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嫁が欲しいとは言ったが嫁になりたいとは言ってない件。
しおりを挟む「何かの間違いでは。」
「いや、間違いない。」
情報の擦り合わせ中である。
だって俺は男なので、多分誰かと間違えて連れて来られたと考えるのが普通だ。
しかし。
「予言の巫女からの神託があったであろう。」
「はあ、まあそれはありましたが…。俺が聞いた内容は、俺が救国の英雄とやらになるって事だったんですが…。」
「?だから、救っただろう。」
「え、いや未だ何もしてませんが…。」
困惑する俺、そんな俺を見て更に困惑する彼。何この図。
「だって、我の望んだお前を俺の嫁にくれたんだから、我は暴れて国を滅ぼしたりしないし、ならお前は嫁に来た事によって国の民草を救ったであろ?」
首を傾げてるのかっわい。
…じゃなくて。
「…え?」
「…む?」
「あ…そう、いう?」
いや、ならあの結婚式は何だったの?!
姫様との結婚式は?
「だってそなた、魔王の嫁に来いとか言っても来ないであろ。」
「…まあ、そうですね?」
「だから王らも方便を用いたのであろうよ。」
「…方便…。」
あんだけの規模の結婚式迄やっといて、方便とな…。
「それに、ああいう感じで華麗に攫われた方がそなたの家族も諦めがつくであろ。」
「…そう…ですかね?」
「今頃はこの事が説明されているであろうよ。」
フフッ、と彼は笑った。
…いやちょっと待って…?
うかっと聞いてたけど、何か聞き捨てならない事、先刻言ってなかった?
「…魔王…様?」
魔王の嫁って言った?
「如何にも。
我が先日、父の跡を継ぎ新たな魔王に就任したモリオンである。」
急にドヤった。
「はぁ、なるほど…おめでとうございます。」
相手が魔族どころか魔王様なら王族などより更に礼を尽くさねばなるまい…。
俺は深々と頭を下げた。
「苦しゅうないぞ。」
そう答えるモリオン様はめっちゃ嬉しそうである。
…この魔王、案外チョロいかもしれん。
新人の魔王様か…。
それはまあ良いんだが。
「しかし、何故俺なんかを?」
それがよくわからない。
男色か?
こんだけ美しいなら有り得るかもしれないなと思いながら彼に問う。
「あ…まあ、それはその…
可愛いなと…。」
「可愛い…?」
思いもよらない返しに俺は一瞬意識が飛んだ。
可愛い…可愛いって、どんなんだっけ。
「そなたの生家、宿屋であろ?」
モリオン様の言葉に、は、と我に返る。
「あ、はい。そうです。小さいですが。」
「む。よく周りをぐるぐるしていたな。こう、長い…木の棒のようなものを持って遊んでいたな。」
「…それは多分、掃除をしていたのです。働いておりました。」
木の棒…おそらく、それは箒…。
モリオン様には俺が木の棒で地面に何か描いて遊んでいるように見えていたのだろうか。
「働いて…?
そうであったか…。
最中によく空を見上げておったゆえ、働いていたとは気づかなんだ。すまぬ。」
「…まあ、はい。そうですね。あまり真面目にはしてなかったのは認めます。」
モリオン様には俺が、デカいナリして無邪気に遊ぶアホの子に見えていたらしい。
心外。
確かにやる気は無くてダラダラやってたけども。
「よく空を見上げて、鳥や雲やらに何やら話しかけていたであろ。」
「…ああ、まあ、そうですね。」
話しかけていたというか、嫁さん欲しいって呟いてたんだけど…。
「いつ見ても嫁嫁言ってて面白い奴よと、ずっと思っていたのだ。
それで、魔王に就任したついでに嫁に娶るかと思ってな。」
「……なるほど?」
いや一応肯定しといたけど全くわからん。
俺を可愛いと思った理由も 面白いからついでに結婚とか言う動機も全くわからん。ごめん。
聞いてないよー、って心境で心は荒れ狂い中だ。
つーか、嫁さん欲しいって言ってただけで、嫁さんになりたいとは言ってなかったんだけど。
いやほんとこれ…どうしよ…。
俺は途方に暮れた。
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