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緋色の瞳の狼!?
朝食の席。聖獣様が私の膝に乗っていて、今も向かいに座るヴォルフラム殿下に喉を鳴らして威嚇していた。
目の前のヴォルフラム殿下は、顔中が傷だらけだ。
「……セリア」
「……何ですか?」
「機嫌が悪いな」
「ええ。不審者に忍び込まれましたから」
「あれはっ……悪かった。だが、決して不埒な考えなどなくてだな」
「そうでしょうね。殿下は私がお嫌いですものね」
「そういうわけではない」
「もういいですか。囚人と一緒にいても仕方ないでしょう」
「……囚人と思っているわけではない」
「私を逮捕したのは、殿下ですよ」
だから、この離宮に囚われているのだ。
部屋から出ようとすると、ヴォルフラム殿下が私の腕を掴んでくる。
「どこに行く気だ? それに、名前も……なぜ、ヴォルフラムと呼ばない」
「聖獣様のミルクを頼むだけです。それに、殿下は殿下です。もう私は婚約者では……」
「……っ」
声をかけづらそうにヴォルフラム殿下が言葉を飲み込んだ。それに私はツンとする。
「き、傷を治してくれないか?」
「お断りです。今日は、癒しの魔法は打ち止めです」
「勝手に打ち止めにするな!」
ヴォルフラム殿下がそう言って、勢いよくナイフをオムレツに突き刺した。
「それと……今夜は、夜会に行くから、帰りは遅くなる」
「お好きにどうぞ。聖獣様、今夜は不埒者は来ませんから、ゆっくり休んでくださいね」
「ガウッ!」
「まぁ、聖獣様は可愛いですね」
ヴォルフラム殿下をちらりと見ると、恐ろしい顔つきで睨んでいる。
「聖獣様を睨まないでください。そんな怖い顔だから、聖獣様に嫌われるのですよ」
ツンとしてそう言った。
そして、殺気立った朝食が終わった。
※※※
夜になると、一層冷える。そう言えば、昨夜にくしゃみをしていたなぁと思い出す。
「もしかして、寒いのかしら?」
お世話係なのに、聖獣様に風邪を引かせてしまえば、ヴォルフラム殿下のお小言が増えそうな気がする。
「仕方ないわね……」
仕方なく毛布ももう一枚貰おうと部屋を出ようとすると、扉が慌ただしく叩かれた。
「セリア様!! 起きてください!!」
「起きてますけど? ブレッド? 何ですか? 新しい罪状なんか作ってませんよ」
「そういうことではありません!!」
ブレッドの剣幕に扉を開けようとすると、後ろから「きゅぅぅ」と聖獣様が身体を震わせて丸めていた。
「どうしたの? 大丈夫ですか?」
聖獣様に近づくと、待ちきれないブレッドが部屋に飛び込んでくる。
「セリア様! 入りますよ!」
「ブレッド……何事ですか? もう聖獣様のお休みの時間ですよ」
「それが……ヴォルフラム殿下の様子がおかしくて……」
そう言って、抱きかかえた聖獣様をブレッドが冷や汗を垂らしながら見た。
「おかしいなら、聖女に見せればいいのではないですか? そもそも、聖女が王族と結婚するのは、呪いなどを寄せ付けないためです。そして、万が一にも呪われた場合にすぐに対応するためです。今の聖女はルチアになっているでしょう?」
「……セリア様は、ご存知ないのですか?」
「何をです?」
「聖女は、今もセリア様です……」
「そんなはずは……聖女機関でも、私は役立たずだと……その頃から、ルチアに癒しの魔法の力が顕現し始めたから、聖女機関ではルチアの教育に力を入れていたはずです」
「ヴォルフラム殿下が、かけあったのですよ。一度決めた聖女を突然変更することは叶わないと……それに、ルチア様に癒しの魔法が顕現したといっても、そんなに強いものではないのですよ。だから、聖女機関も、ヴォルフラム殿下の意見を無視出来なくて……」
私が役立たずだと言われたのは、騎士でもある貴族の怪我を治せなかったからだ。不安定な力は聖女に相応しくないと告げられたのだ。そして、その貴族の怪我を、ルチアが治した。
