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<三> 憂鬱な水曜日
8 憂鬱な水曜日
しおりを挟む8 憂鬱な水曜日
準備室には必ずしも毎日訪れることができるわけではなかった。
テストや学校行事の関係で入室させてもらえないこともあったし、それ以外にも職員会議の行われる水曜日は断念せざるを得なかった。
毎週水曜日は瑛斗にとって憂鬱な日となった。
その原因は会いに行けないだけではない。
三田先生の英語の授業は火曜日と木曜日にある。
そのうちの木曜日だけが特に、先生から気だるい雰囲気が滲み出ることに瑛斗は気がついた。
思えば初めて目撃したのも水曜日の夜だった。
以降、瑛斗は水曜日の夜は寄り道をしてから帰るようになった。
部活には出られないから学校近くの運動公園でランニングをしたり、柄にもなく図書館に行って宿題を片づけたりもした。時にはこっそり持参した私服に着替えて学校から離れた場所のバッティングセンターへ行ってみたり、仕事帰りの大人たちで混雑するショピングモールをぶらつきながら無意味な時間を過ごしたりすることもあった。
そうして時間を潰してからあの日と同じ時間帯に帰路につく。
すると毎週必ず、例のホテル街で佐上と歩く三田先生を見かけた。
あの日と違うホテルの前であったこともあれば、ただ歩いているだけで建物の中に入っていくところまでは見なかった日もあった。
しかしどんな状況であれ、その界隈にいる目的はひとつの他にありえない。
だから毎週水曜日の夜、見なくてもいいものをわざわざ自分の目で確認しに行った。
今日こそ三田先生と佐上は別々に過ごしていてほしい――そんな願望は無情にも毎回打ち崩された。
瑛斗はやり場のない憤りの炎に身を焦がしながら暗い道を帰宅し、晩ご飯も食べずに布団に潜り込んだ。
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