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結婚式
__マクシミリアン伯爵邸。
王都から帰って来て、数日経っていた。マクシミリアン伯爵邸では、朝から使用人たちが走り回り忙しくしている。
「キーラ様。とっても綺麗です」
今日は結婚式で、私はウェディングドレスを着て部屋にいた。そこにシリル様が白いバラを持ってやって来ていた。灰色のスーツを着ているシリル様が可愛くて笑顔が零れた。
「シリル様もとっても素敵ですよ」
照れながらシリル様が近づいてくる。
「キーラ様。どうぞ」
照れながら、シリル様が白いバラを私に差し出してきた。シリル様の胸にも、白いバラが飾ってあった。
「これを私に?」
「はい。結婚式だから白いバラを着けるって……」
庭師が用意した白いバラをシリル様が胸に着けた。それを、私にも持って来てくれたのだ。シリル様の気持ちが嬉しくて、そっと白いバラを受け取った。
「じゃあ、このバラはブーケに入れますね」
そう言って、持っているブーケに一輪白いバラを追加した。シリル様はそれを嬉しそうに見ていた。
「では、そろそろ行きましょうか」
「はい。お父様と待ってます。すぐに来てくださいね」
「はい。すぐに行きますからね」
シリル様が喜んで走り出した。そばには、首に白い蝶ネクタイをつけ結婚式用になっているリュズがご機嫌でついて行った。
すぐに出ようとして、もう一度鏡を見て髪を整えた。そうして、玄関ホールへと行くとリクハルド様が待っていた。
いつも無表情のリクハルド様が、私を見るなり息をのんだ。そして、笑みを浮かべて私に手を差し出した。
「おいで、キーラ」
「はい」
リクハルド様の手を取ると、彼が私を抱き上げて馬車へと乗せてくれる。馬車の扉が閉まると、教会へと向かって出発した。
「ふふっ、私が結婚したことを知れば、お父様は驚きますわね」
「速達で手紙を出していたんだがな……間に合わなかったな」
「私を置いて、一人で外国に行ったんですからいい気味です」
ツンとして言うと、リクハルド様が私を見つめていた。
「綺麗だ。キーラ」
「本当にですか?」
「本当」
そう言って、リクハルド様が毛のついた肩掛けを私にかけてくれる。マクシミリアン伯爵領はすでに寒いから、ウェディングドレスでは風邪をひくと思ったのだろう。リクハルド様が優しい。
そうして、マクシミリアン伯爵領の教会で結婚式を挙げた。急遽王都から帰ってきたせいで、結婚式の参列者はほとんどいなかった。
だけど、何故かいるウィルオール殿下。彼が私とリクハルド様の結婚の証人だった。そして、ウィルオール殿下の傍らには、シルヴィアなる令嬢が困った様子で、それでいて怯えている。
「ウィルオール殿下。いつの間に……」
「リクハルドの結婚式だからね。証人のために来てあげたのだよ。それに、キーラ嬢のラッキージンクスのおかげでシルヴィアと出会えた。感謝している」
「そ、そうですか」
ちらりとシルヴィア様を見ると、彼女は今にも泣きそうだ。ウィルオール殿下は、真実の愛の相手が見つかったからか楽しそうだった。
「た、助けてくださいっ……」
シルヴィア様が両手を握りしめて懇願してくるが、ウィルオール殿下は腹黒い笑顔で彼女に迫る。必死で眼で訴えるシルヴィア様に同情はする。だけど、リクハルド様が言っていた。今までにないほど、ウィルオール殿下が女性に夢中になっていると。
「だ、大丈夫ですよ」
(大丈夫そうには見えないけど)
「ウィルオール殿下にラッキージンクスは発動したのなら、シルヴィア様がウィルオール殿下の真実の愛の相手です」
優しい眼差しでシルヴィア様に言うと、リクハルド様が呆れる。
「ウィルオール殿下。ほどほどに……逃げられますよ」
「大丈夫だ。俺は、リクハルドのような冷たい奴とは違う。ねぇ、シルヴィア。君は逃げないよね」
「うぅっ……怖い……」
腹黒い笑顔と、愛おしそうな眼差しでシルヴィア様に顔を近づけて言うウィルオール殿下に、大丈夫かなと思う。
「さぁ、次はどこに逃げ……じゃなくて、どこに旅行に行こうかな」
「逃げる?」
怪しいウィルオール殿下に首を傾げて聞いた。
「逃げているわけではないけど、陛下が俺に追手を差し向けているからね。せっかくのシルヴィアとの旅行を邪魔されたくないんだよね」
「なんで!?」
「ジェレミー・ヘイスティングにお仕置きしたからかなぁ……そう言えば、エレインも放って来たな。まあいいか。そのうち陛下が解放するだろう」
笑い交じりでウィルオール殿下が言う。リクハルド様も陛下に見つかる前にマクシミリアン伯爵領に帰って来たし、この二人は何をしているんだろうと呆れる。
「マクシミリアン伯爵邸に宿泊しますか?」
リクハルド様が聞く。
「今日はやめておく。親友の結婚式の夜だからね。邪魔はしない。だが、近いうちに行く」
「では、そういうことで」
「ああ、リクハルド。幸せになれよ」
「ええ」
そう言って、逃げたいシルヴィア様を決して逃がさずに連れてウィルオール殿下が教会の外に行った。
「シルヴィア様は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろう」
何の根拠があって!?
