45 / 55
押し寄せる後悔
しおりを挟むセレスティアがシュタルベルグ国の王弟殿下ヴェイグに救われてあの闇のシード(魔法の核)から出て来て数日。
あの中にセレスティアがいるなど、想像もつかなかった。それ以上に、あのぞっとする闇のシード(魔法の核)の中に、王弟殿下ヴェイグは迷わずに入っていったのだ。
そして、セレスティアを連れ戻した王弟殿下ヴェイグは、シュタルベルグ国に以前も解放していた離宮にセレスティアを隠して、あれから一度もセレスティアに会わせてくれない。
セレスティアがいなくなり、エリーゼとの浮気がイゼルにもバレてしまい、父上にも報告された。ロクサスにまで、セレスティアとの婚約破棄したことを責められるような目つきで見られる。
針の筵のように、居心地が悪い。
それに、エリーゼとも会えなくなっていた。いや、会わなかったのだ。
毎日の光のシード(魔法の核)を完成させるのに、聖力の使い過ぎで毎日倒れていたエリーゼにイゼルはもう諦めていた。そんなところに、あの闇のシード(魔法の核)の事件が起きた。
そのうえ、セレスティアのように突出した能力もなく、あの場で逃げようとまでしたエリーゼに、今まで寄せていた好意は何だったのだろうかと思えるほど冷めていた。
「……聞いておるのか。マティアス」
「聞いてます。ですが、これでは、戦争のない国盗りです……」
王弟殿下ヴェイグがセレスティアを救い、闇のシード(魔法の核)を鎮めた。
そのおかげで、カレディア国は無事だった。
そこまでは良かった。だが、王弟殿下ヴェイグは、離宮にセレスティアを隠し、カレディア国をシュタルベルグ国の庇護下に入るように通達してきたのだ。
言葉はいいもの、実際はカレディア国をシュタルベルグ国の属国にするというものだ。
それも、シュタルベルグ国の下につくのだ。
「カレディア国が支配されるというものなど、簡単に受け入れられるわけが……」
「だが、あの闇のシード(魔法の核)をたった一人で鎮めたのですぞ……とても、我々が対抗できるとは……そうなると、戦になりカレディア国は滅びます」
シュタルベルグ国は大国。竜騎士団も備えており、血を流さずに抵抗することはできない。
「受け入れるしかない……っ」
苦渋の決断を強いられた父上が、表情を歪ませる。
王族を廃止するわけではない。あくまでも属国なのだ。カレディア国は、今までと変わらないだろう。だが、シュタルベルグ国には、二度と逆らえないカレディア国になってしまうのだ。
「……マティアス。お前を王太子殿下から外す」
「そんなっ……」
「セレスティアと婚約破棄をしたことがそもそもの始まりなのだ。見過ごすわけにはいかん。わかったら出ていけ。しばらくお前は謹慎だ。期間は、決めない。私の気がすむまでだ」
「しかし、父上の御子は私一人で……っ」
父上には、私しか子供はいない。その私が王太子殿下から外れるなど……。
すると、イゼルは厳しい表情のままで父上の前に立った。私を恨んでいるかのように。
「闇のシード(魔法の核)を伝えなかったことやセレスティアのことを教えなかった責を考え、今はこれだけに収めるのです。すぐにお下がりください」
そう言って、執務室に控えているロクサスに下がる様に合図すると、ロクサスが扉を開ける。
「ちなみにエリーゼは、すでに謹慎処分を下しております」
イゼルが、部屋を出ようとした私に冷たく言い放った。
エリーゼなど、もうどうでもいい。
こんなはずではなかった。セレスティアと婚約破棄をして、聖女を解任しただけで、こんなことになるなど……。
茫然したまま、言いようのない後悔が押し寄せたままで、有無も言わさずに謹慎処分を受けて、陛下の執務室を追い出された。
17
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
義妹に苛められているらしいのですが・・・
天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。
その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。
彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。
それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。
儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。
そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる