24 / 83
冷静と嘲笑の間に
「……頬っぺたが熱かったのに……」
二人で並んで歩いて行った。ルイーズ様には見向きもしなかったのに……何だか複雑だった。
話はシリル様の母親のこと。シリル様のことに私は無関係なのだろう。
顔を上げれば、シリル様と同じ髪色の男性が女性の腰に手を回して歓談している。
(シリル様も大きくなれば、きっとあんな風な髪色になるのでしょうね……シリル様の方が背も高く顔も良さそうですけど)
なんだが寂しくて、ぼうっとして見ていた。すると、男性が私の視線に気づいた。
「キーラ……!?」
「……はい。どなたでしょうか?」
シリル様のことで頭がいっぱいで男性の顔など認識していなかった。
「いやですわ。キーラ様。ジェレミー様をここまで追いかけて来られては困りますわ」
「ジェレミー……?」
誰であっただろうと思い出していると、目の前の二人はくすくすっと笑っていた。
「ああ、思い出しましたわ。婚約破棄の慰謝料を払わずに別れた貧乏な令息ですわね」
「誰が貧乏だ! 我が家は立派な侯爵家だ! 伯爵令嬢の分際で何を言う!!」
「あなたよりもおこずかいは持ってましてよ?」
「我が家の家格と、資産に比べればこずかいなど比べ物にもならん」
「家で張り合っても……あなたは、爵位を継いでないですし……」
「どうせすぐに継ぐことになる。俺が後継者だからな」
後継者と言っても、ジェレミー様は次男だった。でも、長男が若く他界したために彼が爵位を継ぐことになるらしい。そのせいで、とっても偉そうだ。
「それはよかったですね。せいぜい潰さないように頑張ればよろしいのではなくて?」
「……っ!?」
私はおこずかい戦争をしに来たのではないのだ。別れた男などどうでもいい。悔いが残るのは一つ。慰謝料を払われなかったことだけ。
「はぁーー」
シリル様のずっと一緒にいたい。あわよくば、母親にもなりたかった。それも、無理な気がしている。落ち込んだ時に現れないで欲しい。しかも、シリル様と同じ髪色。そのせいで、シリル様を思い浮かべてこんな男を見つめることになってしまっている。
思わず、ため息を吐いた。
「その態度は治らないのか! いつもいつもっ……」
「あなたの態度が不愉快だからです。だいたいもう別れているのですよ? 私がどこで何をしようと関係ないのでは?」
「では、なぜ私を見ていた。まさか、私を追いかけてきたのではあるまいな」
「そんなわけないでしょう……私は一度たりとも別れた婚約者とやり直したいなど思ったことはありません」
見ていたのは、シリル様と同じ髪色だったからだ。はぁ、同じ髪色に不愉快で、丸坊主にしてやりたい。
「では、新しい婚約者探しか? だが、無理だぞ。ふしだらな令嬢に縁談など来るものか」
ハッ! とジェレミー様が笑う。
「それとも、このヘイスティング侯爵家の妾にでもなりたいのか? それなら、考慮してやってもいい。お前は魔力も高く、顔はいいからな」
ジェレミー様が私の顎を掴むように手を添えて言う。ジェレミー様の婚約者は「ちょっとっ……!」と言って、妾発言に眉根を寄せた。
「……私に、許可なく触らないで」
「お高くとまる必要があるか? 今さら誰がお前を相手する。下男でも相手にするか? ふしだらな令嬢の純潔など怪しいものだ。侯爵家の力で婚約中の不貞で娼館送りにしてもいいのだぞ。庇ってくれる父親はいないしな」
侮蔑を込めた嘲笑に苛ついた。空気がピリッとした。
止めを刺して城の外壁にぶら下げてやる。
そう思い魔法を使おうとした瞬間、肩を引き寄せられた。
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。
楠ノ木雫
恋愛
若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。
婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?
そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。
主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。
※他のサイトにも投稿しています。