そう突っ込みたい気持ちになるが、シリル様を見るとそんな考えも一瞬で消えた。
「シリル。おいで」
教会の外には、シリル様が今か今かと待っていた。シリル様をリクハルド様が呼べば、笑顔を見せた。思わず、リクハルド様と顔を見合わせた、そして、シリル様が駆けながらやって来る。
「お父様! キーラ様!」
リュズを引き連れてシリル様が近づいて来ると、リクハルド様が抱き上げた。すると、雪がちらほらと降り始めた。まるで、花びらのシャワーだった。
「雪?」
「今年の初雪だな……急いで帰って来て正解だったな」
「まさか、それで王都から急いで帰ってきたんですか?」
「マクシミリアン伯爵領の初雪をキーラに見せたかったからな……」
ジェレミー・ヘイスティングのことで、陛下から逃げただけではなかった。手のひらを開けば、ゆっくりと降ってくる雪が手にひらに落ちてくる。
「綺麗……」
「結婚式の初雪は幸先がいい。マクシミリアン伯爵領ではそう言われている」
「それって、ラッキージンクスですか?」
「ラッキージンクスかな? マクシミリアン伯爵領ではそう言い伝えられているというものだが……」
なんだか嬉しいと思えて、頬が緩んだ。私に初めてラッキージンクスがきたのだ。
「キーラ様。マクシミリアン伯爵領はいっぱい雪が降るんです」
「楽しみですわ」
そうして、リクハルド様がシリル様を抱っこしたままで、私を抱き寄せていた。
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最後までお読み下さりありがとうございました!
王都から帰って来て、数日経っていた。マクシミリアン伯爵邸では、朝から使用人たちが走り回り忙しくしている。
「キーラ様。とっても綺麗です」
今日は結婚式で、私はウェディングドレスを着て部屋にいた。そこにシリル様が白いバラを持ってやって来ていた。灰色のスーツを着ているシリル様が可愛くて笑顔が零れた。
「シリル様もとっても素敵ですよ」
照れながらシリル様が近づいてくる。
「キーラ様。どうぞ」
照れながら、シリル様が白いバラを私に差し出してきた。シリル様の胸にも、白いバラが飾ってあった。
「これを私に?」
「はい。結婚式だから白いバラを着けるって……」
庭師が用意した白いバラをシリル様が胸に着けた。それを、私にも持って来てくれたのだ。シリル様の気持ちが嬉しくて、そっと白いバラを受け取った。
「じゃあ、このバラはブーケに入れますね」
そう言って、持っているブーケに一輪白いバラを追加した。シリル様はそれを嬉しそうに見ていた。
「では、そろそろ行きましょうか」
「はい。お父様と待ってます。すぐに来てくださいね」
「はい。すぐに行きますからね」
シリル様が喜んで走り出した。そばには、首に白い蝶ネクタイをつけ結婚式用になっているリュズがご機嫌でついて行った。
すぐに出ようとして、もう一度鏡を見て髪を整えた。そうして、玄関ホールへと行くとリクハルド様が待っていた。
いつも無表情のリクハルド様が、私を見るなり息をのんだ。そして、笑みを浮かべて私に手を差し出した。
「おいで、キーラ」
「はい」
リクハルド様の手を取ると、彼が私を抱き上げて馬車へと乗せてくれる。馬車の扉が閉まると、教会へと向かって出発した。
「ふふっ、私が結婚したことを知れば、お父様は驚きますわね」
「速達で手紙を出していたんだがな……間に合わなかったな」
「私を置いて、一人で外国に行ったんですからいい気味です」
ツンとして言うと、リクハルド様が私を見つめていた。
「綺麗だ。キーラ」
「本当にですか?」
「本当」
そう言って、リクハルド様が毛のついた肩掛けを私にかけてくれる。マクシミリアン伯爵領はすでに寒いから、ウェディングドレスでは風邪をひくと思ったのだろう。リクハルド様が優しい。
そうして、マクシミリアン伯爵領の教会で結婚式を挙げた。急遽王都から帰ってきたせいで、結婚式の参列者はほとんどいなかった。
だけど、何故かいるウィルオール殿下。彼が私とリクハルド様の結婚の証人だった。そして、ウィルオール殿下の傍らには、シルヴィアなる令嬢が困った様子で、それでいて怯えている。
