婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。

屋月 トム伽

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今日からお世話になります

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「クロード様、急にご厄介になって大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。マーカスなんかは大喜びだ。」

クロード様の馬車でクロード様の邸に向かっているはずなのに、方向が違っていた。

「クロード様…どちらに?」
「少し騎士団に用事がある。俺の勤めている屯所なんだが…ラケルは馬車で待っていてくれ。」
「はい。」

騎士団の屯所につくと、敷地内に馬車を止めてクロード様は中に一人で行ってしまった。
今日はお休みだったけど、お忙しいのだろう。

しばらく待っていると、クロード様と数人の騎士様達が出てきた。

挨拶をするべきなんだろうけど、クロード様は馬車で待っていろと言った。
今はまだ正式に挨拶をするべきではないのかと思った。

窓から見るとクロード様はからかわれたのか少し照れている。
私はせめてと思い、窓越しに会釈をした。
クロード様は軽く手を上げ振ってくれ、騎士様は会釈を返してくれた。

クロード様は用事が済んだようで、駆け足で馬車に戻ってきた。

「すまない。待たせた。」
「大丈夫ですよ。そんなに待ってませんから。」

何の用事か言わなかったから、きっと仕事のことだと思った。

そして、クロード様の邸につくとやはり大歓迎だった。

「ラケル様!クロード様と婚約おめでとうございます!」
「ありがとうございます。まだ結婚前ですがよろしくお願いしますね。」

執事のマーカスさんはやはり感涙だった。

私に用意された部屋は陽当たりのいい部屋で、クローゼットもまあまあ広い。

「結婚してもこの邸で生活することになるから、結婚すればすぐに主寝室の隣に移って欲しい。それまではこの部屋でいいだろうか。別の部屋が良ければ…」
「この部屋で充分ですよ。」

クロード様のお父様が存命中は領地の本邸に行かず、爵位を継ぐまでは騎士の仕事も続けると、話された。

「こんな事態だが、ラケルが初めて邸に住む日だ。夜は晩餐にするから、二人でゆっくり食べよう。」
「はい、楽しみですね。」

そして、荷ほどきをし、伯母様に今度クロード様とお邪魔することなどを書き、手紙を出した。
マーカスさんはすぐに出します、と言って手紙を快く引き受けてくれた。

晩餐には、はりきってドレスの支度をした。
私の支度をしてくれるメイドのアンも何故かはりきっている。
中々手際がいい。
だが、耳の後ろに見たことのない香水を少し、塗るようにつけられた。

「アン、その香水は?私のではないですが…」

いつの間にか、クロード様が香水を買ってきたのかしら?

「男を誘惑する香水です!マーカスさんの許可はとっています!」

私の許可は!?
堂々と変なものを私につけないで欲しい。

「…あの、どうして?」
「クロード様もラケル様も真面目ですから!」
「クロード様も真面目ですか?」
「仕事一筋の方ですから。」

では、時々迫ってきそうなのは何でしょうか。
結婚してくれ、と言われた時は、私に覆い被さってきそうでしたよ。

支度が済み、部屋を出るとクロード様が待ってらした。
クロード様の容姿は完璧だ。
あまりに素敵過ぎて、今まできっとメイベルみたいなタイプがすぐに寄って来て、クロード様は女性を遠ざけていたのかもしれない。
しかし、奥手には見えない。

「ラケル…香水を変えたのか?」
「少しだけ…不思議な香水をつけました。」

早速、香水の効果があるのか。
クロード様を見上げると、また私を見ていた。

「クロード様…今日はありがとうございました。とても助かりましたし、側にいてくれて心強かったです。」
「あれくらいどうってことない。困ったことがあれば何でも言ってくれ。」
「ありがとうございます。」

ハロルド様のことはもう大丈夫だと思う。
ハーヴィ伯爵があんなに怒っているのは初めて見たのだから。

クロード様がすぐに結婚したいと言ってくれたから、結婚も近い。
準備で忙しくなるから、正直ハロルド様に関わっている暇はないのだ。




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