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5章、呪われた二ディスの沼地
1、集う者たち
しおりを挟む*これまでに作中で登場した虹の魔法
・【極彩の魔剣】――――あらゆる形状変化を可能とする近接複合魔法。
・【光輝の裁き】――――圧縮した魔力弾を放つ遠距離魔法。その軌道は自在に操作することが可能である。
・【黄金の装具】――――エドワーズの師曰く、「最強の付加魔法」。黄金色の魔力は、竜種の鱗並みの防御能力を発揮する。
武器、魔法、その他のあらゆるものが強化対象。虹の魔術師、『変幻自在』の代名詞。その性質上、硬化させて使用する場面が最も多くなる。
「付加の対象先を移し替える」というような芸当も可能。持続時間、魔力消費効率に関しては、虹の魔法の中でも随一。数多の強者たちが、この絶対防御の前に敗北を喫した。
八大神徒、『黄金の守護者』バルメルがその身に纏っていた鎧は、盟友リンセンドから贈られた物である。この世に生まれた最初の竜種。リンセンドの魔力を宿した鱗は、『形状変化』と『反射』の能力を併せ持つ。毒、熱、冷気なども通さない。
(『反射の籠手』の機能は、この魔法の効果を簡易的に再現したもの)。
闇に関わる全ての者たちは、『黄金竜』の放つ輝きに恐れをなした。リンセンドの鎧とは、本来形ないものである。だからこそ何にでもなり得るのだ。望めば最強種の力をも顕現させることが叶うだろう。
・『万物を貫く者』ドゥーラハル――?????
・『解放の翼』ロバス――?????
・『至高の導き手』ユナレ――?????
・『狭間の眼』アーモスゲリム――????
・『最後の神徒』名も無き八人目――?????
********************
ニディスの沼地。その近くにある村から少し離れた場所。
現在。俺は、リーゼとティアの二人を相手に模擬戦中だ。次々と襲い掛かってくる刃の雨を、俺自身はかなり余裕をもって回避していく。
「こんのぉ!ちょっとくらい、当たりなさいよー!!」
懐に飛び込んでくるティアの顔。今にも噛みついてきそうだ。
『魔力防御』任せの攻撃。それでも以前よりはマシになっている。たまに嫌なところを突いてくるので、成長を感じた俺は嬉しくなった。
(リーゼの方は――)
考えた瞬間、【氷の魔矢】が数センチ真横の辺りを掠めた。今回は実戦を想定しているので、魔法はあり。
ティアも、俺が作った寸止め木刀ではなく、自らの『神装』を手にしている。腕を後ろに引いて大振り、フェイントだ。そのまま突進して体当たり。遠慮は一切ない。
見れば、俺の足には氷のツルが巻きついていた。流石はティアのリーゼ。これでは身動きが取れない。
当たれば骨が砕ける威力の一撃が、目前に差し迫る。
――ゴッ、カィィィィンッ!
「きゃ!?」
短い悲鳴と共に、栗色髪の獣人少女が吹き飛んでいく。恐らく、俺に『反射の籠手』を使わせることが、リーゼの目的なのだろう。
上手くやられてしまったな。
「大丈夫?ティア?」
「ウウゥ……!おでこがジンジンするわ」
リーゼが心配そうに声を掛けている。ティアは、薄っすらと赤くなった額の部分を擦っていた。
「これで一旦、仕切り直しか?」
「余裕でいられるのも今のうち。今日こそは、私たちの方が勝つ」
「そうよそうよ!覚悟しなさい、エドワーズ!!」
バチバチの闘志。これまでの戦績は五戦五勝で、俺は二人に負けたことがない。
しかし、現状押されているのはこちら側だ。引っ付いたら離れない、ティアの戦法。つい先日も複数人の魔族を相手に、余裕で立ち回っていた。
(さーて、次はどうくる?)
