氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽

文字の大きさ
20 / 36
第一章 フェンリル

不確かな噂と友人

しおりを挟む
朝から恋愛小説を、次から次へと読んでいる。そしてわかったのはなぜか最後はみんな抱き合っているということ。アリエッタも、私がフェリクス様の腕の中で寝ていただけであんなに怯えたことに笑いを堪えていた。本当は、フェリクス様の心の声が聞こえたからだけど。

抱き合うのは、安堵を求めているのだろうか。私にはフェリクス様の側にいると不思議と安心する。私を初めて受け入れてくれた方だからかもしれない。でも、それは刷り込みではないのだろうかと思ってしまう。
それに、フェリクス様の抱き合う事と、私の思っている抱き合う事が全く違う気がする。

「どうしました? フィリ―ネ様」

一緒に来てくれているアリエッタが、ニコニコと聞く。

「アリエッタは、恋人がいるの?」
「まぁ、いないとも言えませんけど……」
「お茶飲みの友人?」
「違います」

にこりと否定されてしまった。確かにフェリクス様と私の関係は少し微妙な気がする。
恋人の話を聞きたい気持ちもあるけど、私が聞いてわかるかどうかも疑問だ。

「アリエッタは、私と一緒でいいの? お仕事は大丈夫ですか?」
「今日はジルさんが、お休みですからね。私がついています。でも……もしかして、フェリクス様のところに行きたいのですか?」
「そういうわけでは……」

あんなことを考えているなんて恐ろしい。それなのに、最近は毎晩と忍び込んできており、朝にはいつもフェリクス様の腕の中で目が覚めている。
アリエッタは、違ったかと悔しそうにするけど、私に一体なにを期待しているのだろうか。
ジルは、今日の仕事をお休みにしたら、街へ行ってしまった。彼女には家族がディティーリア国にいるから、フェンヴィルム国のお土産を買いに行ったらしい。

「……ディティーリア国では、現陛下が幻獣士になったと噂が流れているらしいな」
「ディティーリア国は小国だが、幻獣のいる国は幻獣の加護を授かると言われているから、これでまだまだ安泰だな」

アリエッタと話しながら歩いていると、笑い交じりで廊下を歩く役人二人の会話が聞こえた。
現陛下とは、兄上のことだ。父上はすでに他界している。兄上は魔法をいつもこれくらい簡単だと言っていたから、才能があったのだろう。

「……フィリ―ネ様は、ディティーリア国の幻獣をご存知ですか?」
「私はディティーリア国のことはよく知らないのです。ジルに聞いてみましょうか? よく兄上と話していたから、もしかしたら何か知っているかもしれません」

ジルが私の報告をしていたのを、庭から覗いたことがある。

「侍女が、陛下とよくお話されますか?」
「多分私の報告です。私の生活をお伝えしていたのだと……でも、なんの代わり映えもない生活でしたので、再三報告していたわけではないと思います。兄上もあまり私に会うことはなかったので……」

年に数回の頻度の謁見。それが、私が実の家族に会うことだ。家族に会うのに謁見という言い方はおかしいけど、それがぴったりな言葉のように思える関係だった。

「でも、兄上は一体なんの幻獣士になったのでしょうか?」
「それは、わかりませんけど……ディティーリア国で有名な幻獣はいるのです。居所の不明な幻獣ですけど……」
「そうなのですか? なんの幻獣ですか?」

私はそれさえも知らず、フェンヴィルム国の人間に聞いていることが滑稽になる。でも、アリエッタはそんなことを気にもさせないで、柔らかく話してくれた。

「……ユニコーンですよ」
「ユニコーン……?」

挿し絵付きの本で読んだことはある。確か、一角獣とも呼ばれる頭に角のある白馬だ。

「ディティーリア国では、ユニコーンをモチーフにしたお土産とか、レターセットなどもありますしね。だから、ディティーリア国では、ユニコーンが有名なのですよ」
「理由はなんでしょうか? どうしてディティーリア国では、ユニコーンをモチーフにしているのですか? 所在不明な幻獣なのに?」
「そう言われればそうですね……でも、昔からディティーリア国では、有名だったので誰も気にしてないと思いますけど……」

幻獣は、珍しい。その幻獣をみつけても必ず幻獣士になるとは限らない。でも、フェリクス様とフェンリルの関係を見ていると、信頼しあっているのはわかる。

「……私も、フェン様とフェリクス様みたいな友人が欲しいです」
「フェリクス様とフェンリル様は友人ですかね……あれは、私たちにはわからない絆がありますので……でも、フィリ―ネ様もフェリクス様とフェンリル様の特別ですよ」
「私がですか?」
「フェリクス様は、どんな令嬢にもフェンリル様を紹介したことがありませんし、フェンリル様自身が誰にも懐きません。フェリクス様以外で懐いているのは、フィリ―ネ様だけですよ」
「そうだといいです」
「それに、なにかあれば私をお呼びください。すぐに駆け付けますよ」
「アリエッタは優しいのね……フェンヴィルム国は、みんな優しいわ……」
「フィリ―ネ様の人柄ですよ。それに、友人でしたら私はどうですか?」
「アリエッタが私の友人になってくれるの!?」

突然の提案に目が丸くなるほど驚いた。

「お嫌ですか? でも、フェリクス様は絶対に友人にはならないのであきらめた方がいいですよ? 私では畏れ多いかもしれませんが……いかがでしょうか?」
「そんな……私こそ畏れ多いです。でも、お願いします!」

嬉しくて思わず、両手を握りしめて懇願する。その手を「失礼します」と言って、アリエッタが重ねてくれた。

「今度、私の恋人も紹介しますね。いずれですが……」
「はい。楽しみに待ってます!」
「フフフ……では、友人らしく二人で何かしましょうか? フェリクス様はまだ帰ってきませんし、侍女さんも不在ですからね」

アリエッタ、素敵な提案です!

「共同作業ですね!」
「ちょっと意味が違う気もしますが、そんなところです」

共同作業になにをしていいのかわからずに、頭を抱えた。でも、せっかくの機会を無駄にしたくない。私がこの国でしていたことは、フェリクス様とのお茶会と王妃教育だけ。
アリエッタと一緒になにかをしたいけど、王妃教育を彼女の強いるわけにはいかかない。
ということは、選択肢は一つ。

「アリエッタ、私とお茶の準備をしてくださいますか?」
「もちろんです。フェリクス様を驚かせてやりましょう!」

アリエッタは、元気に私とお茶会の準備をしてくれた。






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

【長編版】孤独な少女が異世界転生した結果

下菊みこと
恋愛
身体は大人、頭脳は子供になっちゃった元悪役令嬢のお話の長編版です。 一話は短編そのまんまです。二話目から新しいお話が始まります。 純粋無垢な主人公テレーズが、年上の旦那様ボーモンと無自覚にイチャイチャしたり様々な問題を解決して活躍したりするお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...