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第一章 フェンリル
氷のバラ
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「……というわけで、フェリクス様は友人になってくださいませんでした」
『ククッ……なぜその時に私を呼ばん? 是非とも観察したかった』
フェリクス様に叫ばれたあの時のことを庭の温室の前でフェンリルに話していた。彼は、大笑いで話を聞いている。
「婚約者だと友人は無理なのでしょうか? でも、私はお茶飲み友人だと思うんです」
『さぁ、私にはわからん。それよりも、上手くできているな』
フェンリルに話しながら、彼に言われた通りに手のひらに氷を作っていた。フェンリルは氷の属性だから、氷の魔法を教えてくれているのだ。
『それを大きくできるか?』
「魔力を上げればいいのでしょうか? それなら大丈夫です」
手のひらの氷を大きくするために魔力を上げると瞬く間に氷が大きくなっていく。
『筋がいい。これなら、すぐに氷も飛ばせるな』
「飛ばすなら、もう少し小さくしないと私には無理かもしれません……」
『フィリ―ネは、冷静だからすぐにできる。槍のようにすれば立派な攻撃魔法になるぞ』
魔法はイメージが大事だ。でも、そのイメージするものが私にはない。離宮という小さな世界がすべてだった私には、よくわからないのだ。
「槍を見たことがありません……本で見たのは、こんな感じでしたが……」
絵本で読んだ三叉槍を氷で作ると、古臭い槍だとフェンリルが笑った。
『武器を見たことがないとそうなるのか? なら、色んな物をみろ。見たものを魔法に生かせばいい』
「……でしたら、お花を氷で作れますか?」
『氷で形作ればいいだけだ』
温室にあった花を思い浮かべて、手の平に氷を作る。それが見る見るうちにバラの形に変わる。
「……お花に見える……」
『やはり、フィリ―ネはもともとの才があるのだ』
「でも、氷の魔法は使えませんでした」
『それは、使ったことがないからだろう。私が使える魔法は、氷だからそれしか教えられんが……癒しの魔法は珍しいが、本当に誰にも教わらなかったのか? ディティーリア国の幻獣が教えたのではないのか?』
「ディティーリア国のことは知りません。幻獣様もフェン様が初めてお会いしました……」
ディティーリア国に幻獣がいたのだろうか。わからない。
でも、ふと思い出した。年に一、二度だったと思う。離宮を出て父上に連れられて行ったところがあった。でも、私の魔法を見て「やっぱりダメか……なら、なぜこの娘を生む必要があったのだ……」そう言って、私をさげすんでいた。
その時に、フェンリルの耳がピクリと上がる。
使用人たちが温室にお茶の準備に来たのだ。そこにはジルやヴァルト様もいる。
「フィリ―ネ様。本日のお茶もこちらでなさるそうで、すぐに準備いたします」
返事をすると、ヴァルト様が私の手のひらの氷を見てにこりとした。
「その氷は?」
「私が魔法で作りました」
「でしたら、そちらも飾りましょうか? フェリクス様もきっとお喜びになりますよ」
ヴァルト様が指示すると、一人のメイドが青磁のお皿を出してくれた。乗せると青が透き通って青バラのように見えてキレイだった。
「キレイ……」
「はい。とても美しいですわ」
笑顔でそう言ってくれたメイドを見ると、その方もすごくキレイな方だった。
「フィリ―ネ様。こちらは、メイドのアリエッタです」
ヴァルト様が紹介すると、アリエッタと呼ばれたメイドが、「よろしくお願いします」と微笑んだ。
(背が高くてすごくキレイだわ……)
金髪に近い薄くてさらりとした髪を一つにまとめており、茶色の瞳が印象的な彼女は、ヴァルト様に「アリエッタ。仕事を」と言われてお茶の準備に戻った。
(氷のバラを見るとフェリクス様はどう思うかしら?)
心の声がフェンリルに聞こえてしまい、頭の中で会話する。
『それは、フェリクスにやるのか? それなら、私にくれ。食べたい』
(……食べるのですか? でも、初めて作ったのでフェリクス様に見せたいのです)
『私は友人だろう?』
(……これを差し上げたらフェリクス様とも友人になれますか?)
