はラッキーDayです。
なんと木崎君が、帰りのホームルームが終わると同時に担任に、「お前には話がある。ちょっとツラ貸せ」と耳を引っ張られて行ってしまいました。
おそらく行き先は職員室か生徒指導室でしょう。

一体何をやらかしたんだ木崎君。

気になるところではありますが、聞いてしまって深入りするのも嫌なので、泣きそうな顔で此方を見ながら引き摺られていく木崎君にサヨナラと手を振りました。やれやれ。今日は久しぶりに1人で帰れるのか。

数ヶ月ぶりに清々しい気分で学校を後にして、駅に向かいました。 
僕の通う公立高校は街中にあり、最寄り駅もそれなりに大きく、駅利用客の中には周辺の高校の制服を着た生徒達も多く見かけます。うちの高校の制服は古き良き黒の学生服なんですが、他校はブレザーのところが多くて超羨ましいです。
しかしそんな中、周囲とは一線を画す風体の生徒2人連れが斜め前方から歩いて来ました。
その制服を見れば一目瞭然。
彼らは様々な意味で有名な、僕が両親に受験を勧められて固辞した有名私立進学校の生徒でした。そしてその制服というのが、白ブレザーというとんでもなくとんがった、着る者を選ぶ制服なのです。当然、着こなせる生徒などそうそういる筈も無く。
僕が今まで見た限りでは、まずまず似合っていると思ったのはわずか2、3人程度。
歯に衣着せぬ物言いを許されたなら、大半は『ご愁傷さまでござる……』と心の中で呟かざるを得ないような状態です。そんな時には心底思います。
本当にうちの公立高校にして良かったと。

いやしかしそれはその生徒達の罪ではありません。彼らはごく一般的な日本人というだけです。普通の東洋人の高校生に、白ブレザーを着こなせなんてもはやハラスメントですよ。あんなの、乙女ゲーム界在住の高身長王子様キャラ用です。2次元の衣類ですよ。
しかし、もし僕が両親に従ってかの有名私立を受験し、合格していたなら自分もあの白ブレザーに袖を通す憂き目にあっていたのかと思うと今更ながら身の毛のよだつ思いです。だって僕も彼らに負けず劣らずの平たい地味顔ですからね。それであの華美な白ブレザーはもはや悲劇。
本当にうちの高校、可もなく不可もない学生服で良かった……。


私立白ブレとすれ違い、僕はそのまま自分の乗る路線の改札に向かってコンコースを歩きました。今日は肩を組む木崎君も居ないの体が軽くて歩き易い、なんて思いながら。
目線を上げていると職業病スカウターが発動してしまうので、今日は心持ち斜め下を見るようにしながら歩きました。そうすれば行き交う人達の顔面数値も見えないし、人格を疑われてしまうような査定結果も呟かずに済みます。

そうして、今夜の晩御飯は何を作ろうかなあ、なんて思い巡らせながら駅張りの広告ポスターを流し見つつ通路を歩いていた時でした。不意に後ろから袖を引かれ、よろめいたのは。

(?)

後ろから袖を引っ張られた誰しもがそうであるように、僕も後ろを振り向きました。もしや、担任に解放された木崎君が追いついて来たのかと思ったんです。いや、別に木崎君しか友達が居ない訳じゃないですよ?
わざわざ僕を追ってくるような物好きは彼くらいのものだというだけで。

けれど、振り向いたそこに居たのは木崎君ではありませんでした。
少し息を切らせながらそこに立って僕の袖を掴んでいたのは、件の白ブレザーを着た男子生徒でした。けれど、彼の顔を見た僕は……一瞬息が止まりそうになりました。
何故、こんな人が近づいてきている事に僕のセンサーは反応できなかったのでしょうか。
抜けるような白い肌、艶々と光沢を放つ黒髪、黒曜石か黒真珠かといわんばかりに煌めく瞳、通った鼻筋に形良い赤い唇。それらのパーツが小さな顔の中に理想的な寸法と完璧な配置で収まっている奇跡。

(100……いや、120点……)

まさに、黄金比。
どれだけ神が精魂傾けたならこの顔が出来上がるのかと溜息をつかざるを得ない程の、類稀なる美しさでした。
そして僕は、その顔にとても見覚えがありました。

「っはぁ、はぁ、……くそ、手こずらせやがって……」

僕の左腕をぐいっと掴み、完璧なバランスの眉を吊り上げて、その男子生徒は言いました。

「……え、あ……」

「まさかマジだったとはな。お前を見るまで半信半疑だったぜ」

彼は何か言っていますが、僕はただ間の抜けた声しか出せません。あまりに、驚きが大き過ぎて。
ただただ、馬鹿みたいに彼の顔を見つめる事しかできませんでした。
言葉も満足に発する事のできない僕に、彼は訝しげに眉を顰めて言いました。

「ん?あれ?お前、そうだろ?鏡ヤローだよな?」

その言葉は、目の前の彼が既に僕の正体を見抜いているという事に他なりません。
驚愕に思考停止していた脳がゆっくりと活動を再開し始めて、僕の喉からもやっと言葉が絞り出せるようです。

「……ひめ、さま……」

「!!やっぱそうなんじゃねえかよ!ビビらせやがって……」

何故だかはっきりわかります。彼は、鏡時代の僕が歴代最高得点を付け続けた、奇跡の美少女・白雪姫様でした。

しかし、その仕草も言葉遣いも、僕が知る彼女のものとは全く違いました。

よく見れば、両耳には無数に開いたピアス穴。ピアスそのものは片方1つずつにしてるみたいですけど、穴の数が多くてそれだけで怖い!
艶々黒髪は中性的な雰囲気のウルフカット。
えっ、待って……?その緩めた襟元から鎖骨の辺りに覗いてるセクシーで素敵な絵、もしかしてタトゥー?

驚愕に困惑が入り混じりましたが、ただ彼に例の白ブレザーの制服は死ぬほど似合っていて感嘆です。身長は目測で180出前ほど。木崎君とそう変わらないでしょうか。頭が小さく手足が長く……。
まさかこの制服がこんなにも似合う日本人がいたという事にも驚きです。
……ん?日本人で良いんだよな?日本語喋ってるし。

やはり僕と木崎君の他にも転生キャラが居たのか、なんて考えている僕に、姫様の転生体であろう男子生徒は、綺麗な顔を歪ませながら憎々しげに言い放ちました。


「ずっと探してたぜ、クソ鏡。
お前の所為で何度も殺されかけた事も、気持ち悪い王子と結婚しなきゃならなくなった事も、全然忘れてねえからな。ようやく恨みを晴らせる時が来たぜ……」

「ヒュッ……」

どうやら僕、ずっと姫様の恨みを買ってたみたいです。








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