58 / 113
第三章 進路とダンジョン攻略
58話目 姉と学祭
しおりを挟む「お姉ちゃん、今日はよろしくね」
「はい、よろしく頼まれましたー」
週末を迎えた今日はお姉ちゃんと学祭だ。
私も姉も動きやすいラフな格好。
姉はそれプラス帽子を被っている。
どうやら最近、どこに行っても目立つらしい。
今日行く大学は姉も見学に訪れた場所らしく、大学の名前を言ったら案内を自ら買って出てくれた。
二人で家から最寄りの駅へと歩く。
姉の大学入試までの体験談を聞きつつ、道すがらすれ違う人達を鑑定しまくった。
「優奈、ちゃんと前を見ないと危ないよ」
「えへへ、ごめんなさい」
きょろきょろと辺りを見渡しながら歩いていたら前から歩いてくる人にぶつかりかけた。
姉に服の袖を引っ張られ衝突は避けられた。
最寄り駅に着くと電車で20分ほど揺られ、そこからバスへ乗り継ぐべくバス停で待つ。
どうやら私たちが並んだ時は前のバスが出てすぐだったらしく数人しか並んでいなかった。
徐々に人数が増え、バスが到着する頃には私達の後ろだけでも10人を超える人が並んでいた。
バスに乗り込むと、後ろの方の二人用の座席に歩み寄り、窓側に私、通路側に姉が座る。
乗り込んでくる人たちの客層は大学行きの為徐々に若くなる。
高校の制服を着た人や親子で来ている人、大学生っぽい私服の人が多くなっていく。
そんな中で姉がチラチラと視線を集め始めた。
「お姉ちゃん……なんか見られてる?」
「あー……テレビ効果かな? 有名になってごめんね」
「そうだった。 お姉ちゃん有名人の仲間入りしてたんだ」
「忘れてたんかい」
暴動鎮圧の映像はテレビで繰り返し放送され、さらにはインタビューも受けていた。
ネットでも話題になってたのを忘れてた。
そんな中で女子高生のような二人組に声を掛けられた。
「あのー……もしかして『戦乙女』 さんですか?」
「イクサオトメ」
「優奈復唱しなくていい」
私は耳慣れない言葉を聞いて思わず小声で復唱した。
女子高生の耳には届かなかったが、姉の耳には届いたらしく肘で小突かれた。
「……すみません、戦乙女って何ですか?」
「あ、すみません。 あの……勇者イガラシと一緒にテレビに映ってた方ですか?」
「あぁ、はい。 ダンジョンのあれですかね? 確かに五十嵐と映ってました」
姉はどうやらスルーしようとしたらしい。
しかし周りを囲まれてしまった。
姉は素直に認めた。
したら女子高生たちはキャーと黄色い悲鳴を上げた。
「握手してもらっても良いですか? ファンなんです」
「カッコよかったです!! 私も握手してください」
女子高生たちは吊革に捕まっていたので信号で止まった瞬間に握手をした。
だがここはバスの中だ。
目的地に着くまで姉は女子高生たちからの質問攻めにあっていた。
目的地に着くと女子高生たちは名残惜し気に降りて行った。
何なら、一緒に周ってくれませんか? とも言われたが私の付き添いの為断ってくれた。
バスから降りて目の前の大学に目をやる。
今回の大学は街中にある。
だから敷地はそんなに広くなく、大きな建物がギュッと密集しているような感じで圧迫感がある。
建物の大きさに口をあんぐり空けて眺めていたら、姉に袖を引かれて歩き出す。
「優奈、ちょっとこっちに行くよ。 あのまま立ち止まってたらまた捕まりそう」
「人気者は大変だねー」
「他人事か」
飾り付けられている正門をくぐり、パンフレットを受け取らずにずんずん建物に近づいていく。
「お姉ちゃん、パンフレットは?」
「貰ってもらってる」
「誰に?」
私と姉の二人で来ているはずだ。
私は大学生に知り合いなどいない。
って事は姉の知り合いがこの大学に通っているのか?
疑問符が頭の中に浮かぶ。
答えが分からないままどんどん進んでいった。
「お待たせ!!」
「おう」
一番近くの建物に入り、階段を上る。
1階と2階には人気が無い。
3階まで一気に登ると、自販機と長椅子が設置されている踊り場に人が居た。
姉に手を引かれるような形で来たので顔は見えなかったが、姉が声を掛けたのでどうやらここで待ち合わせをしていたみたいだ。
「お姉ちゃん?」
「ん? それが妹か?」
私とその男性が姉に声を掛ける。
姉はこちらを向き、にっこり笑った。
「優奈、紹介するね。 これが噂の勇者だよ」
「おい」
「勇者……イガラシ!!」
「おい。 ちょっと待て、その紹介はやめろ」
姉の言葉を聞き顔を出す。
そこには画面の向こうで何度か見た勇者イガラシの姿があった。
「本物だ!!」
「おい、橘妹……その呼び方はやめろ」
「あ、ごめんなさい」
「素直!! 姉!! 妹を見習え!!」
素直に謝ったら勇者イガラシが姉に怒り出した。
「私はいつでも素直ですが」
「素直の意味が違う!!」
姉と勇者イガラシのやり取りを大人しく見守る。
どうして勇者がここに?
「それは置いておいて、優奈。 今日は五十嵐が案内してくれるからね。 質問があったら質問攻めしたげて」
「言い方」
「五十嵐さんはここの学生なんですか?」
「まぁな」
「なら他のメンバーもここの学生なんですか?」
確か五十嵐さんは動画配信者の撮影してたんだよね。
って事は他の人たちも居るのかな?
そう思い問いかけた。
「俺たちの事?」
「やっぱり気になるよね」
「お前のことは気にしてないと思うぞ」
自販機の影から動画に映っていた3人が顔を出した。
「五十嵐が女子をナンパしてる」
「五十嵐にも春が……」
「五十嵐ズルい」
「おい」
出て来てそうそうからかい始めた。
このノリ動画で見た。
若そうだと思ったけど大学生だったんだね。
「すまん、橘姉。 呼んでも居ないのに後をつけられた」
「いいよいいよ。 案内してくれるなら、ね。 優奈」
「うん。 時間作ってもらってありがとうございます」
わざわざ案内を買って出てくれるなんてありがたいもんね。
お姉ちゃんだってこの大学に通っているわけじゃないし詳しい人が増える分には助かるもん。
そう思ってお礼を言ったら五十嵐さんが呆けたような表情をした。
「……姉みたいになるんじゃないぞ」
「言い方よ」
そう言って6人の団体で大学を回ることになった。
33
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析。
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。
敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。
配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。
常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。
誰も死なせないために。
そして、封じた過去の記憶と向き合うために。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる