17 / 83
そうして、夜が終わる
しおりを挟む
__夜。
焼けた庭に来ていると、私が炎の魔法を使ったところだけが焼け野原だった。
「どうしましょう……また、芝生でも植えればいいかしら?」
弁償するべきだと悩んでいれば、リクハルド様がやって来た。
「キーラ。こんなところで何をしているんだ? ここは寒いだろう? 風邪をひくぞ」
「リクハルド様……すみません。こちらの庭をどう弁償しようか考えてまして……」
「弁償? そんなことをする必要はない。君には救われた」
「でも、キレイな庭が台無しです」
「本当に気にしなくていいんだが……」
「お金ならいっぱい持ってますよ?」
「金はキーラが自分のものに使えばいい」
「私のお金はあてにしないのですか?」
「はっきり言えば、金には困ってない。それに、婚約者に金を使わせるような甲斐性なしではないつもりだ。それと、これを……」
なんだろうと思いながら、リクハルド様が差し出してきた物を受け取った。
驚いた。赤いリボンで結ばれた贈り物なんて、初めてだった。
「私に?」
「君には感謝している。だから、贈ろうと思った」
「今日出かけていたのは……」
「それを買うためだが?」
優しいと思う。今までの、真実の愛を求めて婚約を申し込んできた令息たちとは違う。
真実の愛を求める目的だったから、私には贈り物一つしなかった。
「どうした? キーラ。贈り物は気に入らないか?」
「違うんです。嬉しくて……」
目尻が潤んだ。こんな婚約者らしいことが初めてで動揺している。
「そうなのか? シリルもキーラからの絵本を持ったままで眠っていたから同じだな」
「リクハルド様もシリル様を……」
「シリルも、君が気に入っているらしい」
「本当ですか? 嬉しいです」
嬉しくて目尻を拭きながら笑みが零れた。
「なんだか、複雑なんだが……」
「何がですか?」
リクハルド様の言葉の意味が分からずにきょとんと首を傾げると、彼が私の手を取った。
「別に……それよりも、今度それをつけて一緒に夜会に出てくれないか?」
「夜会ですか?」
「殿下の婚約発表がある。それに招待されているんだ」
「私がご一緒していいのですか?」
「婚約者はキーラだけだ。殿下にも、そう伝える」
贈り物を持った手ごと包まれてリクハルド様がそっと口づけをしてくる。貴族らしい仕草に緊張した。
「リクハルド様……私、恋愛初心者なのですけど……」
「だから?」
「きゅ、急にそんなことをされると驚きます!」
恥ずかしくて赤ら顔になる私と違って、リクハルド様は慌てない。リクハルド様に背を向けると、彼が私の肩に自分の上着をかけた。
「マクシミリアン伯爵領はもう寒い。部屋に帰ろう」
「庭は?」
「そうだな……次は噴水でも建てるか?」
「シリル様が遊べるようなものでお願いします」
「要望は聞こう」
緊張で自然と顔がツンとした。そんな私の手を繋ぐリクハルド様が歩き出した。
「君は、子供が好きなんだな」
「子供は可愛いですよ。それに、私は結婚は諦めていますから……子供と暮らすなどないと思っていました。だから、シリル様と一緒に暮らせて夢みたいです。意外ですか?」
「そうだな」
愛想のない返事をするリクハルド様。彼は笑わない氷の伯爵様と言われるほど有名だった。
でも、この顔に身分。騎士団でも有名だった。婚約の申し込みもあったはず。でも、誰とも二度目の婚約を結ばなかった。今でも、シリル様の母親であるセアラ・シンクレアを想っているのだろう。
リクハルド様に期待などしない。彼は結婚するつもりだと言ったけど、本気ではないのだろう。私と婚約を結ぶ方はみんな同じだった。
私ではない真実の愛を求めているだけ。
リクハルド様が今までと違うのは、シリル様がいることだ。きっと、私がシリル様をルイーズ様の手から救い出したから感謝を表しているだけだろう。
リクハルド様は、シリル様が大事なのだ。
「夜会のドレスも贈る。明日には選んでくれるか?」
「いいのですか?」
「もちろんだ。それに、キーラがいると他の女が近づけないだろう。ずっと一緒にいてくれると助かる」
「そういうことなら……」
リクハルド様も、きっと私を好きにはならないだろう。だから私は、リクハルド様とシリル様の境遇を利用させてもらって、ここでシリル様と穏やかな婚約期間を楽しむのだ。
焼けた庭に来ていると、私が炎の魔法を使ったところだけが焼け野原だった。
「どうしましょう……また、芝生でも植えればいいかしら?」
弁償するべきだと悩んでいれば、リクハルド様がやって来た。
「キーラ。こんなところで何をしているんだ? ここは寒いだろう? 風邪をひくぞ」
「リクハルド様……すみません。こちらの庭をどう弁償しようか考えてまして……」
「弁償? そんなことをする必要はない。君には救われた」
「でも、キレイな庭が台無しです」
「本当に気にしなくていいんだが……」
「お金ならいっぱい持ってますよ?」
「金はキーラが自分のものに使えばいい」
「私のお金はあてにしないのですか?」
「はっきり言えば、金には困ってない。それに、婚約者に金を使わせるような甲斐性なしではないつもりだ。それと、これを……」
なんだろうと思いながら、リクハルド様が差し出してきた物を受け取った。
驚いた。赤いリボンで結ばれた贈り物なんて、初めてだった。
「私に?」
「君には感謝している。だから、贈ろうと思った」
「今日出かけていたのは……」
「それを買うためだが?」
優しいと思う。今までの、真実の愛を求めて婚約を申し込んできた令息たちとは違う。
真実の愛を求める目的だったから、私には贈り物一つしなかった。
