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「雪長。どういう事かな?」


澄んだアイスグレーの瞳がめっちゃ怖い。
表情筋は笑顔を作ってるのにね。
なのに怒気を感じるって凄い。


俺は内心ビビりながらも果敢に答える。

「何の事でしょうか。」


アイスグレー…じゃない、我が兄 創一郎は深々とした溜息を吐きながら、

「わかってる癖にとぼけるな。先刻殿下から連絡があった。」

と こめかみを指で押さえた。
この人もアイツのお陰で何かとくろうしてるんだよな…可哀想。


「…同情するような目で見るんじゃない。私の頭痛の原因はお前にもあるんだからな。」

「…申し訳ございません。」

だよね。ごめん。




そのまま兄の部屋に連行され、事情聴取を受けた。





「ですから、どだい最初から無理だったのです。
殿下が何をお考えになって男の俺をお后に立てようとなさってらっしゃるのかも理解出来ませんし。」

「お前、本当に雪長だよな?」

俺が正直な気持ちを吐露したというのに、兄は途端に訝しげな顔をして、次には心配げな表情になり俺を案じるように頭を隅々まで触診される。

やめれ。別にどこもぶつけて無いし怪我も無い。


「どうしたんだ。まるで何時もの雪じゃないようだ…」

「俺も日々成長しているのです。」

確かに俺は子供の頃からボーッとしているが、本来は理不尽に扱われて黙って耐えるタイプではない。

遡行前は、あれよあれよという間に強引に婚約させられて、自由を奪われた挙句、浮気三昧されるという愚行を繰り返されたので、(なんだコイツ…)という茫然自失の期間が長かった。

望まぬ婚約、詰んだ未来、どうやら生涯童貞確定、しかも相手は好き放題に男も女も取っかえ引っ変え。



…は?

いや、おかしいだろ…おかしいよな?

俺の事は皇太子の婚約者という立場に押し込めといて、皇太子妃教育とか貞節を押し付けといて、自分はヤりたい放題とか。


俺だって女の子とよろしくしたいわ!!!(憤怒)

何で男の俺が!!妃!!!
男は良いとしてももっと他に!!!いただろ、人材が!!!(激おこ)

しかもその上、破棄!!!

前回はビックリが長過ぎて自我を取り戻せないまま殺されたが、今回はそうはいかぬぅ…。


思い出すと腸が煮えくり返る思いがして、強く拳を握ってしまい、ぐぎぎぎ、と歯軋りが…。


「殿下は俺を弄んでらっしゃいました。そんな方に自分の将来と生命をお預けする事は出来ません。」


出来ません。(断固)


そんな俺を困惑したように見ている兄。


兄や周囲には、平素は大人しい人間だと思っていた俺が、突然自己主張を始めたように見えたのだろう。

朝、俺が接した執事達も異変は感じていただろうから、その報告も父や兄には上がった筈だ。

だが、そんな些末な事に構っていられるほど、俺は暇ではない。

俺は急いで、出来るだけの事をして、未来を変えなければならない。でなくては、あと2年足らずの命なのである。



「殿下にお伝え下さい。
早目に婚約破棄の手続きを、と。」



もう流されていただけの俺はいないのだ。察しろ。




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