子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!

屋月 トム伽

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仁義なき戦い


「クリス様が行ってしまいました。リクハルド様のせいで……」
「もう休むだけだから、必要ないだろう」
「じゃあ、リクハルド様も帰ってください」
「部屋まで、どうやって帰るつもりだ!」

リクハルド様に抱えられて、ゆらゆらと身体が揺れる。そっと瞼を閉じれば、いつの間にか最上階の部屋へと到着していた。

「だいたい、どうしてここにいるんですか? シンクレア子爵邸に行ったんじゃ……」
「キーラが、邸を出ていったと、伝達が来たから、急いで早馬で帰ってきた」
「じゃあ、シリル様は?」
「子供に早馬は無理だ」

シリル様がいない。残念だ。

「その落ち込みようは何だ?」
「シリル様がいませんからね。それに、せっかくのチャンスだったのに、ルミエル様を置いてきて良いのですか? 同じ邸に泊まれるんですよ」
「ルミエルに気持ちはないと言っただろう。確かに何度か、相手をしたが……」
「やっぱりですか! いったい何度抱いたんですか! この変態ぃ!!」

ギュウッと両手でリクハルド様の首を絞めた。

「首を絞めるな」
「リクハルド様の好感度が上がらないんですよ! これ以上好感度を下げてどうするつもりですか!?」
「どうもしない」

ちょっとどころか、まったく動じないリクハルド様に腹が立つ。彼の腕の中で腕を組んでツンとすれば、リクハルド様の顔が近づいてくる。

「きゃあ!」

__パチンッ!!

キスされると思い、とっさにリクハルド様の頬をひっぱたいた。

「……っ、なぜ、叩く? 婚約者は俺だぞ」
「だって、リクハルド様には、ルミエル様がいるじゃないですか! とにかく、下ろしてください!」
「下ろしても逃げないか?」
「逃げません! リクハルド様が帰ればいいじゃないですか!?」
「俺は、キーラを連れ戻しに来たんだよ! 行くところもないだろう! 領地に帰るつもりか!」
「安心してください。王都に邸を買いますから。もう、不動産を巡っていますので、ご安心を!」
「まったく安心できない! どんな行動力だ!」
「いいから下ろしてくださいーー!」

バタバタとリクハルド様の腕の中で暴れると、「暴れるな」とリクハルド様が困っている。

「酔っていて歩けないだろう。ベッドまで連れて行くから落ち着け」
「落ち着けない」

ゆっくりとリクハルド様がベッドに私を下ろすと、じっと顔を近づけられる。真っ直ぐな視線にどきりとする。

「リクハルド様……帰らないんですか?」
「帰るときはキーラと一緒だ。俺がここまで探しにきた意味を考えろ」

それは、私を迎えに来てくれた、ということだ。
私を心配してくれているのだろう。今もベッドから起き上がって、私のためにお水を入れている。

「……帰る気ないのか?」
「だって……同じ邸でぎったんばったんされると、さすがに……」
「だから、違うと……!」

同じ屋根の下で同衾されると、さすがに私だって傷つく。そう思うと、リクハルド様から、冷ややかな空気が流れてくる。

「ちなみに、キーラを押し倒したらどうなる?」

突然の発言に身体が固まり、瞬きも忘れている。
しかし!!

「全力で抹殺します!!」

一瞬で怒り力を込めて言うと、リクハルド様の持っていたグラスの水が一瞬で蒸発した。

「おい。水が蒸発したぞ」
「なんですか。殺るなら受けて立ちますよ」

ベッドから起き上がり、ふらりとした足に力を入れて言う。拳を握れば、私の頭の横にグリモワールが現れた。

「言っておくが、俺は攻められるのは好きではない」

リクハルド様から、冷ややかな空気が流れてくると、彼の頭の横に美しいクリスタルのような水色のグリモワールが現れた。

「誰が攻めてますか!」

ルミエル様に誘われて、ほいほい乗ったクセに!

「炎の槍(フレイムランス)!!」
「氷壁(アイスウォール)」

リクハルド様の股間目掛けて、炎の槍を放つと、リクハルド様の目の前に一瞬で氷の壁ができた。そのせいで、炎が消える。

「炎が……」
「俺の氷のほうが上のようだな」

冷ややかに勝ち誇ったリクハルド様にイラッときた。

「雷の矢(ヴォルティックアロー)!」

雷の矢を打つと氷が割れる。部屋中に雷が落ちて衝撃音が響き渡る。リクハルド様は、颯爽と避けて、間合いを詰めてくる。

「キーラ。俺が勝てば一緒に帰る約束をしろ」
「いいですわよ! まだまだ、殺れますから!」
「約束だぞ」

目の前にやってきたリクハルド様にそう言って、「炎(フレイム)」と叫んだ。目の前に炎が現れると、リクハルド様が炎に青い炎を纏った手を突っ込んだ。

「これで終わりですわ!」

そのまま爆発させてやる!

そう思った瞬間、

「絶対零度」

リクハルド様が一言詠唱すると、私の炎が青い炎に飲まれて凍った。

「俺の勝ちだ」

そして、凍った炎が割れて飛び散った。


「キャア!」

割れた炎の氷から、私を守るようにリクハルド様が、抱き寄せて庇った。






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