「どうした? キーラ。贈り物は気に入らないか?」
「違うんです。嬉しくて……」
目尻が潤んだ。こんな婚約者らしいことが初めてで動揺している。
「そうなのか? シリルもキーラからの絵本を持ったままで眠っていたから同じだな」
「リクハルド様もシリル様を……」
「シリルも、君が気に入っているらしい」
「本当ですか? 嬉しいです」
嬉しくて目尻を拭きながら笑みが零れた。
「なんだか、複雑なんだが……」
「何がですか?」
リクハルド様の言葉の意味が分からずにきょとんと首を傾げると、彼が私の手を取った。
「別に……それよりも、今度それをつけて一緒に夜会に出てくれないか?」
「夜会ですか?」
「殿下の婚約発表がある。それに招待されているんだ」
「私がご一緒していいのですか?」
「婚約者はキーラだけだ。殿下にも、そう伝える」
贈り物を持った手ごと包まれてリクハルド様がそっと口づけをしてくる。貴族らしい仕草に緊張した。
「リクハルド様……私、恋愛初心者なのですけど……」
「だから?」
「きゅ、急にそんなことをされると驚きます!」
恥ずかしくて赤ら顔になる私と違って、リクハルド様は慌てない。リクハルド様に背を向けると、彼が私の肩に自分の上着をかけた。
「マクシミリアン伯爵領はもう寒い。部屋に帰ろう」
「庭は?」
「そうだな……次は噴水でも建てるか?」
「シリル様が遊べるようなものでお願いします」
「要望は聞こう」
緊張で自然と顔がツンとした。そんな私の手を繋ぐリクハルド様が歩き出した。
「君は、子供が好きなんだな」
「子供は可愛いですよ。それに、私は結婚は諦めていますから……子供と暮らすなどないと思っていました。だから、シリル様と一緒に暮らせて夢みたいです。意外ですか?」
「そうだな」
愛想のない返事をするリクハルド様。彼は笑わない氷の伯爵様と言われるほど有名だった。
でも、この顔に身分。騎士団でも有名だった。婚約の申し込みもあったはず。でも、誰とも二度目の婚約を結ばなかった。今でも、シリル様の母親であるセアラ・シンクレアを想っているのだろう。
リクハルド様に期待などしない。彼は結婚するつもりだと言ったけど、本気ではないのだろう。私と婚約を結ぶ方はみんな同じだった。
私ではない真実の愛を求めているだけ。
リクハルド様が今までと違うのは、シリル様がいることだ。きっと、私がシリル様をルイーズ様の手から救い出したから感謝を表しているだけだろう。
リクハルド様は、シリル様が大事なのだ。
「夜会のドレスも贈る。明日には選んでくれるか?」
「いいのですか?」
「もちろんだ。それに、キーラがいると他の女が近づけないだろう。ずっと一緒にいてくれると助かる」
「そういうことなら……」
リクハルド様も、きっと私を好きにはならないだろう。だから私は、リクハルド様とシリル様の境遇を利用させてもらって、ここでシリル様と穏やかな婚約期間を楽しむのだ。
695
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜
まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。
【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。
三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。
目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。
私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる
はなまる
恋愛
らすじ
フレイシアは10歳の頃母と一緒に魔物に遭遇。その時母はかなりの傷を負い亡くなりショックで喋れなくなtったがその時月の精霊の加護を受けて微力ながらも魔法が使えるようになった。
このニルス国では魔力を持っている人間はほとんどいなくて魔物討伐でけがを負った第二王子のジェリク殿下の怪我をほんの少し治せた事からジェリク殿下から聖女として王都に来るように誘われる。
フレイシアは戸惑いながらも淡い恋心を抱きジェリク殿下の申し出を受ける。
そして王都の聖教会で聖女として働くことになりジェリク殿下からも頼られ婚約者にもなってこの6年フレイシアはジェリク殿下の期待に応えようと必死だった。
だが、最近になってジェリクは治癒魔法が使えるカトリーナ公爵令嬢に気持ちを移してしまう。
その前からジェリク殿下の態度に不信感を抱いていたフレイシアは魔力をだんだん失くしていて、ついにジェリクから枯渇聖女と言われ婚約を破棄されおまけに群れ衣を着せられて王都から辺境に追放される事になった。
追放が決まり牢に入れられている間に月の精霊が現れフレイシアの魔力は回復し、翌日、辺境に向かう騎士3名と一緒に荷馬車に乗ってその途中で魔物に遭遇。フレイシアは想像を超える魔力を発揮する。
そんな力を持って辺境に‥
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。少し間が開いてしまいましたがよろしくです。
まったくの空想の異世界のお話。誤字脱字などご不快な点は平にご容赦お願いします。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。他のサイトにも投稿しています。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる