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魔封じ
ウィルオール殿下の別荘は、裏には森が広がり庭はこれでもかと広かった。別荘というよりは、カントリーハウスだった。
私は今日も郵便が来ないことに項垂れていると、ウィルオール殿下が話しかけてきた。
「リクハルドからの手紙でも待っているのか?」
「そ、そういうわけでは……リクハルド様から、文など来ませんわ」
「そうかな」
「そうですわ」
「それよりも、シリルが遊んでいる。俺たちはカゼボでお茶しないか?」
「シリル様を見ながら、お茶……いいですわね」
「そうだろう。子供は見ていて飽きないものだ」
この数日、シリル様はリュズと庭で子供らしく遊んでいた。一日遊んでいるのに、子供の体力は尽きなくて、すでに夕方を過ぎている今もリュズと戯れていた。それを、ウィルオール殿下とガゼボから見ていた。
「浮かない顔だね?」
「ウィルオール殿下は、お出かけしないのですか?」
「俺は謹慎中だ。別荘から出れば、すぐに陛下の耳に入る」
ウィルオール殿下が、別荘の警備を見て言う。彼らは警備だけではなく、見張りも兼ねているらしい。
「リクハルドもすぐに来るかな?」
「来ないと思いますよ」
「そうかな?」
「婚約も破棄するんじゃないですか?」
「リクハルドがそう言ったのか?」
「リクハルド様は何も言いませんけど、数日経ったのに来ないじゃないですか」
「リクハルドが来なくて淋しいのか?」
「むぅ……暇なら夜会でも行かれたらどうですか? 秘密裏に出かけるなら、私は協力しますよ」
「夜会などに行けば、俺が外出したことがバレバレだよ。だが、そうだね……」
すると、別荘に誰かがやって来た。
「誰かな?」
「どこかで見覚えが……」
ウィルオール殿下と見ていると、やって来たのはクリストフ様だった。来るなり彼はすかさずウィルオール殿下に挨拶をした。
「ウィルオール殿下。お会いできて光栄です」
「なんだ。クリストフか。元気か?」
「ええ。胃が暴れるほど元気です」
疲れ切った表情でクリストフ様が言う。どうやら、胃が痛いらしい。
「クリス様。こんなところまでどうしたんですか? ウィルオール殿下に用事ですか? 殿下は休暇中ですよ?」
「休暇ではなく、俺は謹慎中だ」
ウィルオール殿下が淡々と言うが、眼の前のクリストフ様は怒っていた。
「用事があるのはお前だ! キーラ!」
「私ですか? お酒でもご馳走してくださるのですか?」
「ご馳走して欲しいのはこちらだ」
「ええーー」
ギラリとクリストフ様が睨む。
「なんですか?」
「なんですか、ではない。勝手にマクシミリアン伯爵家を出るなど何を考えているんだ!」
「私だって、色々思うところがありまして……もしかして、リクハルド様が探してましたか?」
もしそれなら、少しは帰ろうかと思えた。
「それは知らん。不機嫌で恐ろしい形相だったが……」
「やっぱり帰るのやめようかな……」
思わず、呟いた。
「キーラ」
「はい」
「俺は、マクシミリアン伯爵の様子を伝えに来たのではない」
「じゃあ、何しに来たのですか?」
「お前に、魔封じを施すためだ」
「嫌なんですけど……!!」
魔封じなんか施されたら、魔法が使えない。自分の身をどうやって守れと!?
