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<十五> 再び
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高校の非常勤講師を辞めた後、しゅーちゃんは出身大学の大学院に進んでいた。もともと辞める以前から新年度には大学院生と非常勤をかけもちする予定だったそうだ。
今は教職には戻らず学業に専念し、大学時代の恩師のもとで外国の芸術文化に関連することを学んでいるらしい。
親友の河村がしゅーちゃんの出身大学に進学したのは偶然だった。キャンパスが違っていたため遭遇したことはなかったらしいが、しゅーちゃんがたまたま見かけた学内広報誌に野球部の活躍が載っており、河村の名前を見つけ、試合の情報を見ているうちに、瑛斗が別の大学に進学して野球を続けていることを知ったらしい。
しゅーちゃんが試合を見に来た日。先輩たちに「片づけはいいから早く会ってこい」、「もう誕プレいらねえな」と冷やかされながら、急いでユニフォームからジャージに着替えてロッカールームを出た。
球場の出入り口を出ると、すぐ目の前の木陰でしゅーちゃんが不安げにこちらを見ながら立っていた。
緊張と興奮と混乱が入り混じり、ほとんどまともに言葉を発することができなかった。しゅーちゃんも瑛斗を見るなり再び涙をこぼし始め、会話どころではなかった。
先輩たちと大学へ戻るバスに乗り込むまでのほんの短いひと時だったが、結局ほとんどの時間、ただお互いの手を取り、見つめ合っていた。
周辺に植えられた木々のあちこちで、蝉の鳴く声が響いていた。
相変わらず夢を見ているようだと瑛斗は感じていた。
それでも、頑張って進学し、挫けずに野球を続けてきたことが、今ようやく報われたのだと、そう強く思えた。
別れ際、しゅーちゃんが震える声で「許してほしい」と言った。
瑛斗は「そんな」と慌てて首を振り、人目も憚らずにその手を引き寄せた。
「俺の気持ちは、ずっと変わっていないよ」
華奢な体を両腕の中にそっと包み込むと、しゅーちゃんはまつ毛を濡らしたまま、胸元におずおずと顔を寄せてくれた。
たったそれだけのことで瑛斗は言葉にしがたいほどの幸福感に満たされた。
翌日から瑛斗はしゅーちゃんと毎晩のように電話で話した。
驚くことにしゅーちゃんは電話番号を変えていなかった。
瑛斗から電話がかかってくるかもしれないと心のどこかで期待していた、としゅーちゃんは正直に打ち明けた。
一方の瑛斗にはそんな勇気がなかった。拒絶されることを恐れるがあまりに、行動に移せなかったのだ。
本心では、一年もの間ずっと忘れることも諦めきることもできず、欲しくて欲しくてたまらなかったのに。
そう伝えると「ごめんね」としゅーちゃんは瑛斗に謝った。
謝る必要なんてない。瑛斗は何度でもそう答えた。
結局、行動を起こしたのはしゅーちゃんの方なのだ。
自身のことを「弱い」とこの人は何度も言ったけれど、自分よりもずっと強いし、この人を守りたいと言いながら、助けられているのはいつも自分の方なのだ、と瑛斗は改めて思い返したのだった。
そうして迎えた夏季オープン戦の終盤、試合が少なくなってきた夏の終わりの休日に、ふたりはようやく会えることになった。
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