ゆっくりと風が巻き起こる。リーゼの魔法、広範囲の視界を遮る【凍てつく領域】だ。
氷嵐の檻が、俺の周辺を包み込む。上にも横にも逃げ場はない。向こう側で何かが動いた。正面から斬りかかってくる。気づくと一、二……どんどん増えた。
(この物量は、ちょっとマズいな)
ティアの姿形をした氷の分身。どれも丁寧に『魔力防御』で固めている。本物を見分けられないようにするためか。
直前まで引きつけ、分身と分身の合間を潜り抜ける。この先にいたのは、万全の体勢で『神装』を構えるティアだった。
「あたしたちの勝ちよっ!」
一瞬、剣を振り切る動作が遅くなったのを見逃さなかった。
初めての勝利。その結果は、目の前にいる俺の命を奪ってしまう。無意識に加減をしたのだ。つまりティアにとって、今の俺の実力はその程度の認識ってことなんだろう。
仕方ない。少しだけ本気を出してやろうか。
――ガシッ。
「えっ……そ、そんなのあり!?」
ティアの剣、その刃を俺は片手で掴んで止めた。
【黄金の装具】。黄金の魔力で覆われた手のひらは、どんな攻撃も通さない。衝撃すら消してしまうのだ。こういう使い方を、俺はまだリーゼに見せたことがない。
「何よそれ!卑怯よ卑怯!」
「最後に加減をしたお前が悪いだろ」
「そうだけど、そうだけど……悔しいわー!!
ちょっとこれ、ほどきなさいよ!」
全身を魔鋼糸で拘束されたティアが、芋虫のようにジタバタともがいている。このタイミングを狙っていたのだ。
残りはリーゼだけ。こうなった以上は、きっと正々堂々自身の大技で挑んでくる筈。
――グォォォォオオオオオオ!!
一気に視界が晴れる。そこに青髪の少女の姿を見つけた。
傍らに佇む氷像の最強種。リーゼの最強魔法【氷竜】だ。転がるティアに視線を向けている。俺は余裕の表情。リーゼが長く息を吐く。どうやら腹が決まったらしい。
「【氷竜《リュシェール》の息吹き】!!」
ドラゴンの氷像が口を開いた。絶対零度の風が襲い掛かる。範囲型の【永久の凍結】。
これを防げる魔法は多くない。俺は腕を突き出し、自らの前方に『永久貯蔵魔石』の全魔力を解放した。
「付加魔法。――【黄金の息吹き】」
氷嵐の風が黄金色に染まる。熱の無い、炎の嵐。それが向かう先は遥か上空。そのまま跡形もなく消えてしまった。
リーゼがパタリと、地面の上に膝をつく。「もう限界」と、顔つきが明らかにそう言っていた。
「また俺の勝ち、だな?」
*****
模擬戦を終えた俺たち三人は、村ではなくその付近にある冒険者ギルドの拠点へ向かった。
百以上はあると思われるテントの数。冒険者の他にも、大勢の人間が集まってきている。
フリーの傭兵や、元軍隊所属の腕に覚えがある者たちだ。彼らもギルドの作戦に参加する。
欲にギラついた目。狙いはもちろん、古代魔導具の遺跡だろう。
沼地の魔物に捕らえられた男が、その巣穴から命からがら逃げ出した時に見たそうだ。無数の骨と一緒に積み上げられた、鋼色に光る宝の山を。
持ち帰ってきた直剣二本、短刀一本。肩当て、指輪、マント、何から何まで質の良い魔装具や魔導具だったらしい。
その中でも、特に価値のあった品が指輪だ。どんな火や炎でも、その場で吸収して無効化する。誰もが欲しがる古代魔導具。
報告を聞いたギルド側はこのように考えた。「もっとあるぞ」と。そしてこれだけの手勢を集めた。総勢二百十一名。そのリストに俺たちの名前は載っていない。
「疲れた~。やっと帰ってこれたわね」
「相変わらず凄い数の人」
大きなテントの入り口を潜って、中へと入る。俺たちに向けて用意されたものではない。ある人物から譲り受けた物だ。
正直、古代魔導具には興味がない。欲しいものは別の物。俺たちの今後の旅の道のりを一気に短縮できるかもしれない、とんでもねえお宝だ。
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