「拒否権はない。誰のせいで魔法師団が全軍出動したと思う!」
「私のせいじゃないですよ」
「誤魔化すな! お前のせいだ!」
クリストフ様が怒って言うと、ウィルオール殿下が一言呟く。
「ちなみに、俺が謹慎になったのもキーラ嬢のせいだね」
「それは私だけのせいじゃありません」
クリストフ様の言い分はわかっているけど、ウィルオール殿下には同意できない。
「キーラ。何のバツもなく、のうのうと過ごせると思うなよ。バカンスなどしている場合ではない」
「だから、俺は謹慎中なんだよ。文句は陛下に言ってくれ」
ウィルオール殿下が、笑顔で頬杖をついて言う。
「私だってバカンスじゃないですわ。私だって悩みがありますのよ」
「お前の悩みなど知らん。とにかく、腕を出せ」
嫌だなぁと思いながらクリストフ様を見たが、青筋を立てて怒っている彼に観念して出し渋っている腕を出した。
「はぁーー」
「ため息を吐きたいのは俺だ。師匠が生きていれば、何と思うか……」
「お仕置きされて、自力で逃げるだけですけど?」
「仕置きする師匠がいないから、お前に仕置きするのは俺の役目だ」
「そんな律儀に兄弟子の役目を果たさなくても……」
ぶつぶつと呟きながら、クリストフ様が私の腕に魔封じの魔法をかけた。私の腕には魔封じの紋様が現れていった。
「極大魔法雷霆の槌(トールハンマー)を使う時は、街に被害が出ないように結界も張ったんですけど?」
「お前は確信犯か。人の部屋から、備品を盗みやがって……ちなみに、お前に魔封じをかけるのは魔法師団で決められたことだ。そのおかげで、牢屋行きを免れたのだから、しばらくは大人しくしてろ。いいな」
念を込めてクリストフ様が言う。私が捕らえられないように計らってくれたのだろうと思うと、私はもう何も言えないでいた。
私が極大魔法雷霆の槌(トールハンマー)を使った時は、まだルミエル様が殺人事件の犯人だとは知らなかったから、私が暴れたぐらいの認識なのだろう。確かに、王都の街中で極大魔法など使えば問題だ。
「はぁ……」
「ずいぶんと大人しいな。何かあったのか?」
「少し疲れただけですわ。申し訳ありませんが、私はお部屋に戻りますね」
そう言って、大人しく去っていく私を心配そうにクリストフ様が見ていた。
私は今日も郵便が来ないことに項垂れていると、ウィルオール殿下が話しかけてきた。
「リクハルドからの手紙でも待っているのか?」
「そ、そういうわけでは……リクハルド様から、文など来ませんわ」
「そうかな」
「そうですわ」
「それよりも、シリルが遊んでいる。俺たちはカゼボでお茶しないか?」
「シリル様を見ながら、お茶……いいですわね」
「そうだろう。子供は見ていて飽きないものだ」
この数日、シリル様はリュズと庭で子供らしく遊んでいた。一日遊んでいるのに、子供の体力は尽きなくて、すでに夕方を過ぎている今もリュズと戯れていた。それを、ウィルオール殿下とガゼボから見ていた。
「浮かない顔だね?」
「ウィルオール殿下は、お出かけしないのですか?」
「俺は謹慎中だ。別荘から出れば、すぐに陛下の耳に入る」
ウィルオール殿下が、別荘の警備を見て言う。彼らは警備だけではなく、見張りも兼ねているらしい。
「リクハルドもすぐに来るかな?」
「来ないと思いますよ」
「そうかな?」
「婚約も破棄するんじゃないですか?」
「リクハルドがそう言ったのか?」
「リクハルド様は何も言いませんけど、数日経ったのに来ないじゃないですか」
「リクハルドが来なくて淋しいのか?」
「むぅ……暇なら夜会でも行かれたらどうですか? 秘密裏に出かけるなら、私は協力しますよ」
「夜会などに行けば、俺が外出したことがバレバレだよ。だが、そうだね……」
すると、別荘に誰かがやって来た。
「誰かな?」
「どこかで見覚えが……」
