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第一章

6話目 冒険者ギルド2

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「……まずこの冊子を渡そう」

空気を変えるように一度咳をしわたしの前に一冊の冊子を置いた。
何々? 異世界howto本?

「それは歴代の渡り人達が新しい渡り人に向けて纏めてきた本だ、我々では気づきにくいことも書かれてあるから今後の生活の参考にしてくれ。 次に、身分証の発行用紙を用意する、桜が登録する気があるなら冒険者ギルドに登録する、商業ギルドや他のギルドと兼任は可能だ。 逆に登録しなくてもいい、その場合国に届け出が必要だ。 その場合はこの街では届けが出せない為、王都に行ってもらう必要がある。 ちなみに各ギルドは登録料が必要だ。 必要だが今銀貨は持ってるか?」

「国に届け出る場合期限はありますか? ……銀貨というかこの国のお金自体ありません」

「届け出の期限はこちらで現認されてから一か月だ」

「じゃあ冒険者ギルドに登録します」

「分かった。 ……とここからは提案だ」

「……何ですか?」

「今あっちの世界の物なにがある?」

「はい?」

あっちの世界のもの?つまり元いた世界のもの?

「……手軽に小遣い稼ぎだ」

迫力のある顔が笑顔になった。

「すまんすまん急すぎたな、今ギルドホールを通って来たわけだが……そこに冒険者が沢山いたのは見ただろう。 そこで販売するんだ。 まあ渡り人が現れたら行われるイベントみたいなものだ。 どうだろうか? 出してみないか?」

確かに冒険者いっぱい居たな。 私一人だったらもみくちゃにされそうだった。
っとそういえば……

「私渡り人と呼ばれてますが確認されてないですよね。 どうやって確定したんですか?」

「ハンス達に食べ物を渡しただろう? それに書かれた文字で判断だ」

あっちの世界の文字は我々には読めないからなと笑うギルマス。

「此処にも渡り人が勤めている。 その者に確認して確定したんだ。 その者もあとで紹介しよう」

ハンスさん達は単なる食いしん坊じゃなかった。 ……出来る食いしん坊だった。

「ありがとうございます。 じゃあ私もお金欲しいですし何か出しますね。 需要があるものはなんですか?」

「食べ物は鉄板だな。 桜だったら美容系も有るか? それはそれで女性の冒険者が高く買い取ってくれるぞ? ……男性冒険者には不人気だがな。 生活用品はここよりも商人ギルドで売った方が高い。 特許も申請してくれるからな。 何が出ても盛り上がらないってことはない」

「お金! 価値を教えてください。 いくらで買い取られたか分からないです」

「そうかそうだな忘れとった。 他の渡り人曰く銭貨が10円銅貨が100円銀貨が1000円金貨が一万円白金貨が十万円星金貨が百万円って言ってたかな」

その異世界howto本にも書かれているから確認してくれと言われたので冊子を捲った。
目次の次のページに異世界に住むにあたってという見出しがあり、その次のページにお金について書いてあった。

ギルマスの言ってた通りのことが書いてあった。

「分かりました。 売れ筋は食べ物か……何にしようかな?」

今手元に何があったかな?

アイテムボックスを開けて食べ物をテーブルの上に置いて行った。
といっても一人暮らしだったので保存が利く物が多い。 さっき出したカップ麺の他はお菓子やおつまみフリーズドライを置いた。 その他にも生鮮食品や冷凍食品もあるが、こちらは溶けちゃうのでアイテムボックスから出さないでおく。 後は飲み物、ペットボトル飲料や缶のお酒、……瓶のお酒は封が空いちゃってるので止めておこう。 あれ? ……そんなに売れなさそう?