「でも……ヴォルフラム殿下は聖獣様にずっと会わせてくれなかったわ……聖女なら、聖獣様に仕えるのは、当然のことなのに……」
聖女の役割の一つは聖獣様に力を示すこと。聖獣様が認めた聖女がルティナス王国の大聖女となるのだ。そして、大聖女が王太子、もしくは陛下の結婚相手になる。
「……っと、とにかく今は、ヴォルフラム殿下です!!」
「嫌なのですけど……」
「セリア様……」
そんな訴える様な目で見ないで欲しい。腕の中の聖獣様まで、「くぅん」と私に縋ってくる。
「わかりました……行きますので、ヴォルフラム殿下の状況を教えてください。でも、期待はしないでください。怪我をされていても私の力は不安定なのです」
「怪我ではありません……とにかく、見つけて下さればわかります」
「見つける? どこにいるのか、わからないのですか? ブレッドは、ヴォルフラム殿下の側近でしょう? 筆頭護衛でもあるブレッドが、ヴォルフラム殿下の居場所がわからないなど……」
「俺の失態です。少し目を離した隙にいなくなってしまって……とにかく、もしこちらに来れば、すぐにお教えください」
「それは、わかりましたけど……私のところになど来ないですよ」
ヴォルフラム殿下は夜会に行っているし、嫌われている私のところになど来るとは思えない。
ブレッドは、「お願いいたします」と言って、慌ただしくいなくなった。
「仕方ないですね……聖獣様。少しヴォルフラム殿下を探しますから、部屋でお待ちください。私の毛布をお使いになってかまいませんから……」
「がうっ」
嬉しそうに私の腕から飛び降りた聖獣様が、いそいそと私のベッドの毛布を咥え始めた。
「でも、探すと言っても……私が探せるところは、離宮だけですよね……」
私が探せるところで、夜会会場のある城に近いところは、私がルチアに突き落とされたあの庭だけだ。そう思い、一人庭へと向かった。
目の前のヴォルフラム殿下は、顔中が傷だらけだ。
「……セリア」
「……何ですか?」
「機嫌が悪いな」
「ええ。不審者に忍び込まれましたから」
「あれはっ……悪かった。だが、決して不埒な考えなどなくてだな」
「そうでしょうね。殿下は私がお嫌いですものね」
「そういうわけではない」
「もういいですか。囚人と一緒にいても仕方ないでしょう」
「……囚人と思っているわけではない」
「私を逮捕したのは、殿下ですよ」
だから、この離宮に囚われているのだ。
部屋から出ようとすると、ヴォルフラム殿下が私の腕を掴んでくる。
「どこに行く気だ? それに、名前も……なぜ、ヴォルフラムと呼ばない」
「聖獣様のミルクを頼むだけです。それに、殿下は殿下です。もう私は婚約者では……」
「……っ」
声をかけづらそうにヴォルフラム殿下が言葉を飲み込んだ。それに私はツンとする。
「き、傷を治してくれないか?」
「お断りです。今日は、癒しの魔法は打ち止めです」
「勝手に打ち止めにするな!」
ヴォルフラム殿下がそう言って、勢いよくナイフをオムレツに突き刺した。
「それと……今夜は、夜会に行くから、帰りは遅くなる」
「お好きにどうぞ。聖獣様、今夜は不埒者は来ませんから、ゆっくり休んでくださいね」
「ガウッ!」
「まぁ、聖獣様は可愛いですね」
ヴォルフラム殿下をちらりと見ると、恐ろしい顔つきで睨んでいる。
「聖獣様を睨まないでください。そんな怖い顔だから、聖獣様に嫌われるのですよ」
ツンとしてそう言った。
そして、殺気立った朝食が終わった。
※※※
夜になると、一層冷える。そう言えば、昨夜にくしゃみをしていたなぁと思い出す。
「もしかして、寒いのかしら?」
お世話係なのに、聖獣様に風邪を引かせてしまえば、ヴォルフラム殿下のお小言が増えそうな気がする。
「仕方ないわね……」