ウィルオール殿下と見ていると、やって来たのはクリストフ様だった。来るなり彼はすかさずウィルオール殿下に挨拶をした。
「ウィルオール殿下。お会いできて光栄です」
「なんだ。クリストフか。元気か?」
「ええ。胃が暴れるほど元気です」
疲れ切った表情でクリストフ様が言う。どうやら、胃が痛いらしい。
「クリス様。こんなところまでどうしたんですか? ウィルオール殿下に用事ですか? 殿下は休暇中ですよ?」
「休暇ではなく、俺は謹慎中だ」
ウィルオール殿下が淡々と言うが、眼の前のクリストフ様は怒っていた。
「用事があるのはお前だ! キーラ!」
「私ですか? お酒でもご馳走してくださるのですか?」
「ご馳走して欲しいのはこちらだ」
「ええーー」
ギラリとクリストフ様が睨む。
「なんですか?」
「なんですか、ではない。勝手にマクシミリアン伯爵家を出るなど何を考えているんだ!」
「私だって、色々思うところがありまして……もしかして、リクハルド様が探してましたか?」
もしそれなら、少しは帰ろうかと思えた。
「それは知らん。不機嫌で恐ろしい形相だったが……」
「やっぱり帰るのやめようかな……」
思わず、呟いた。
「キーラ」
「はい」
「俺は、マクシミリアン伯爵の様子を伝えに来たのではない」
「じゃあ、何しに来たのですか?」
「お前に、魔封じを施すためだ」
「嫌なんですけど……!!」
魔封じなんか施されたら、魔法が使えない。自分の身をどうやって守れと!?
「拒否権はない。誰のせいで魔法師団が全軍出動したと思う!」
「私のせいじゃないですよ」
「誤魔化すな! お前のせいだ!」
クリストフ様が怒って言うと、ウィルオール殿下が一言呟く。
「ちなみに、俺が謹慎になったのもキーラ嬢のせいだね」
「それは私だけのせいじゃありません」
クリストフ様の言い分はわかっているけど、ウィルオール殿下には同意できない。
「キーラ。何のバツもなく、のうのうと過ごせると思うなよ。バカンスなどしている場合ではない」
「だから、俺は謹慎中なんだよ。文句は陛下に言ってくれ」
ウィルオール殿下が、笑顔で頬杖をついて言う。
「私だってバカンスじゃないですわ。私だって悩みがありますのよ」
「お前の悩みなど知らん。とにかく、腕を出せ」
嫌だなぁと思いながらクリストフ様を見たが、青筋を立てて怒っている彼に観念して出し渋っている腕を出した。
「はぁーー」
「ため息を吐きたいのは俺だ。師匠が生きていれば、何と思うか……」
「お仕置きされて、自力で逃げるだけですけど?」
「仕置きする師匠がいないから、お前に仕置きするのは俺の役目だ」
「そんな律儀に兄弟子の役目を果たさなくても……」
ぶつぶつと呟きながら、クリストフ様が私の腕に魔封じの魔法をかけた。私の腕には魔封じの紋様が現れていった。
「極大魔法雷霆の槌(トールハンマー)を使う時は、街に被害が出ないように結界も張ったんですけど?」
「お前は確信犯か。人の部屋から、備品を盗みやがって……ちなみに、お前に魔封じをかけるのは魔法師団で決められたことだ。そのおかげで、牢屋行きを免れたのだから、しばらくは大人しくしてろ。いいな」
念を込めてクリストフ様が言う。私が捕らえられないように計らってくれたのだろうと思うと、私はもう何も言えないでいた。
私が極大魔法雷霆の槌(トールハンマー)を使った時は、まだルミエル様が殺人事件の犯人だとは知らなかったから、私が暴れたぐらいの認識なのだろう。確かに、王都の街中で極大魔法など使えば問題だ。
「はぁ……」
「ずいぶんと大人しいな。何かあったのか?」
「少し疲れただけですわ。申し訳ありませんが、私はお部屋に戻りますね」
そう言って、大人しく去っていく私を心配そうにクリストフ様が見ていた。
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