テーブルに出した飲食物を見て一人唸る。

「ギルマスさんはどれがいいと思いますか?」

「……そうだな、こっちで再現された食べ物も多いが……まだ再現できてない食べ物だと高値になる傾向がある。 カップ麺はどれも高い。 ポテトチップスはこちらでも食べられる、が、バーベキュー味はまだ再現できてないから高く売れる。 お酒はまだ全然再現出来てないから高値で売れる。 炭酸飲料も高い。 お菓子も砂糖が使われているのは高い。 ……再現出来てても原料が高いからな。 売るとしたらこの辺りかな」
 
ふむふむ。 私の場合魔法で取り寄せ出来るからなんなら全部売っぱらってもいいんだよな。 お金欲しいし。
それだったら調味料はどうだろう。 旅行に行って買ったはいいものの使ってない岩塩とかバーベキューシーズニングとか面白そうな物が有るんだよね。

「おつまみ系と炭酸飲料売ります。 この調味料はどうですか?」

「良いな。 ……だが調味料は商業ギルドの方が良いだろう。 あっちの方が金払いが良いぞ。 希望するなら渡りつけておくがどうする?」

「お願いします」

「分かった。 つまみと炭酸飲料は販売に回すぞ」

ギルマスが言い終わるや否や扉からギルド職員の女性が現れてトレーに乗せて炭酸飲料とつまみを持って行った。

代わりに別のギルド職員が入ってきた。

「ギルマス。 お呼びですか?」

入ってきたギルド職員は女性で私と同じくらいの歳みたいだ。 黒髪黒目で日本人っぽい。

「おう。 今回保護された渡り人との顔合わせだ。 今日出勤してたのは灯里あかりだけだったよな」

「そうですね。 彼女が渡り人ですか?」

ギルマスと向き合っていた女性が私の方へ振り返った。
そのやりとりをポカーンと見ていたが振り返ったのに気付いて慌てて立ち上がった。

「今回来た渡り人は橋沼桜だ。 で、こっちが…」

「本宮灯里よ。 こっちに来て5年になるかな? 宜しくね」

「橋沼桜です。 宜しくお願いします」

「分からないことがあったら聞いてね。 この街で渡り人のサポートもしてるから」

「ありがとうございます」

「そろそろホールの準備もできたろうから行くか。 灯里は桜のサポートしてくれ」

「はい」

ギルマスと灯里さんと共にギルドホールまで行くと、そこは異様な熱気に包まれていた。

「……なにこれ」

「……みんな食いしん坊だからね」

そう言って灯里さんは笑った。

「さっきギルマスに販売するものを渡したよね、それをここで競りに掛けるの。 渡り人が来たら行われるイベントだよ。 食いしん坊も多いけどお祭り騒ぎも好きだから……毎回こんな感じで盛り上がるの。 素行不良の冒険者は参加出来ないから安心して。 イチャモンはないよ」

「野郎ども準備は良いか!!!」


「「「「「おう!!!」」」」」

「今日のラインナップはジャーキーにスナック菓子、するめとおつまみチーズかまぼこ、塩辛に酒盗。飲み物は炭酸飲料10本だ。」

炭酸飲料はメーカー品だから美味しさは折り紙付きだよ。 飲み物系は冒険しないもんね。


「「「「「おー!!!」」」」」


「サイダーだ! 良いな私も参加しようかな。」

羨ましげに炭酸飲料を見る灯里さん。 ……そうか補充できないからもう無くなったのか。

「灯里さん、よければ要りますか? まだ残ってるんで」

「良いの?! あ、いや…それは申し訳ないよ」

一瞬表情を輝かせた灯里さんだったが、瞬時に苦笑いになり断られてしまった。

「じゃあ、交換条件はどうでしょう? 美味しいご飯屋さんお手頃な宿屋とか……。 食べながらこっち話聞かせてもらえませんか?」

「それなら良いよ。 むしろ誘おうと思ってたし」

「まずは炭酸飲料。 味はレモン! 金貨1枚からスタート!」

「金貨2枚!」

「金貨3枚!」

競りは始まり灯里さんと話しているうちに終わった。




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