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第三章 進路とダンジョン攻略

52話目 学祭

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「ゆうゆうこっちこっち!!」

「優奈おはよう」

「すーちゃん、あーちゃん、おはよう!!」


時刻は9時を少し過ぎたところ。
大学の最寄り駅で待ち合わせをした。
今日は3人で学祭に参加だ。

最初はお姉ちゃんを誘おうかと思ったのだが、お姉ちゃんに用事があったため断念した。

どうしようかなと、私が1人で行くのを不安がっていたら、2人が一緒に行ってくれることになった。
今日は3人で楽しむぞーと気合が入る。
大学行きのバス停に並び、バスが来るのを待つ。

「オープンキャンパスは参加したけど学祭って初めて。 ワクワクするね」

「私はパンフレットで決めちゃったもんー、大学ってどういうところなんだろう、ドキドキするねー」

「二人とも一緒に行ってくれてありがとうー。 調べてみたんだけど色々企画があるらしいよ? 脱出ゲームとかもあるらしいの、参加してみようよ」

「「いいね」」

スマホで検索していた画面を2人に見せる。
脱出ゲームは参加決定で、他に周るところは2人と一緒に決めた

バスが到着したので乗り込み、迷惑を掛けないように小声で話しながら大学へと向かった。


「わー!! 楽しそう」

「お祭りね」

「出店も色々あるよー」

入り口にある受付で実行委員の人にパンフレットを貰う。


初めて足を踏み入れる大学の敷地は広く、
なのに隅から隅まで飾り付けられていた。

入り口には門が置かれ風船でアーチが作られている。
そこをくぐり抜けるとサークルや研究室が出店した出店が並んでいた。
開催時間は10時から。
私たちは開催時間に間に合うように来たのでまだ人はまばらだ。
大学の駐車場もまだ十分空きがある。

本当にお祭りみたい。
高校の学園祭をパワーアップさせたような出来栄えだった。
そこから少し離れた場所で3人でパンフレットを覗き込んだ。

「メインステージでもイベントあるねー」

「クイズ大会だって。 飛び入り参加受付中って書いてある」

「すーちゃん、参加したいの?」

「いやいやー。 問題が気になっただけだよー。 人前なんて無理だよー」

「そっかー。 でも確かに気になるね。 時間もまだあるし後で見に行こうか」

「「賛成!!」」

時間が決まっているメインステージの催し物をチェックし気になる物は見に行くことに。
その間の時間は屋台や展示物を見て回ることにした。

「ゆうゆう、あれ見て」

すーちゃんから声を掛けられそちらを振り向く。
そこにはオープンキャンパス参加者と書かれた立て看板が設置されていた。

「あんな感じでやるんだね」

オープンキャンパス未経験の私とすーちゃんはその立て看板をまじまじと眺めた。

「そうよ、ほらあっち見て」

そう言ってあーちゃんが指さしたほうを見る。
そちらにはテントが張られ、そこにはオープンキャンパス参加者受付と書かれていた。
参加予定の高校生も少人数だが周りで待機している。

「あっちで受付をして時間になったら構内の案内や授業の説明を受けるの。 優奈もこれから何校かオープンキャンパス参加するなら流れ覚えておいて損はないよ」

「そうだね」

あーちゃんにそう言われ、鞄からメモ帳とペンを取り出す。
大学メモと表紙に記入されたそれは、キャンパスの雰囲気や展示物の内容を書きこむように新しく準備したものだ。

「ゆうゆう、本気だねー」

それをみてすーちゃんがにやりと笑う。

「そうともさー私本気だよー!!」

その笑いに私もにやりとニヒルな笑みを浮かべて返しておく。

「楽しそうで何よりだね」

私たちのやり取りを呆れながらも見守ってくれるあーちゃん。
そんな感じで構内を見て回った。



「土井、こっちも頼むわ」

「うす」

「土井ー!! そっち終わったらこっちのフリマの荷物も頼む!!」

「うす」

「ちょっとまって、こっちの方が急ぎよ!! ボンベの移動私達じゃ無理なんだから!!」

「うす」



「なんか土井って人、人気だね」

「そうだね、さっきからめっちゃ名前聞くね」

展示物を見て回って、屋台で軽食を買い、フードコートに席を取り食べる。
するとさっきまで気にならなかった声が聞こえてくるようになる。
その中で一番印象に残ったのが『土井』 という人だ。

そんなに呼ばれると気になってしまう。

「どの人だろうね」

「ボンベの移動って言ってたから……あの人じゃない?」

「どれどれ? あ、あの人……」


その人には見覚えがあった。

「あの人……前……」

「鈴もそう思う? 私もどっかで見たような気が……」

「……お祭りじゃないかな? 同じように荷物運んでたような……」

「「それだ!!」」

ここで会ったが百年目。
今こそ鑑定の時!!

こっそり鑑定を使うと名前とレベルが出た。
やっぱり職持ちだ!!

レベルを見ると12と出た。

そう言えば他の人はどうだろう?
丁度良いとその場から見える人達を鑑定してみた。

……ざっと見た感じ居ない。
数百人に1の確率位なのかな?

だとしたら全国だと……えーっと……えー……え?

100分の1で120万人くらい?
そう考えると結構居ても良さそう?
都道府県で割ったら……47都道府県で、えーっと……1県あたり約25000人か。

いや、少ないね。 少ないはずだよ。


そう計算して一人納得していた。

「あの人凄い力持ちだよね」

「うん、あ、ほら見て今度はボンベ2本抱えて持ってるよ」

「1本でも動かすの大変だったのにね」

2人は感心したように眺めている。

「あれが噂の『職持ち』 なのかな? そう言えばゆうゆうのお姉さんも『職持ち』 だったよね」

「あ、うん!!」

急に話を振られ我に返る。

「優奈のお姉さんもあんな感じで力持ちなの?」

「綺麗で強いって良いよね。 カッコいいよねー」

「そうでしょー、カッコいんだー」

モヤモヤが晴れたせいか、姉を褒められても、前よりも素直に受け取ることが出来た。



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