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プロローグ
水無瀬 優里の最後
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違う違う違う……。
その言葉が水無瀬の脳内で無限ループする。
「くうや……」
『水無瀬 優里』は掠れた声で、何度も恋人の名前を呼ぶ。『望月 空也』と。
だが、繰り返しても返答はなく、情けない声はホテルの薄暗い部屋に消えていった。
水無瀬の腕の中には、浅い呼吸をしている恋人の顔。真っ直ぐ伸びた黒髪と端正な面は、花瓶の水と望月の血で濡れ、バラの花びらがついている。
そのこめかみから血がドクドクと溢れ、水無瀬の腕やジーズンを赤く染めた。
水無瀬の右手首には手錠がはめられ、首には派手な赤チョーカーが1つ。
望月は自分の所有物であることを誇示するため、これを嵌めたのだろう。
今から30分程前、望月により謎の薬を盛られたのか、水無瀬は気を失った。居酒屋での出来事だ。
金属がぶつかり合う音で、水無瀬が目を覚ませば、目の前に望月がいた。
その手には、白い液体が入ったボトルと手錠があり、水無瀬は何故かベッド上で寝かされているのだ。
冷酷な笑顔で迫りくる彼氏に恐怖した水無瀬は、左手首にも手錠を掛けられる直前、足で蹴とばしてしまった。
水無瀬は華奢な体躯であるが、最近護身術を習い始めた事と、望月のみずおちにクリティカルヒットしたのも相まって、彼は吹っ飛んだ。
望月は棚の角に頭を強打し、小さな呻き声を上げた。直後、不運なことに花瓶が落ち、顔面に直撃したようだ。
水無瀬は飛び起き、目の前に広がる様々な器具を見て呆れつつも、すぐさま望月の様子を確認した。
途端、恐怖、焦り、言い難い感情が波のように押し寄せてくる。
気絶している彼氏のこめかみを抑えたが、花瓶の破片が頭に刺さっていることもあり、いつ死亡するか、わからない。
(きゅうきゅうしゃ)
水無瀬は自他ともに認める天下無双のヤンデレ製造機である。水無瀬が付き合った相手は、束縛、嫉妬、開発、監禁など、まともでなくなる。
もう誰も悲しませないため、金輪際、彼氏を作らないで生活すると決めていた。
望月とは同学科で知り合った一番仲の良い友人である。良き理解者であり、相談相手だった。幾度となく、水無瀬は彼氏について相談し、助言をもらってきた。
「もう恋愛しない」
「1ヶ月でも良いから、俺と付き合ってみてよ」
土下座する勢いで懇願された水無瀬は、今までの恩もあり、望月の頼みを断れなかった。結果、理由はわからないが、嫉妬されたようで現在に至る。
水無瀬は嗚咽を漏らさない。自身に対する憤りと脳のオーバーヒートで、無心に近い。
今まで信頼してきた友人兼恋人の大怪我と、自分の愚行で過呼吸になりそうである。
消えるような声で望月に謝罪する。
立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「きゃー!!」
「やべーって!」
水無瀬の姿を目撃したカップルが、絶叫する。それもそのはず、水無瀬は血だらけで、殺人犯のようだ。
手荷物の場所がわからない水無瀬は、直接フロントへ向かう。
焦燥感に駆られ、現状を上手く伝達できない水無瀬は、実際にフロントまで行き、救急車を呼んでもらおうと考えたのだ。
女性の方が腰を抜かしたのか、背中を壁につけ、ずり落ちる。男は1人で逃亡してしまった。その光景を気にも留めず、水無瀬は彼女の横を歩く。
(いかないと)
瞬きすら忘れ、エレベータに乗る。フロントに出れば、口と目を裂けるほど開き、水無瀬を凝視するスタッフがいた。焦りに焦っている水無瀬は、状況説明を思うようにできない。そしてスタッフも硬直している。
故に、水無瀬の目的地は、徒歩5分以内にある交番へと変更された。
水無瀬が進み続ければ、自動ドアがゆっくりと開いた。赤信号が視界の端に映ったが、歩みを止める事はできない。
大きなクラクション音が鳴り響く。
水無瀬は白い光に包まれ、瞼を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
