26 / 83
不機嫌な婚約者と古い手紙
ルミエルを医務室で手当てをしてもらったあとには、ウィルオール殿下が休んでいる控え室に集まっていた。
「リクハルド……その顔を何とかしてくれないか?」
足を組んで肘掛けに肘をついている自分を、ウィルオール殿下がずっと凝視していた。そして、我慢ならずにとうとう言った。
「顔は変えられません」
「顔は変えられなくとも、その不機嫌な様子は何とかしてくれ。俺は殿下だぞ」
「知ってますよ。それが何か?」
「もういい……それよりも、セアラの手紙が見つかった。先ほど、ルミエルから見せられたが……なぜ、今ごろ見つかったのか……」
不思議そうな顔でウィルオール殿下が首を傾げる。
突然発見された、セアラが生前、友人であったルミエルに出した手紙。それが見つかったと、ルミエルから連絡があった。
「ルミエル。今まで、本当に気付かなかったのか?」
「申し訳ございません。最近、執事が古い手紙などを片付けていた時に、セアラからの手紙が出てきたと言って渡してきたのです。私が、手紙が届いた時は王都にいたので、すぐに渡せなかったようで……」
「それで、今ごろ見つかってリクハルドに連絡をしたわけか……」
それで、ウィルオール殿下のもとへと、ルミエルも交えて集まっていた。
「……もしかしたら、キーラのおかげかもしれません」
「キーラ嬢の? なぜだ? 彼女は、セアラの件には関係ないだろう?」
「セアラのことには関係なくても、あのルイーズを追い出したのは、キーラです」
「そう言えば、ルイーズが家庭教師であるための魔法の契約書が燃えて消えたと言ったな……」
「あれは、ルイーズがシリルの家庭教師であるための効果が顕著にみられていました。おかげで追い出すこともできずに……おそらく、俺たちのやっていることも邪魔されていたと、思います」
「マクシミリアン伯爵家に、ルイーズをいさせるためにか……」
ウィルオール殿下の言葉に頷いた。
キーラがルイーズが家庭教師である魔法の契約書を無効にするまで気付かなかった。だが、このタイミングでセアラの手紙が見つかった。偶然なのかどうかの区別がつかない。
だけど、そう思える。
きっかけは、間違いなくキーラだと。
マクシミリアン伯爵家で変わったことと言えば、キーラと婚約を結んで彼女を邸に招いたこと。そして、ルイーズと決闘して彼女を魔法の契約書をもって追い出した。
「もしかしたら、シリルの父親を証明されないように魔法の契約書が発動していたのかもしれません。シリルの父親の生家に引き取られれば、ルイーズが家庭教師であることが困難になる恐れがあったのだと……今はそう思います」
「ふむ……」とウィルオール殿下が頷いた。
「それで、機嫌が悪い理由はなんだ? 先ほど、キーラのところに行ったのだろう? 彼女はどうした?」
「別に」
「……キーラの元婚約者であるヘイスティング侯爵家のジェレミーが来たと伝えたが……どうだったのだ?」
「相変わらず、傲慢そのものでしたよ」
ジェレミーが夜会に来たと報告があり、キーラが心配になり彼女を探すと、迫られている現場に出くわした。
思い出せば、また腹立たしいものがあった。
「しかし、キーラ・ナイトミュラーか……少し気になるな。シリルも懐いているのだろう?」
「むしろ、シリル目当てでマクシミリアン伯爵邸での滞在を楽しんでいます」
お茶会をすれば、シリルしか目に入ってないキーラを思い出せば、部屋中に冷気が漂ってきた。
「リクハルド。冷気が漏れている。怒っているのか?」
「……氷の魔法が得意なもので」
ジェレミーがキーラに手を出そうとしていた。キーラに背を押されるまま、彼女を置いてきたが心配になる。それと同時に苛ついていた。
「……悪いが、これで失礼させていただきます」
「そうしてくれ。リクハルドがいると部屋が寒い」
そう言って、席を立てば、ウィルオール殿下が呆れたように足を組みなおして寛いだ。
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。
楠ノ木雫
恋愛
若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。
婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?
そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。
主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。
※他のサイトにも投稿しています。
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。