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8 男子校の姫(姫宮side)
しおりを挟む「くそ、降ろせっ、降ろせってば!」
「「「「「「「だーめ!!!」」」」」」」
「くそっ…」
7人に担ぎ上げられ、荷物のように運搬された。八原川高校の校門とポカン顔の鏡ヤローと後妻ババアが遠のいていくのを見て焦るが、7人は止まってくれない。
(くそ、せっかく見つけたのに!)
こいつらに言われたように、確かにババアに対しての復讐は終わってる。でも、鏡ヤローにはまだ…。
姫宮 雪人。私立 聖ヨハネス学園(男子校)高等部2年。何を隠そう、あの超有名なおとぎ話の主人公・白雪姫の転生した姿だ。
ん?白雪姫は架空の存在だろうって?
仕方ねぇだろ、実際に本人がこうして転生してきてんだから。
いや別に妄想癖がある訳じゃねえよ。メンタルは大丈夫だ。ただ、本当に白雪姫だった前世の記憶がバッチリしっかりあるってだけだ。
最初に自覚したのは、そうだな…多分、5歳頃だったか。
従姉妹の家で初めて見た某アニメで、白雪姫の話を知った時だよ。
上の兄姉と歳が10歳も離れている俺は、この世に生まれ落ちた時から蝶よ花よと育てられた。
新生児の頃からやけに整った顔立ちで、性別は男。美しすぎる新生児として、産院では一躍センセーションを巻き起こし未だに伝説になっているらしいが、しらんがな。乳幼児だった俺が覚えてる訳もないし、つーかどうでもいいっつの。
産院を退院したら家には当然親戚連中が祝いに来て、今度は一族中からチヤホヤされながら育ち、今に至る。
そんな俺には、ごく幼児期から時々変な夢を見る事があった。それは、外国の城のような場所に住んでいる夢だ。その夢の中で俺はドレスを着ていて、姫様と呼ばれている。
城の中を歩くと響く足音も、部屋着のドレスの衣擦れの音も、窓を開ければ降りてくる小鳥達の声も、本当に今体験しているかのようにリアルなもので、そんな夢を見て目覚めた後はいつも頭がぼんやりと重かった。夢か現かって言葉があるけど、本当にそんな感じで夢と現実の境界線が曖昧で、覚醒するまでに時間がかかる不思議な夢。でもそれを、結構頻発に見てた。日を替え、場面を替えて。
母さんに連れられて遊びに行った従姉妹の家で白雪姫のアニメのDVDを見たのは、そんな時だった。
馴染みのある登場人物達、身に覚えのあり過ぎる話の筋。
(あ、これって夢の中のぼくの話だ…)
そう思った。
夢に影響されてか、あの時期の俺はちょっと女の子っぽい仕草だったり喋り方をする事が多かったらしくて、両親を悩ませた事もあったらしい。この子は生まれる性別を間違えたんじゃないか、って。正直に言うとあの頃は俺自身も、雪人と呼ばれてる俺と、姫様と呼ばれてる夢の中の自分のどちらが本当の自分なのか、わからなくなっていたんだ。
だけど、そのアニメを観た日、俺は今まで見た夢の様々な場面が繋ぎ合わされ、唐突に理解した。
これは自分の前世の姿だ。だがおとぎ話の主人公だった生は終わった。そうして今の俺はこの世界に新たな人生を与えられたのだと。
そうして、疑問だった事に整理がついた俺は、徐々に落ち着いていった。
性別は変わったけど、実はそれが自分で希望した結果だった事も思い出した。姫様時代に、力を持たない女だった事でめちゃくちゃ嫌~な人生を送る羽目になった事がその選択をさせたって事も。
それからは、身についてしまってた女の子っぽい仕草やなんかを封印して近所の拳法道場に通い始めたりして、やっと現実の自分の人生を始められた気がする。こころなしか、親もホッとしてたみたいだった。
聖ヨハネス学園は、小中高一貫の名門エスカレーター校だ。そこに俺は小等部から入学した。中等部や高等部から受験して入学してくる生徒もいるけど、そういう外部入学組は成績優秀者に限られていて、特別編成された特進クラスに入れられる。そんでそんな生徒達が有名大学に進学してこの学園の平均偏差値を引き上げたりする訳だ。
対して、内部進学組の生徒達は、成績はそこそこだが、裕福だったり家格の高い家の出身者が多い。いわゆるボンボンって奴だな。
俺の場合は曽祖父が大手企業の創始者で、今は長男である親父が社長を継いでる。俺自身は上にめちゃくちゃデキる兄貴が居るから会社を継ぐ事はないけど、とにかく経済的にかなり裕福な家なのだ。
そんな訳で入学したヨハネスの小等部で、俺は早々に前世での縁者に会った。
1学年上の一ノ宮を始めとする、元・7人の小人達の転生体である。一ノ宮以外の6人は皆同学年で、兄弟とか親戚ではなく皆バラけた赤の他人。なのに何故だか顔が似てるのが不思議だ。
7人は最初から記憶がしっかりあったらしく、入学当初から俺を見つけてわらわら周りに集ってきた。
性別が変わったと言っても、第二次性徴前の子供なんかまだ性差なんかあまり表れてない上に、前世そのままの顔をくっつけてるんだから一目瞭然だったらしい。悪かったな女顔で。
その日から事ある毎に俺を取り囲むように集まって来るようになった7人。いつしかその光景は聖ヨハネス小等部の名物となり、あろう事か『姫と7人の小人』というなんの捻りもない呼び名がついた。そしてそれは、高等部になった今でも健在なのだ。
切実にやめて欲しい。
更に恥をしのんで付け加えると、俺は小等部から今までずーっと姫なのだ。
姫宮の姫ではない。いわゆる、男子校の姫という意味での姫だ。
早くから格闘技を習って体を鍛えていたから筋肉はしっかり付いたのに、この頑固なまでの女顔の所為で、未だに姫呼ばわり…。
それで舐められる事も絶えないので自然と喧嘩っ早くなってしまい、防御壁役の7人にも『落ち着け』とよく叱られている。
そして学園には…小人7人だけではなく、できれば再会を避けたいと思っていたあの男も、しっかり存在していた。
中等部から編入してきた帰国子女の若王子 ジョエル。フランス人の母と日本人の父を持つ、容姿端麗な通称・王子。
高等部では風紀委員に入り、学園の治安を守っているその若王子は、前世で俺を救ったとされている超絶変態モラハラ王子だったのだ。
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