『さぁ?』
……どうやったら、フェリクス様と友人になれるのかわからない。
「でも、なにか食べたいのでしたら持ってきます」
そう言って温室に目をやると、お茶の準備をしている中でジルが私とフェンリルを青ざめた様子で立ちつくしていた。
(どうしたのかしら? でも、ちょうどいいわ)
「ジル。なにかお菓子をください。フェンリル様に差し上げたいのです」
「フェンリル様……? あれがこの国の幻獣ですか!?」
「そうです」
「あの氷のバラもフィリ―ネ様が……?」
「はい。魔法で作りました」
ヴァルト様たちは驚かなかったから忘れていたけど、ジルは初めて見るから驚いたのだろう。でも、青ざめるほど怖いのだろうか。
「どうしました? フィリ―ネ様」
「ヴァルト様。フェンリル様になにか差し上げたくて……ジルは、初めて幻獣をみたから驚いてしまったの」
「でしたら、アイスクリームでもお持ちしますか? ちょうど準備していますから」
「ありがとうございます。ヴァルト様」
アイスクリームを受け取り、フェンリルに差し出すと美味しそうにぺろりと食べた
『ククッ……なぜその時に私を呼ばん? 是非とも観察したかった』
フェリクス様に叫ばれたあの時のことを庭の温室の前でフェンリルに話していた。彼は、大笑いで話を聞いている。
「婚約者だと友人は無理なのでしょうか? でも、私はお茶飲み友人だと思うんです」
『さぁ、私にはわからん。それよりも、上手くできているな』
フェンリルに話しながら、彼に言われた通りに手のひらに氷を作っていた。フェンリルは氷の属性だから、氷の魔法を教えてくれているのだ。
『それを大きくできるか?』
「魔力を上げればいいのでしょうか? それなら大丈夫です」
手のひらの氷を大きくするために魔力を上げると瞬く間に氷が大きくなっていく。
『筋がいい。これなら、すぐに氷も飛ばせるな』
「飛ばすなら、もう少し小さくしないと私には無理かもしれません……」
『フィリ―ネは、冷静だからすぐにできる。槍のようにすれば立派な攻撃魔法になるぞ』
魔法はイメージが大事だ。でも、そのイメージするものが私にはない。離宮という小さな世界がすべてだった私には、よくわからないのだ。
「槍を見たことがありません……本で見たのは、こんな感じでしたが……」
絵本で読んだ三叉槍を氷で作ると、古臭い槍だとフェンリルが笑った。
『武器を見たことがないとそうなるのか? なら、色んな物をみろ。見たものを魔法に生かせばいい』
「……でしたら、お花を氷で作れますか?」
『氷で形作ればいいだけだ』
温室にあった花を思い浮かべて、手の平に氷を作る。それが見る見るうちにバラの形に変わる。
「……お花に見える……」
『やはり、フィリ―ネはもともとの才があるのだ』
「でも、氷の魔法は使えませんでした」
『それは、使ったことがないからだろう。私が使える魔法は、氷だからそれしか教えられんが……癒しの魔法は珍しいが、本当に誰にも教わらなかったのか? ディティーリア国の幻獣が教えたのではないのか?』
「ディティーリア国のことは知りません。幻獣様もフェン様が初めてお会いしました……」
ディティーリア国に幻獣がいたのだろうか。わからない。
でも、ふと思い出した。年に一、二度だったと思う。離宮を出て父上に連れられて行ったところがあった。でも、私の魔法を見て「やっぱりダメか……なら、なぜこの娘を生む必要があったのだ……」そう言って、私をさげすんでいた。
その時に、フェンリルの耳がピクリと上がる。
使用人たちが温室にお茶の準備に来たのだ。そこにはジルやヴァルト様もいる。
「フィリ―ネ様。本日のお茶もこちらでなさるそうで、すぐに準備いたします」
返事をすると、ヴァルト様が私の手のひらの氷を見てにこりとした。
「その氷は?」
「私が魔法で作りました」
「でしたら、そちらも飾りましょうか? フェリクス様もきっとお喜びになりますよ」
ヴァルト様が指示すると、一人のメイドが青磁のお皿を出してくれた。乗せると青が透き通って青バラのように見えてキレイだった。
「キレイ……」
「はい。とても美しいですわ」
笑顔でそう言ってくれたメイドを見ると、その方もすごくキレイな方だった。
「フィリ―ネ様。こちらは、メイドのアリエッタです」
ヴァルト様が紹介すると、アリエッタと呼ばれたメイドが、「よろしくお願いします」と微笑んだ。
(背が高くてすごくキレイだわ……)
金髪に近い薄くてさらりとした髪を一つにまとめており、茶色の瞳が印象的な彼女は、ヴァルト様に「アリエッタ。仕事を」と言われてお茶の準備に戻った。
(氷のバラを見るとフェリクス様はどう思うかしら?)
心の声がフェンリルに聞こえてしまい、頭の中で会話する。
『それは、フェリクスにやるのか? それなら、私にくれ。食べたい』
(……食べるのですか? でも、初めて作ったのでフェリクス様に見せたいのです)
『私は友人だろう?』
(……これを差し上げたらフェリクス様とも友人になれますか?)
『さぁ?』
……どうやったら、フェリクス様と友人になれるのかわからない。
「でも、なにか食べたいのでしたら持ってきます」
そう言って温室に目をやると、お茶の準備をしている中でジルが私とフェンリルを青ざめた様子で立ちつくしていた。
(どうしたのかしら? でも、ちょうどいいわ)
「ジル。なにかお菓子をください。フェンリル様に差し上げたいのです」
「フェンリル様……? あれがこの国の幻獣ですか!?」
「そうです」
「あの氷のバラもフィリ―ネ様が……?」
「はい。魔法で作りました」
ヴァルト様たちは驚かなかったから忘れていたけど、ジルは初めて見るから驚いたのだろう。でも、青ざめるほど怖いのだろうか。
「どうしました? フィリ―ネ様」
「ヴァルト様。フェンリル様になにか差し上げたくて……ジルは、初めて幻獣をみたから驚いてしまったの」
「でしたら、アイスクリームでもお持ちしますか? ちょうど準備していますから」
「ありがとうございます。ヴァルト様」
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