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第二章 レオンハルト編

治せないのか

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リンハルト男爵邸に行くと、セシルは一人で部屋にいた。
表情は暗く落ち込んでいるようにみえた。

何故来なかったのか話を聞くと、リンハルト男爵夫妻に反対され行けなかったと、言いにくいながらも話してくれた。

「申し訳ありません。まさかレオンハルト様が王子だと知らず無礼でした。」
「セシルは無礼なんかしていないよ。それから、レオンと呼んで欲しい。」

椅子に腰かけたまま向かい合わせにそう話すと、セシルはまた下を向いてしまった。

「セシル、私の邸で昼食を待たせてあるが、その前に顔を診せて欲しい。ライアは魔法騎士だ。治せるかもしれない。」
「治せるのですか!」

セシルは目を見開いて驚くと同時に期待の顔になった。
やはりこの顔を気にしているんだと実感した。
治せるなら早く治してやりたい。

椅子から立ち上がりライアと交代で座るとライアはセシルの髪をかきあげ頬を撫でるように診ていた。
セシルは恥ずかしいのか瞼を閉じている。

その様子に少しモヤッとした。
自分がセシルを治してやりたかったのではと脳裏をかすったのだ。
そして、薄黒い痣だけでなく髪を上げたところには爛れもあった。

「ライア、どうだ?」
「…今のままでは治せませんね。」
「今のままとは?」
「魔素が強すぎます。これは闇の魔素です。闇の魔素を取り除けば顔の爛れも治せますよ。」

そう言うとライアは髪をおろし手を離した。

「セシル、君は魔法使いか?」
「いえ、私は普通の人間ですが…。」

ライアはじっとセシルを見ており、益々モヤッとした。

「光魔法の浄化でできるかもしれませんが、高確率でセシルは闇の魔力を持っていますよ。そうなれば、光魔法では浄化出来ないかもしれません。顔の爛れは俺でも治せますけど。」

「どういうことだ?」
「だから、セシルは闇の魔力を持っていると思われます。そうでなければ、闇に侵されてこんなに元気なわけがありません。夕べもスイーツを美味しそうに食べていたじゃないですか。」

「だが、闇の魔素なら光魔法で浄化できるのでは?それならシャレイド公爵に頼めば…。」
「闇と光は相反してます。普通の人間ならそれでいいかもしれませんがセシルは闇の魔力を持っていますから、抵抗があるかもしれません。」

では、治せないのかと呆然としてしまう。
セシルに期待だけさせてしまい、やはり私では誰も助けられないのかとも思ってしまった。
セシルもまた下を向いてしまった。

「レオン様…治せないとは言ってませんよ。」
「本当か!?」
「闇魔法を使える者に魔素を吸収してもらえればいいのです。」

闇魔法と言えばオズワルドだが…頼めない。
闇魔法は珍しいのだ。ブラッドフォードのように代々闇の魔力の家はそうない。
しかし、オズワルドほどではなくても闇魔法を多少は使える者はいる。

「探そう。魔法騎士にも闇魔法を使える者は多少はいたはずだ。」
「まぁそうですね、オズワルド様には頼めませんしね。」

察したようにライアが言った。

「…あの、オズワルド様とはブラッドフォード公爵様ですか?」



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