仕方なく毛布ももう一枚貰おうと部屋を出ようとすると、扉が慌ただしく叩かれた。
「セリア様!! 起きてください!!」
「起きてますけど? ブレッド? 何ですか? 新しい罪状なんか作ってませんよ」
「そういうことではありません!!」
ブレッドの剣幕に扉を開けようとすると、後ろから「きゅぅぅ」と聖獣様が身体を震わせて丸めていた。
「どうしたの? 大丈夫ですか?」
聖獣様に近づくと、待ちきれないブレッドが部屋に飛び込んでくる。
「セリア様! 入りますよ!」
「ブレッド……何事ですか? もう聖獣様のお休みの時間ですよ」
「それが……ヴォルフラム殿下の様子がおかしくて……」
そう言って、抱きかかえた聖獣様をブレッドが冷や汗を垂らしながら見た。
「おかしいなら、聖女に見せればいいのではないですか? そもそも、聖女が王族と結婚するのは、呪いなどを寄せ付けないためです。そして、万が一にも呪われた場合にすぐに対応するためです。今の聖女はルチアになっているでしょう?」
「……セリア様は、ご存知ないのですか?」
「何をです?」
「聖女は、今もセリア様です……」
「そんなはずは……聖女機関でも、私は役立たずだと……その頃から、ルチアに癒しの魔法の力が顕現し始めたから、聖女機関ではルチアの教育に力を入れていたはずです」
「ヴォルフラム殿下が、かけあったのですよ。一度決めた聖女を突然変更することは叶わないと……それに、ルチア様に癒しの魔法が顕現したといっても、そんなに強いものではないのですよ。だから、聖女機関も、ヴォルフラム殿下の意見を無視出来なくて……」
私が役立たずだと言われたのは、騎士でもある貴族の怪我を治せなかったからだ。不安定な力は聖女に相応しくないと告げられたのだ。そして、その貴族の怪我を、ルチアが治した。
「でも……ヴォルフラム殿下は聖獣様にずっと会わせてくれなかったわ……聖女なら、聖獣様に仕えるのは、当然のことなのに……」
聖女の役割の一つは聖獣様に力を示すこと。聖獣様が認めた聖女がルティナス王国の大聖女となるのだ。そして、大聖女が王太子、もしくは陛下の結婚相手になる。
「……っと、とにかく今は、ヴォルフラム殿下です!!」
「嫌なのですけど……」
「セリア様……」
そんな訴える様な目で見ないで欲しい。腕の中の聖獣様まで、「くぅん」と私に縋ってくる。
「わかりました……行きますので、ヴォルフラム殿下の状況を教えてください。でも、期待はしないでください。怪我をされていても私の力は不安定なのです」
「怪我ではありません……とにかく、見つけて下さればわかります」
「見つける? どこにいるのか、わからないのですか? ブレッドは、ヴォルフラム殿下の側近でしょう? 筆頭護衛でもあるブレッドが、ヴォルフラム殿下の居場所がわからないなど……」
「俺の失態です。少し目を離した隙にいなくなってしまって……とにかく、もしこちらに来れば、すぐにお教えください」
「それは、わかりましたけど……私のところになど来ないですよ」
ヴォルフラム殿下は夜会に行っているし、嫌われている私のところになど来るとは思えない。
ブレッドは、「お願いいたします」と言って、慌ただしくいなくなった。
「仕方ないですね……聖獣様。少しヴォルフラム殿下を探しますから、部屋でお待ちください。私の毛布をお使いになってかまいませんから……」
「がうっ」
嬉しそうに私の腕から飛び降りた聖獣様が、いそいそと私のベッドの毛布を咥え始めた。
「でも、探すと言っても……私が探せるところは、離宮だけですよね……」
私が探せるところで、夜会会場のある城に近いところは、私がルチアに突き落とされたあの庭だけだ。そう思い、一人庭へと向かった。
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