魔法の鏡、DKに転生する〜モブですらない無機物キャラだった筈ですが〜

Q矢(Q.➽)

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6 白ブレ襲来

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「おい、なんか知ってるならハッキリ言えよ。隠し立てすると為になんねぇぞ」

僕の後ろ髪を乱暴に掴んで、鼻の頭が触れそうな至近距離で凄む姫様。キラキラ黒曜石の中に見える瞳孔がめちゃめちゃ開いてる。ひぃ…怖。

「いやぁ、そんな隠してなんて…」

「嘘つけ」

なんとか誤魔化してやり過ごせないかと考えてたらどうやら目が泳いでいたようですぐに見抜かれた。うぅむ、鋭い観察眼…前世の天然姫様は一体何処へ…。

このままでは口を割ってしまうのは時間の問題だと思った僕は、一計を講じました。

「あっ、あれはお后様!」

「何っ?!」

僕を拘束する姫様の力が、一瞬緩んだのを僕は見逃しませんでした。
勿論、全力で姫様の腕を振り切って逃げましたよね。意外と思われるでしょうが、これでも中学では陸上部短距離のホープだったんですよ。

「あっ、こら鏡、テメェ!!」

「イントネーションが違いまーす!!」

そんな返しをしながら、一目散に通路を駆けました。

3分くらい走って駅の外に出た僕は、息を切らしながら後ろを振り返りましたが、白ブレは確認出来ず。どうやら無事に撒いたようです。
やっとホッとした僕でしたが、とりあえず今日は用心の為、バスで帰る事にしました。遠回りになるし時間はかかるけど、仕方ありません。
バス乗り場から自宅方面に向かうバスに乗り、ラッキーにも1番後ろの座席の窓側の席に座れた僕は、車窓に流れる街の風景を眺めながら先ほど起きた事を考えました。  

もしかしてとは思っていたけれど、本当に姫様も転生していたなんて驚きです。記憶もそのまま引き継いでいました。そこまではまあ、僕も木崎君も同じなのでそんなに不思議でもないですが、問題は姫の性格が真逆になってしまっていそうだという事です。
しかも、お后様だった木崎君のみならず、僕にも恨みを抱いてる様子でしたよね…。
お后様が焼けた靴でどえらいザマァをされて亡きものにされてから少し経った頃、僕は持ち主に良くない影響を与える魔道具として箱に封印されて何も見えなくなりました。その後は何処に保管されたのかもわからないんですが、今僕がこの世界に転生してるって事は…多分封印されている間に魔力切れを起こしてタダの鏡になったか、割れるかしたんじゃないかと思ってるんですよね。前世の僕、南無。

…じゃなくて。
つまり、僕が世の中を見渡せなくなった後、隣国の王子様と結婚した姫様はやっぱり幸せとは言えなかったって事なんでしょーねー。じゃなきゃ、あんなに性格が変わっちゃうなんてあり得ないでしょ。
苦労したんだろうなー。

だからといって、僕(鏡)にまで恨み広げるぅ?

…いや、不幸でストレス溜まったら、自分をその境遇に追い込んだ一因として怨恨の対象にはする、かな…。
じゃあ、また遭遇したら今度は逃げられないかも。あ、木崎君にも注意喚起しておかなくちゃ。

そんな事をつらつらと思いながら、僕は週明けからの帰宅手段をバスに切り替えるべきかと頭を悩ませたのでした。






けだるい週明け月曜の下校時。
何時ものように肩に木崎君をへばりつかせながら、僕は帰る為に正門に向かっていました。
仕方ないんです、肩に来る手を払うと腰に回ってくるんだもん。今でさえヒソヒソされているというのに。僕に女生徒が話しかけてくれないのも絶対にその所為です。だって中学までは普通に女子と話してたもん!

しかし何故か僕には意外と粘着質で、ファッションヤンキーと言い切るには結構腕っぷしも強い木崎君を防ぎ切る手立てを持たない僕は、彼の暴挙に無心で耐え忍ぶしかありません。鏡時代ほどじゃありませんけど、つくづく隷属体質だなあと自分が情けなくなります。多分、木崎君は未だに僕の事を自分の所有物くらいに思ってるんですよね。
ま、割られる心配は無いだけマシだと自分を納得させています。

「なあなあ、今日もスーパー寄るん?」

「寄りますよ」

耳元で囁くように話しかけてくる木崎君の声がこそばゆい…。何故そんなに接近するんでしょうかね。
しかしあまりに避けて、変に意識してると思われるのも嫌なので、されるがままになりつつ一緒に歩きます。

そして、校門を出た時でした。

 
「おい、鏡ヤロー」

後ろから僕の左腕を掴み、呼びかけてくるその声。嫌なデジャヴに僕の心臓は一瞬止まった気がします。
振り向かなくても、既に誰かがわかってしまいました。
振り向いたそこに居たのはやはり、白ブレザーを来たキラッキラの白雪姫様こと、姫宮 雪人君でした。


「どうして此処に…」

震え声でそう言った僕と、僕の肩に顎を乗せて眉を顰める木崎君。
姫宮君は、はあ?と呆れたように僕に答えます。

「だってお前の制服、八原川高のだったから。この辺りの高校で黒学ランなんて此処しかねーじゃんよ」

「あ…」

しまった。そうでした。
この駅を利用する範囲にある高校は、ブレザー校も多いと言いましたが、私服の高校もあります。黒の学生服のとこはウチの高校だけ。正直、姫様の私学の白ブレザーと違う意味で目立ちます。
制服を着ているのを誤魔化せる訳もなく、通っている高校が割れてしまうなんて…完全に詰みましたなこりゃ。

「お前、思ってたよりバカだな…」

「うっ…」

しかも姫宮君、酷い。

しかしその時、屈辱に唸る僕の横に居る木崎君に、姫宮君が気づいてしまいました。


「…鏡、テメェ…やっぱり隠してやがったんじゃねえか。おい継母ババァ、久しぶりだな!!」

「うお、え?白雪?えー、めっちゃ久々じゃん。てか、その攻めた白ブレ似合うね」

「ざけやがってこの野郎!」

僕は、激昂する姫宮君から思わず木崎君を庇って立ちました。姫宮君が木崎君に拳を振り上げるのが見えたからです。そして、来る筈の衝撃に備えてぎゅっと目を瞑りました。

けれど、それが来る事はありませんでした。代わりに聞こえて来たのは、数人の男の人の声。

「姫、それは不味いって」

「気持ちはわかるけど、そっちにはちゃんと復讐済みじゃん!」

「ほら、血飛沫でもついたら目立つから、ウチの制服」

おそるおそる開いた僕の目に映ったのは、腕を振り上げたままの格好の姫宮君を、3人の白ブレ男子高校生が押さえている図でした。その後ろには、やっぱり白ブレザーの男子生徒があと4人、おろおろしながら姫宮君の様子を見ています。

僕は思いました。

白ブレザーがこんなに集まってるの見たの、初めて…。




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