婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。

屋月 トム伽

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君が良い

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今なんと??

「不躾な頼みとは思っているが…」
「はい…あの…私とほぼ初対面ですよね?」

昨日、花屋で予約を受け付けただけですけど!
一体いつ、白羽の矢が立った!?

「何故!?」

心の声は隠せなかった。

「実はだ…。困っているんだ。」
「はぁ…何をでしょうか?」

困っている様子はわかる。
今にも、クッと奥歯を噛み締めそうな顔だった。

「…俺の上司に娘を紹介されて、気に入られてしまって…断っているのだが、意外としつこくされていてだな…」

まぁ、この見た目では、女はイチコロでしょう。
しかも、公爵家ですからね。
公爵家だからとお断りをしないのかしら。

「身分を出したらどうですか?」
「向こうは当然身分は知っている。だが、上司も公爵家だから中々押しが強いのだ。」

どうやら、揉めずに断りたいらしい。
しかも、上司で公爵様なら確かに断りにくい。

「公爵令嬢ならいい縁談です。ご結婚なさったらどうですか?」
「…結婚相手は自分で選びたいのだ。」

意外と誠実なのか、しかし、何故私に頼みに来る?
疑問は隠せず、聞くしかない。

「…どうして私に?」

クロード様は、すまない。と言いながら申し訳無さそうな顔になった。

「昨日、花屋で見送ってくれただろう。それを上司の娘が見たらしい。それで、君とのことを疑われて…また、結婚を迫られている時で…つい、その…君が彼女だと嘘をついてしまって…」
「はぁ?何故そんなおかしな嘘を??」

この人大丈夫か!?
いやいや、昨日女性に花を買いましたよね!?

「昨日の花をプレゼントした女性がいるじゃないですか!」

思わず、力が入ってしまった。

「昨日のは、後輩の女騎士の結婚祝いに騎士達と贈るためだ。俺が遅出だったから代表で買いに行っただけだ。」

それで一番大きい籠盛りをだったらしい。
クロード様ならもっと良いものを贈れるだろうけど、騎士には平民もいる。
きっと、皆とお金を合わせたのだろう。

「きちんと礼はする。ぜひ頼まれて欲しい。この通りだ。」

男前の騎士が私に頼むとは、本当にそのご令嬢が嫌なのだろう。
あまりの真剣な姿に可哀想に見えてきた。
確かに政略結婚は嫌だろう。
私も好きでもないハロルド様と結婚するのかと、悩んでいた。
今は婚約破棄されて、どこかほっとしている。

それに、私は婚約破棄したばかりだし、暇だし、彼女のフリぐらいならまぁいいか、と軽く考えてしまった。
どうせ今は縁談の話なんかないし。

「…私で大丈夫なのですか?」
「君が良いんだ。…君なら婚約も、」
「あっ、婚約者のフリまではいいんじゃないですか?ご令嬢が諦めればいいのでしょう?」

クロード様の婚約という言葉を遮りそう言った。

婚約者のフリまでは大丈夫でしょう。
そこまでしたら、クロード様がお相手が見つかった時に困るかもしれませんからね。

「クロード様、私で良ければお受けします。」
「本当か?」
「はい。」
「助かる。この礼は必ずする。何でも言ってくれ!」

明らかにさっきとは違い、雰囲気がパァと明るくなった。

そして、今日から私はクロード様の偽物の彼女に決定した。



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