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しかと覚えていよう
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「大丈夫か!?」
「う、……」
先ほどウィルオール殿下が連れていた女性がキーラの部屋の前で倒れていた。
「顔が……」
彼女には殴られた痕があり、意識がはっきりとしないままでウィルオール殿下が抱きかかえた。
なぜ、女性がこんな廊下で倒れているのか。
嫌な予感がして、キーラのいる部屋へと飛び込めば、ベッドにいたはずの彼女はいない。
「キーラ! どこだ! キーラ!!」
辺りを見回してもキーラが見当たらない。人の気配さえなかった。それどころか妙なにおいがした。
「なんだ、このにおいは……」
どこかで嗅いだことのあるニオイ。思い出せば、眠り薬に似ている。その時に、女性がウィルオール殿下に支えられて、扉にしがみついて部屋に顔をのぞかせた。
「……ジェレミーが……ジェレミー・ヘイスティングが連れていきましたっ」
「……!?」
頭を押さえて、必死で彼女が言う。表情も変えずにジェレミーの名前に驚けば、ウィルオール殿下も驚いていた。
「なぜ、ジェレミーが? そこまでキーラ嬢に執着しているのか? それなら、なぜ婚約を破棄したんだ?」
「……ルミエルが言っていた。これだけの魔力があれば……と、ジェレミーが欲しがっているのは、魔力なのか? いったいなんのために……」
「とにかく、キーラ嬢を探そう。シリルも気になる。嫌な予感がする。俺たちはすぐに邸に帰ろう」
「俺は夜会を探します。もしかしたら、手がかりが残っているかもしれない。ウィルオール殿下は先にお帰りください」
「わかった。だが、手がかりがなければ、一度は邸に顔を出せ。俺も魔法師団を動かす」
いったい何に魔力を使うのか。疑問を考えていれば、女性がウィルオール殿下にしがみついて懇願し始めた。
「ウィ、ウィルオール殿下! ああ、やっぱりウィルオール殿下だった。お願いです! レーネを助けて下さい!!」
「レーネ? 誰のことだい? そんなことよりも君も俺の別荘へと行こう。すぐに手当てをしたい」
「わ、私のことよりもレーネです! ジェレミー・ヘイスティングが何をするかわかりませんっ」
「ジェレミー?」
「お願いしますっ、他に頼れないんです」
今にも泣きそうな様子で女性が言う。
「ウィルオール殿下。彼女は何か知ってますよ」
「そうみたいだねぇ」
「そもそも、なぜこの部屋のそばに来た?」
「それは、俺が部屋に誘ったからだ」
「こんな時に?」
「キーラ嬢とお前に振られたから……それに、」
ウィルオール殿下の腕の中で泣いている彼女にウィルオール殿下が優しい笑みを見せた。
「部屋でじっくりと聞こうと思っていたが、そうできなくなった」
「な、何でしょうか? 何でも答えます。だから、レーネを助けてください」
「では、その誰かわからないレーネは助けてあげるから、君の名前を教えて欲しい」
秘密を夜会では、身元を聞くのはご法度だった。その上で聞こうとしていたウィルオール殿下。怪しい。いや、それどころか、ウィルオール殿下は、女性に対して今までにないほど優しい雰囲気で見つめている。
「君の名前を教えて欲しい。俺はウィルオールだ」
「シルヴィアです」
「シルヴィア……いい名だ。しかと覚えていよう」
「は、はい!」
「では、邸に帰ろう。少し忙しくなりそうだ。ああ、仮面ももういらないね」
そう言って、ウィルオール殿下が彼女の仮面を取ると、シルヴィアの可愛らしい顔を見つめてた。
いい雰囲気で二人だけの世界のように視線を交わらせる二人に舌打ちが出る。
そんなことを気にしないウィルオール殿下は、満足気に口角を上げた。
「う、……」
先ほどウィルオール殿下が連れていた女性がキーラの部屋の前で倒れていた。
「顔が……」
彼女には殴られた痕があり、意識がはっきりとしないままでウィルオール殿下が抱きかかえた。
なぜ、女性がこんな廊下で倒れているのか。
嫌な予感がして、キーラのいる部屋へと飛び込めば、ベッドにいたはずの彼女はいない。
「キーラ! どこだ! キーラ!!」
辺りを見回してもキーラが見当たらない。人の気配さえなかった。それどころか妙なにおいがした。
「なんだ、このにおいは……」
どこかで嗅いだことのあるニオイ。思い出せば、眠り薬に似ている。その時に、女性がウィルオール殿下に支えられて、扉にしがみついて部屋に顔をのぞかせた。
「……ジェレミーが……ジェレミー・ヘイスティングが連れていきましたっ」
「……!?」
頭を押さえて、必死で彼女が言う。表情も変えずにジェレミーの名前に驚けば、ウィルオール殿下も驚いていた。
「なぜ、ジェレミーが? そこまでキーラ嬢に執着しているのか? それなら、なぜ婚約を破棄したんだ?」
「……ルミエルが言っていた。これだけの魔力があれば……と、ジェレミーが欲しがっているのは、魔力なのか? いったいなんのために……」
「とにかく、キーラ嬢を探そう。シリルも気になる。嫌な予感がする。俺たちはすぐに邸に帰ろう」
「俺は夜会を探します。もしかしたら、手がかりが残っているかもしれない。ウィルオール殿下は先にお帰りください」
「わかった。だが、手がかりがなければ、一度は邸に顔を出せ。俺も魔法師団を動かす」
いったい何に魔力を使うのか。疑問を考えていれば、女性がウィルオール殿下にしがみついて懇願し始めた。
「ウィ、ウィルオール殿下! ああ、やっぱりウィルオール殿下だった。お願いです! レーネを助けて下さい!!」
「レーネ? 誰のことだい? そんなことよりも君も俺の別荘へと行こう。すぐに手当てをしたい」
「わ、私のことよりもレーネです! ジェレミー・ヘイスティングが何をするかわかりませんっ」
「ジェレミー?」
「お願いしますっ、他に頼れないんです」
今にも泣きそうな様子で女性が言う。
「ウィルオール殿下。彼女は何か知ってますよ」
「そうみたいだねぇ」
「そもそも、なぜこの部屋のそばに来た?」
「それは、俺が部屋に誘ったからだ」
「こんな時に?」
「キーラ嬢とお前に振られたから……それに、」
ウィルオール殿下の腕の中で泣いている彼女にウィルオール殿下が優しい笑みを見せた。
「部屋でじっくりと聞こうと思っていたが、そうできなくなった」
「な、何でしょうか? 何でも答えます。だから、レーネを助けてください」
「では、その誰かわからないレーネは助けてあげるから、君の名前を教えて欲しい」
秘密を夜会では、身元を聞くのはご法度だった。その上で聞こうとしていたウィルオール殿下。怪しい。いや、それどころか、ウィルオール殿下は、女性に対して今までにないほど優しい雰囲気で見つめている。
「君の名前を教えて欲しい。俺はウィルオールだ」
「シルヴィアです」
「シルヴィア……いい名だ。しかと覚えていよう」
「は、はい!」
「では、邸に帰ろう。少し忙しくなりそうだ。ああ、仮面ももういらないね」
そう言って、ウィルオール殿下が彼女の仮面を取ると、シルヴィアの可愛らしい顔を見つめてた。
いい雰囲気で二人だけの世界のように視線を交わらせる二人に舌打ちが出る。
そんなことを気にしないウィルオール殿下は、満足気に口角を上げた。
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