伯爵令嬢は狙われている

屋月 トム伽

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誓約、破滅竜シュクリオス

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吹きすさぶ風の中、ヒューゴは破滅竜の前にいた。

「破滅竜、私達はお前からリアを取り上げたりはせん、クライスとリアを離せ。」

「私とリアを引き離そうとした人間を出せ。」

「お前が手を汚さなくとも、残ったあいつらのうち誰かが殺るだろう。恐らくキース辺りがするだろうな。」

「…リアと共に生きたい。飛竜とテレーズが生きたように…」

「ならこれからもリアの中で生きろ。」

「居心地の良かったリアの中で眠っていたい。」

「その為に私と約束を交わしたのだろう。今戻してやる。」

破滅竜は両手を差し出し、クライスとリアをヒューゴの前に差し出した。

破滅竜の両手の上でオーブの中にクライスはリアをしっかり抱き締めていた。

ヒューゴは自分の封魔のシードをだした。

「今、誓約を果たそう!破滅竜シュクリオス!」

カッと光が辺りを包み、リヒト達は光を見ていた。


「一体何なんだ?ヒューゴは何をしているんだ?」

リヒト達はわけがわからず、ただ見ていると飛竜が話した。

「リヒト、恐らくヒューゴというやつは破滅竜と誓約を結んでいたのだ。」

「誓約?」

「誓約の内容は誓約をした者同士以外はわからんが、リヒト達を下がらせたのは、竜の名を聞かせない為だ。」

「名前?」

「竜の名は誓約の証だ。」

その時光が消え、破滅竜の姿が消えていた。

「竜が消えた…」

マルクはポツリと呟いた。

キースはいち早く駆け出した。

「俺達も行こう。」

リヒトも声をかけ、駆け出した。

ヒューゴは倒れすでに事切れていた。
ヒューゴの前にはクライスがリアを抱き締めたまま倒れており、風竜が守るように二人の側にいた。

「緑色のオーブ…クライスの風の加護だ…」 

マルクは二人を見て言った。

「ずっとこのオーブの中にリアはいた。破壊竜はそれを大事に抱えていたんだ。クライスがリアをずっと守っていたのか…」 

キースはそういうと、辺り一面水竜の癒しをかけた。

リヒトはヒューゴに声をかけていた。

「ヒューゴ、起きろ。ヒューゴ!」

「無駄だ。命をかけ誓約を果たしたのだ。」

飛竜はそう言った。

マルクとカイはクライスとリアを確認していた。

「…生きてる。リヒト様!クライス達、生きてます!」

マルクが叫ぶと風竜は目をつむり、クライスの中に消えた。

「キース!頼む!二人を助けてくれ!」

リヒトの言葉にキースは益々癒しを強めた。

「当たり前だ!絶対に死なせん!」




キースの水竜の水色の光にクライスとリアはフッと目があいた。

「…リア」
「…」

二人はお互いを見て、リアはまたそのまま眠った。

クライスはリアを抱き締めたまま体を起こした。

キースは二人が起きたことを確認したからか、ガクンと膝をつき癒しが止まった。

クライスはリアを力強く抱き締め、皆を見た。

「…破壊竜はどうした…?」
「わかりません…」

マルク達はわからず答えられなかった。

「恐らく、以前のようにリアの中に戻った。あのヒューゴという者が戻したのだ。」

飛竜が答えるとクライスはヒューゴを見た。

「ヒューゴはどうしたんだ?どうやって…?」
「ヒューゴは死んだ。お前達二人を守ったんだ。」

リヒトの言葉にクライスは愕然としていた。

「…リアがまた悲しむな。」
「クライスが支えてやれば大丈夫だ。」

リヒトはクライスの肩に手をおき言った。

「城に帰ろう。町まで行けば、騎士団が来ている筈だ。立てるか?」
「ああ。」

クライスはマルクとカイに支えられながら立ち上がった。

フラフラだが、リアを大事に抱えるクライスを見て、誰も代わろうかとは言えなかった。

「キース、大丈夫ですか?俺に捕まって下さい。」

カイはクライスを起こすと次はキースに寄り、肩を貸した。

町に向かう為歩き始めると、レイドールが倒れているのを見つけた。

クライスは殺したい衝動に刈られたが、力は残っていなかった。
キースは、レイドールを蹴り、レイドールは目を覚ました。

「起きろ!このクソが!」

キースに肩を貸しているカイも冷たい目で見ていた。

レイドールはキースの蹴りで目を覚まし、怯えていた。

「よくもリアをこんな目に合わせたな!」
「ち、違う!俺はシードを取りだそうとしただけだ!」
「竜は俺達を器とし、選んだんだ。取りだす?それは竜をも侮辱する行為だ!」

キースは魔力がつきかけながらも水の槍を出した。

「た、助けてくれ!リヒト、いや、リヒト様!助けてくれ!」

レイドールはリヒトにすがり付こうとしたが、リヒトは止める気はなくヒューゴの亡骸を抱えたまま冷たい目で言った。

「どこかの愚か者が破壊竜に手を出したせいで、疲れ過ぎてしばらく何も見えん。」

リヒトの言葉にレイドールは逃げようとした。

「ひぃっ…!」

キースは水の槍を掲げるとカイが手を支えた。

「俺もやります…」
「…お前いいやつだな。」
「父さんは俺を善人だと言いました。そのまま善人でいろと…レイドールは生かしておいても害にしかならない。」

そう言いながら、キースの水の槍を凍らせた。

「キース、俺が飛ばします。」

マルクも手を掲げ、凍った水の槍に光が纏った。

三人の力で、凍った水の槍は勢いよく飛び、レイドールを貫いた。
レイドールの最後だった。

「…そのまま、ほっておけ。後で騎士団が回収するだろう。」

リヒトはそう言い、皆で町に向かい歩いた。

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