「ウィルオール殿下。いつの間に……」
「リクハルドの結婚式だからね。証人のために来てあげたのだよ。それに、キーラ嬢のラッキージンクスのおかげでシルヴィアと出会えた。感謝している」
「そ、そうですか」
ちらりとシルヴィア様を見ると、彼女は今にも泣きそうだ。ウィルオール殿下は、真実の愛の相手が見つかったからか楽しそうだった。
「た、助けてくださいっ……」
シルヴィア様が両手を握りしめて懇願してくるが、ウィルオール殿下は腹黒い笑顔で彼女に迫る。必死で眼で訴えるシルヴィア様に同情はする。だけど、リクハルド様が言っていた。今までにないほど、ウィルオール殿下が女性に夢中になっていると。
「だ、大丈夫ですよ」
(大丈夫そうには見えないけど)
「ウィルオール殿下にラッキージンクスは発動したのなら、シルヴィア様がウィルオール殿下の真実の愛の相手です」
優しい眼差しでシルヴィア様に言うと、リクハルド様が呆れる。
「ウィルオール殿下。ほどほどに……逃げられますよ」
「大丈夫だ。俺は、リクハルドのような冷たい奴とは違う。ねぇ、シルヴィア。君は逃げないよね」
「うぅっ……怖い……」
腹黒い笑顔と、愛おしそうな眼差しでシルヴィア様に顔を近づけて言うウィルオール殿下に、大丈夫かなと思う。
「さぁ、次はどこに逃げ……じゃなくて、どこに旅行に行こうかな」
「逃げる?」
怪しいウィルオール殿下に首を傾げて聞いた。
「逃げているわけではないけど、陛下が俺に追手を差し向けているからね。せっかくのシルヴィアとの旅行を邪魔されたくないんだよね」
「なんで!?」
「ジェレミー・ヘイスティングにお仕置きしたからかなぁ……そう言えば、エレインも放って来たな。まあいいか。そのうち陛下が解放するだろう」
笑い交じりでウィルオール殿下が言う。リクハルド様も陛下に見つかる前にマクシミリアン伯爵領に帰って来たし、この二人は何をしているんだろうと呆れる。
「マクシミリアン伯爵邸に宿泊しますか?」
リクハルド様が聞く。
「今日はやめておく。親友の結婚式の夜だからね。邪魔はしない。だが、近いうちに行く」
「では、そういうことで」
「ああ、リクハルド。幸せになれよ」
「ええ」
そう言って、逃げたいシルヴィア様を決して逃がさずに連れてウィルオール殿下が教会の外に行った。
「シルヴィア様は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろう」
何の根拠があって!?
そう突っ込みたい気持ちになるが、シリル様を見るとそんな考えも一瞬で消えた。
「シリル。おいで」
教会の外には、シリル様が今か今かと待っていた。シリル様をリクハルド様が呼べば、笑顔を見せた。思わず、リクハルド様と顔を見合わせた、そして、シリル様が駆けながらやって来る。
「お父様! キーラ様!」
リュズを引き連れてシリル様が近づいて来ると、リクハルド様が抱き上げた。すると、雪がちらほらと降り始めた。まるで、花びらのシャワーだった。
「雪?」
「今年の初雪だな……急いで帰って来て正解だったな」
「まさか、それで王都から急いで帰ってきたんですか?」
「マクシミリアン伯爵領の初雪をキーラに見せたかったからな……」
ジェレミー・ヘイスティングのことで、陛下から逃げただけではなかった。手のひらを開けば、ゆっくりと降ってくる雪が手にひらに落ちてくる。
「綺麗……」
「結婚式の初雪は幸先がいい。マクシミリアン伯爵領ではそう言われている」
「それって、ラッキージンクスですか?」
「ラッキージンクスかな? マクシミリアン伯爵領ではそう言い伝えられているというものだが……」
なんだか嬉しいと思えて、頬が緩んだ。私に初めてラッキージンクスがきたのだ。
「キーラ様。マクシミリアン伯爵領はいっぱい雪が降るんです」
「楽しみですわ」
そうして、リクハルド様がシリル様を抱っこしたままで、私を抱き寄せていた。
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