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驚き、絶句、絶叫!!

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月夜明るい庭に行くと、城のほうは灯りが煌々と燈っている。
もう夜会に出ることはないのだろうなぁ……と思いながら庭を歩いていると、急に満月が何かに遮られた。その影に視線をやれば、そこには大きな狼がこちらを見ている。

「大きな狼……」

燃えるような緋色の瞳。何度見ても、精悍な顔つきだと思える。そして、その口には服を咥えていた。

「まさか……誰か殺って来たんじゃ……不味いですよ! すぐに逃げましょう。今の私では、庇えませんよ!」

大きな狼は、ペッと服を口から放す。それに見覚えがあった。

「……ヴォルフラム殿下の服……まさか……殺っちゃたんですか!? ダメですよ!!」
「グルゥゥ」

唸るような鳴き声。その大きな狼にそっと近づいて顔を撫でた。

「どうしたんですか? 苦しそうですよ?」
「グウゥ……」
「何を言っているのかわかりませんけど……一緒に逃げましょう。何かあったのですよね? どこまでも一緒に行きますよ。私なら、大丈夫ですよ。私はここに居場所がないんです。ヴォルフラム殿下に嫌われていますから……だから、気にせずに一緒に逃げましょう」

自分で言ってて泣きそうだ。婚約者だったのに、ヴォルフラム殿下に嫌われていることに胸が痛くなる。
大きな狼を労わる様に撫でていると、大きな狼はなぜか切ない表情で私を見つめた。
冷たい緋色の瞳。いつも私を冷ややかな面持ちで見ているヴォルフラム殿下そっくりだった。

「……ヴォルフラム殿下……に、そっくり……」

私の大好きな緋色の瞳。彼が好きだった。相応しい妃になろうと努力した。
それが、いつからか、聖女の力が不安定になって……自信がなくなっていった。

ヴォルフラム殿下は、何も気付かない。ただ、ルチアと仲良くし始めて……婚約者が、変更になるに至ったのだ。

そう呟くと、大きな狼は苦悶表情で足を返して、その場を飛ぶように駆けていった。

「待ってください!」

あのまま誰かに見つかれば、聖獣様でも不味いのではないだろうか。
ヴォルフラム殿下だって、聖獣様の祝福を受けれなければ王太子殿下にはなれない。ただの王子のままだ。でも、そのヴォルフラム殿下を殺っている可能性もある。

だけど、聖獣様がヴォルフラム殿下を傷つけるのだろうか。確かに、なぜか、小さい聖獣様はヴォルフラム殿下を拒否するように爪を立てていたけども。

どうしましょう……そう思っても、あの大きな狼は放っては置けない。

そう思うと、大きな狼の逃げた方角へと走った。

もふもふ誘拐罪で、ヴォルフラム殿下の離宮に監禁されているけど、こっそりと抜け出すしかない。小さい聖獣様はどうしようかと思いながらも、連れて来る暇もなかった。

離宮の庭園を突っ切っていると、雪がちらほらと降り出した。寒いはずだ。もう雪降る時期なのだ。この国は氷の国と言われるほど寒くて、冬の時期が長い。それと、不思議なことに、冬が突然やって来るのだ。徐々に下がっていく気温がどこの地域よりも早いと言われていた。

庭園から外廊下が見えれば、その手すりから大きな銀色の毛皮がモゾッと動いている。

聖獣様だ……。すぐに見つかってよかったと安堵した。

「聖獣様! 見つけました! 大丈夫です、か……」

外廊下の柱から顔を出せば、驚きで絶句した。
そこにいたのは、緋色の瞳に、銀髪のヴォルフラム殿下がうずくまっていたのだ。

そして、ヴォルフラム殿下の姿に私の絶叫が離宮に響き渡る。

「キャーーーーッ」



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