子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽

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ラッキージンクスの令嬢と氷の伯爵様 2

重い沈黙が流れると、空気を察したリクハルド様が執事に手を挙げた。

「ケヴィン。温かいお茶を淹れてやれ」
「かしこまりました」

目の前のテーブルに淹れられたお茶が冷めていることに気づいたのか、リクハルド様の指示で新しいお茶が淹れられた。

ちょうどいい温度で淹れられたお茶を飲むと、目の前の冷たい雰囲気からホッとする。

「……美味しい。これはミュントスの茶葉ですか?」
「わかるのか?」
「お茶は大好きです。色んなお茶を嗜みましたし……でも、ミュントスの茶葉は寒い気候のところしか育たないと聞いてます。だから、とても珍しくて……あまり飲んだことないのですぐに気づきました」

ミュントスの茶葉は、ミュントスの山でしか摂れない珍しい茶葉だ。しかも、そのせいで高級茶葉であり王都などの街ではたまにしか出回らない。

さすがマクシミリアン伯爵家だ。ミュントスの山はマクシミリアン伯爵領にあるし、貴重な茶葉をおかしな噂のある客人に出すとは……。

お茶を飲む私をジッとリクハルド様が見つめている。鋭い目つきのせいで、いたたまれない気分はある。

どうせ、すぐに婚約破棄されるだろう。私はラッキージンクスと呼ばれた令嬢だ。すぐに真実の愛がリクハルド様にも見つかる。そのうえ、今はふしだらな令嬢という不名誉な二つ名まで手に入れた。
私と婚約を続ける意味はない。

「キーラ嬢」
「は、はい」
「名前をキーラと呼んでも?」
「も、もちろんです」
「では、俺のこともリクハルドと、名前で呼んでくれ」

ということは、私はリクハルド様と呼ぶ権利を得たのだ。この気難しいと言われる氷の伯爵様に。

「では、キーラ。結婚は? する気はないのか?」
「してくださるなら嬉しいですが……」

むしろ、こんな貴重なお茶を出してくださってありがとうございますと思える。

「では、今夜からはマクシミリアン伯爵邸で過ごされるといい。部屋も準備してある」
「ご、ご迷惑をおかけします……」

王都のナイトミュラー邸を売って、海外に行ってしまったお父様。私の行く場所として、マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込んで、住むところを確保した。

それでも、リクハルド様からここに住んでいいと言う言葉を聞くまでは、少しだけ疑っていた。
リクハルド様を見ると視線が交わる。なんだが照れてしまうと、そっと顔を反らした。

「……婚約者になるのなら、一緒に住んでも問題はないだろう」
「そ、そうですね」

恥ずかしそうにした私を見て、不埒なことを考えていると勘違いされてないだろうか。そんなことをかんがえてなかったけど、ますます恥ずかしい。

「……では、結婚前提の婚約を結ぶということでかまわないか?」
「お願いしたいですが……あ、あの、私の噂をご存じないのですか?」
「噂など些細なことだ」

あれが些細な噂だろうか。まったく細かいことを気にしてない気がする。さすが冷酷非情な伯爵様だ。

「君に問題がないのであれば、すぐに婚約を結ぶ。結婚しても、形だけとはいえ夫婦としても責も負う」

いや、重い。なんだろうか。重い言い方ですよ。

すでに結婚を考えているような言い方だ。そんな方は初めてで驚いてしまう。

でも、この言い方の理由もわかっている。私に結婚の意思確認する理由も。

リクハルド様が、婚約者を持つのは、私で二人目だ。

誰とも二度目の婚約を結ばないという噂のリクハルド様。
彼には、前婚約者であった令嬢との間に子供がいるからだ。



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