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闇のシード 9
しおりを挟む唇が重なる直前に一瞬だけ見えたのは、ヴェイグ様の差し出した手に闇が吸い込まれていくところだった。
「……セレスティア。カレディア国に行ったのは、闇のシード(魔法の核)を探すためだけではない。お前も探すつもりだった」
「私が……闇のシード(魔法の核)に狙われていたからですよね……」
「違う。名前も知らなかったが、一度セレスティアを見たことがある。だから、もう一度会いたいと思っていた。まさか、天井から落とされるなど予想外だったが……」
そして、闇のシード(魔法の核)に狙われていることがわかり、私を離さずに毎日毎晩一緒にいたと……。それは、私が知らずのうちにヴェイグ様が守ってくれていたのだ。
ヴェイグ様の気持ちに、胸が締め付けられる。
「それと、闇のシード(魔法の核)と引き換えにするつもりだったのは、セレスティアがこちらにいるのだから、闇のシード(魔法の核)も出せと、交渉するつもりだった。セレスティアを利用しようとしたのは間違いないが、カレディア国に渡すつもりなどなかった」
「……本当に?」
「当たり前だ。誰が、セレスティアを他人に渡すものか……以前、好きだと言ったのを忘れたのか?」
真剣な眼差しでヴェイグ様が言うと、戸惑ってしまい顔が上げられなくなる。
「……セレスティア。心配したんだ」
「心配してくださったのですか?」
「した……セレスティアがいないと気が狂いそうになる……」
ヴェイグ様の髪が、私の髪をくすぐるほど抱き寄せられた。
「それに、返事もくれないのか……以前も告白したのに、まだ好きだと聞いてない」
自分の気持ちには、気付いている。だから、ヴェイグ様にカレディア国に売られようと思った時に、自分の感情が抑えられなくなっていた。
「……好きです……ヴェイグ様が好きなのです」
♢
ヴェイグ様に抱きかかえられて、闇のシード(魔法の核)の中から出ると、中からではわからなかったが、段々と小さくなっていた。
周りは、イゼル様をはじめ、ロクサスやマティアス様、陛下や聖女、聖騎士たちが取り囲んでおり、ヴェイグ様が闇のシード(魔法の核)に触れれば、そのまま彼に吸い込まれていったという。
私は、あの闇のシード(魔法の核)の中で、ヴェイグ様に返事をしたあとに、彼の腕の中で気を失い、目が覚めればカレディア国のどこかの部屋だった。
どうやら、丸一日眠っていたらしい。
目が覚めれば、慈しむような眼でヴェイグ様が私を撫でてくれる。こんなことをされるのは初めてで戸惑いながらも、嬉しいと思えた。
「……ヴェイグ様。ありがとうございます……それと、ごめんなさい」
「素直だな……だが、謝ることはない。勘違いさせてしまった詫びはする」
「でも、闇のシード(魔法の核)は、どうなったのですか?」
「俺の身体の中だ。カレディア国の陛下と聖女機関とも話はつけたから、心配いらない」
その言葉にホッとすると同時に心配になる。
あの闇のシード(魔法の核)を身体に取り込んで大丈夫なのだろうかと……。
「そう心配するな。あれは、すでにカレディア国では管理できないものだ。封印したとしてもいずれ破られる。だから、闇属性の俺が取り込んだ方がいいのだ。それに、セレスティアも俺の手の中にあるんだ。カレディア国の聖女機関だろうが、敵うわけがない。出さないなら、国ごと手に入れてもいいのだがな」
「魔王みたいなこと言わないでください」
腹黒そうな笑顔でにやりとされると、本当に国を落としそうだと思える。
「どちらにしろ、カレディア国は闇のシード(魔法の核)を手放すいい機会だったのだよ」
「素直に受け入れてくれたのですか?」
「そんなことは知らん」
どんな交渉をしたのかはわからないけど、無理やり納得させた気がする。
あの闇のシード(魔法の核)の中に恐れずに入り、私を抱えて出て来たヴェイグ様にさぞ驚いたことだろう。誰も触れられないと思っていた秘匿の闇のシード(魔法の核)を取り込んだのだ。
ヴェイグ様が、闇のシード(魔法の核)を取り込んだことを見れば、誰も手が出せないと思ったのだと思える。
「ヴェイグ様。カレディア国の陛下は苦労性だと言いませんでしたかね。あまり困らせないでくださいね」
「勝手に困っているのは、あちらだ」
王弟殿下なのに、自由で強気な発言に陛下たちのたじろいだ姿が浮かんでしまう。
「それと、しばらくカレディア国で休むことになった。シオンたちも追いかけてくるはずだから、セレスティアはここでゆっくりと休め」
「そう言えば、ここはカレディア国のどこなのですか?」
「以前、カレディア国に来ていた時に開放されていた離宮だ」
「まぁ……」
ちゃっかり離宮まで開放させるとは……。
「でも、ヴェイグ様がそばにいて下されば、ゆっくりと休めますね」
「シオンたちが来るまでは、二人っきりだ。一緒にパズルでもして過ごそう」
「はい……嬉しいです」
そう言って、ヴェイグ様の手が絡み、額がこつんと触れるほど顔が近付いてきていた。
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