読んで下さり、ありがとうございます。
次回から、水無瀬の1人称視点です。
その言葉が水無瀬の脳内で無限ループする。
「くうや……」
『水無瀬 優里』は掠れた声で、何度も恋人の名前を呼ぶ。『望月 空也』と。
だが、繰り返しても返答はなく、情けない声はホテルの薄暗い部屋に消えていった。
水無瀬の腕の中には、浅い呼吸をしている恋人の顔。真っ直ぐ伸びた黒髪と端正な面は、花瓶の水と望月の血で濡れ、バラの花びらがついている。
そのこめかみから血がドクドクと溢れ、水無瀬の腕やジーズンを赤く染めた。
水無瀬の右手首には手錠がはめられ、首には派手な赤チョーカーが1つ。
望月は自分の所有物であることを誇示するため、これを嵌めたのだろう。
今から30分程前、望月により謎の薬を盛られたのか、水無瀬は気を失った。居酒屋での出来事だ。
金属がぶつかり合う音で、水無瀬が目を覚ませば、目の前に望月がいた。
その手には、白い液体が入ったボトルと手錠があり、水無瀬は何故かベッド上で寝かされているのだ。
冷酷な笑顔で迫りくる彼氏に恐怖した水無瀬は、左手首にも手錠を掛けられる直前、足で蹴とばしてしまった。
水無瀬は華奢な体躯であるが、最近護身術を習い始めた事と、望月のみずおちにクリティカルヒットしたのも相まって、彼は吹っ飛んだ。
望月は棚の角に頭を強打し、小さな呻き声を上げた。直後、不運なことに花瓶が落ち、顔面に直撃したようだ。
水無瀬は飛び起き、目の前に広がる様々な器具を見て呆れつつも、すぐさま望月の様子を確認した。
途端、恐怖、焦り、言い難い感情が波のように押し寄せてくる。
気絶している彼氏のこめかみを抑えたが、花瓶の破片が頭に刺さっていることもあり、いつ死亡するか、わからない。
(きゅうきゅうしゃ)
水無瀬は自他ともに認める天下無双のヤンデレ製造機である。水無瀬が付き合った相手は、束縛、嫉妬、開発、監禁など、まともでなくなる。
もう誰も悲しませないため、金輪際、彼氏を作らないで生活すると決めていた。
望月とは同学科で知り合った一番仲の良い友人である。良き理解者であり、相談相手だった。幾度となく、水無瀬は彼氏について相談し、助言をもらってきた。
「もう恋愛しない」
「1ヶ月でも良いから、俺と付き合ってみてよ」
土下座する勢いで懇願された水無瀬は、今までの恩もあり、望月の頼みを断れなかった。結果、理由はわからないが、嫉妬されたようで現在に至る。
水無瀬は嗚咽を漏らさない。自身に対する憤りと脳のオーバーヒートで、無心に近い。
今まで信頼してきた友人兼恋人の大怪我と、自分の愚行で過呼吸になりそうである。
消えるような声で望月に謝罪する。
立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「きゃー!!」
「やべーって!」
水無瀬の姿を目撃したカップルが、絶叫する。それもそのはず、水無瀬は血だらけで、殺人犯のようだ。
手荷物の場所がわからない水無瀬は、直接フロントへ向かう。
焦燥感に駆られ、現状を上手く伝達できない水無瀬は、実際にフロントまで行き、救急車を呼んでもらおうと考えたのだ。
女性の方が腰を抜かしたのか、背中を壁につけ、ずり落ちる。男は1人で逃亡してしまった。その光景を気にも留めず、水無瀬は彼女の横を歩く。
(いかないと)
瞬きすら忘れ、エレベータに乗る。フロントに出れば、口と目を裂けるほど開き、水無瀬を凝視するスタッフがいた。焦りに焦っている水無瀬は、状況説明を思うようにできない。そしてスタッフも硬直している。
故に、水無瀬の目的地は、徒歩5分以内にある交番へと変更された。
水無瀬が進み続ければ、自動ドアがゆっくりと開いた。赤信号が視界の端に映ったが、歩みを止める事はできない。
大きなクラクション音が鳴り響く。
水無瀬は白い光に包まれ、瞼を閉じた。
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読んで下さり、ありがとうございます。
次回から、水無瀬の1人称視点です。
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