光の聖女は闇属性の王弟殿下と逃亡しました。

屋月 トム伽

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静かに寝たい

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「__ヴェイグ様!!」

セレスティアを慈しむように腕の中に閉じ込めて寝ていると、突然部屋の扉が乱暴に開けられた。

「お、お嬢様! ヴェイグ様は、就寝中で……!」
「知っています! でも、セレスティア様もこのお部屋だと、シオンがおっしゃったのですよ!!」
「お嬢様が、お聞きしましたので……」

部屋の扉で、シオンが必死でリリノアを止めようとしている。

「リリノア……俺はお休み中だぞ。何の用だ?」
「だって……セレスティア様の部屋を探していたら、どこにもいなくて……シオンが……」
「セレスティアなら、ここにいるぞ。だから、出ていけ」
「ふしだらですわ!! 聖女が結婚前からこんな事を……っ」
「聖女だろうが何だろうが関係ない」

怒るリリノアに、せっかく静かに寝ていたのにと頭を抱えてしまう。

「リリノア。要件がないなら部屋に帰れ。シュレイダ公爵家に帰りたくないなら、この邸に好きなだけいてもいい。だが、俺の邪魔をするな」
「……でも、婚約者は私ですわ……王妃様が、ヴェイグ様との婚約を発表すると言っていたのです」
「なに? 発表?」
「ヴェイグ様がカレディア国からお帰りになれば、婚約発表を……だから、お父様が帰って来ないヴェイグ様を迎えに行けと……」

それで、リリノアの父親であるシュレイダ公爵は、シュタルベルグ国に帰還しているのに、王城にいつまでも帰って来ない俺に業を煮やし、リリノアに不機嫌さを増していたのだと言う。

思わず、血の気が引く。こんな状況でリリノアとの婚約など発表されたくない。今は、セレスティアが問題なのだ。

「リリノア。部屋に帰れ。シオン。リリノアを部屋へ連れて行くんだ」
「かしこまりました」

シオンがリリノアに「こちらです」と言うと、リリノアは縋る様に俺を見た。

「でもっ……」
「リリノア。俺を怒らせるなよ」
「ひどいです……ヴェイグ様」

邪魔をするなと睨めばリリノアの腰が引けてしまい、眼を潤ませて肩を落としたリリノア。シオンは「失礼しました」と言って目も合わさずに静かに扉を閉めた。
リリノアとシオンの部屋から遠ざかる足音が聞こえ、段々と遠くなっていく。

「……んん……何の騒ぎですか? ヴェイグ様?」

寝ているセレスティアがやっと眠け眼で起きようとする。

「セレスティア……王城に帰るぞ」
「また急ですね……リリノア様を、王都に送るのですか?」

眼をこすりながら、セレスティアが起き上がった。

「リリノアは、置いていく」
「置いて行ってどうするんですか……せっかく来て下さったのに……」
「俺は繊細なんだよ。とにかくすぐ帰るぞ」

しばらく王城には、帰らないと決めたばかりなのに、リリノアがいれば、ゆっくりとセレスティアと過ごせない気がする。
それに、城にいない間にリリノアとの婚約を発表されては困る。

「急いで着替えろ!」
「私、寝ていたんですけど……」
「俺だって寝ようと思っていたんだよ……!」

しばらくは、ブリンガーの邸でゆっくりとセレスティアと過ごそうと思っていたばかりなのに、なぜこんなことに!!

「何やっていたんですか? 早く寝ないから……」
「俺だって静かに寝たい……」

ぽつりと思わず本音が漏れた。

セレスティアを見ていて、彼女から滲み出た闇を追い払っていたとは言えずに、口を閉ざすと、呆れたままでセレスティアがベッドから降りていく。
そして、お互いに急いで荷支度を始めた。





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