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6章、北の大地
9、女王との謁見
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翌朝。城に向かうための準備をする。よれよれの変装用コートはおさらばだ。都市の中を出歩いていた時とは違い、リーゼとティアも普段通りの格好をさせている。
「これで動きやすくなったわね!」――ティアは、遠足前の子どものようにはしゃいでいた。目を離すと何をしでかすか分からないので、リーゼに見張っておいてもらおう。
ティアのケモ耳と尻尾は隠させた。あとでソフィアにでも相談すればいい。ここでも獣人族は差別されているのだろうか?用心するに越したことはないだろう。
すべての準備を終えた頃、屋敷の玄関口にある扉が叩かれる。開けてみると、昨日話していた通り、そこには軽装備姿のセシルが立っていた。
「約束通り、迎えに参りました。エドワーズ様」
「すごく綺麗な人……!」
「くんくんくん。この匂い、覚えがあるわ。あなたがソフィアね!エドワーズのことを狙っているんでしょ?隠さなくても全部知っているわ!」
「あの……エドワーズ様。こちらの方は?」
「仲間のティアです。青髪の子がリーゼ。
――人違いだ、バカ!この人はセシルさん。昨日の夜、寝る前に話しておいただろ?」
「そうだっけ?忘れちゃったわ!」
「この人がフレアと同じ、騎士団の副団長さん?」
「初めまして、リーゼ様。そしてティア様。ようこそオストレリア王国へ。女王陛下の命により、みなさんを王城まで案内させていただきます」
馬車に乗って城へと向かう。フカフカのソファー。中は縦に長い作りになっている。同乗者のセシルと合わせて四人乗っても、十分にくつろげる広さがあった。
「まるでベッドみたいね!」
ティアが早速、座席の上に寝転がる。リーゼが「どうしようもない」と言わんばかりに俺を見た。気持ちは分かる。
「女王陛下に謁見後、ソフィア様の元にまで連れていく手筈です。滞在中は、城内に住んでもらうことになるでしょう。まずはしっかりと長旅の疲れを癒してください」
「ソフィアは元王族でしたよね?ってことは、その女王陛下は――」
「はい。実の妹君です。ちなみにお二人の関係は良好ですよ。その辺りの事情については、ソフィア様から説明があると思います」
「全てソフィア様の指示ですよ」と、セシルは言った。なら、それに従おう。
リーゼが珍しくそわそわしている。俺は昨日済ませているが、やはりどうしても気になるらしい。
「フレアは?フレアとはいつ会えるの?」
「謁見式を終えたらすぐにでも。団長も、リーゼ様と再会できることを心待ちにしていましたから。
夜には歓待の席を用意してあるので、話をする時間は十分にありますよ」
「かん……たい?それってなんなの?」
リーゼとセシルの会話を横から聞いていたティアが首を傾げる。
「俺たちをもてなしてくれるんだよ。まぁつまり、ティアの大好きなご馳走が出るってことさ」
「ホントに!?」――ティアは大喜びだ。その様子を微笑みながら眺めるセシル。こうも素直に喜ばれると嬉しいのだろう。
ティアとフレア、二人の性格は似ているからな。お互い気が合うはずである。
「お城にはまだ着かないのかしら?今から楽しみね!」
「ティア。言っておくけど、ひとりで全部食べ尽くすのは無しだからな?」
「エドワーズ様、心配には及びませんよ。参加される方は他にも大勢いますから」
セシルは勘違いをしている。パーティーは小規模なものではないと言いたいのだろう。気にしているのはそこではない。
ティアの食欲には限りがないのだ。滞在期間中、城にある食糧庫が空になってしまわないことを祈ろう。
「遠くからだとよく分からなかったけど。近づいてみると結構大きいわね!」
「こんなに高い壁、『魔力防御』を使っていても、飛び越えるのは難しそう」
その迫力を目の当たりにして、ティアとリーゼが驚いている。
昨日とは違い、城の正面口を通って中に入った。内側の構造は複雑で、簡単には奥の方にまでたどり着けないようになっている。いくつもの塀で区画を分けられているようだ。開閉式の門を通って、先に進んでいく仕組みとなっている。
「警備がやけに厳重ですね?」
「かつての失敗があるので。これでもやり過ぎということはありませんよ」
「……かつての失敗?」
「ここには王国の守りの要、古代魔導具が設置されていますから。何がなんでも絶対に守り通さなければなりません」
「(そうか。やっぱりここにあるのか)」
予想通り。セシルが口にした「かつての失敗」。それが『古代魔導具』の破壊という、起きてはならない結果に繋がったのだろう。
「セシル。あなたってかなり鍛えているのね。見れば分かるわ!」
「王国最強と呼ばれている騎士団の一員なので。
ティア様の方こそ、相当なものなのでは?腰に付けた剣。おそらくそれは魔剣でしょう。先ほどからただならぬ感じがしていましたから」
「えーっと。これは魔剣じゃないわ。確か『神装』っていうのよね?エドワーズ?」
「……まさか」
「本物ですよ。使い手のティア自身が、その力をまったく引き出せていないんで。今のところは宝の持ち腐れなんですけど」
自らの意思で使い手を選ぶ武装。ものによっては半世紀以上、誰も目にも触れられないままである。人々の記憶の中から忘れ去られてしまうまで。故に『神装』。最上の武器である。
「今はこれの扱い方について習っている途中なの。エドワーズが言うには、あたしでもそのうち出来るようになるって!」
「十年後くらいにな」
それ以上掛かるかもしれない。全ては本人次第だが。
「エドワーズは、私とティアの師匠。誰よりも強くて賢い。でもたまに――」
「抜けている」「抜けているのよね!」
「お前らなあ……」
リーゼとティアが口を揃える。「仲が良いんですね」と、セシルに言われた。毎度のことながら納得いかない。
馬車が止まる。どうやら着いたようだ。白銀の世界の中にそびえ立つ、巨大な王城。いくつもの塔が連なっており、青い屋根の一部には雪を被っていた。息をのむほど美しい。
ここにもハーマイルの像が立っていた。都市の中央にあるものと同サイズ。合わせて三匹の神獣が王国を守護しているのだろう。
「ウゥ……!何度見てもおっかないわね」
「ティアは恐がりすぎ。何も悪いことはしていないんだから。堂々とすればいい」
「すみません、セシルさん。ティアのやつ、初めて見た時からこんな感じで……」
「大丈夫ですよ。確かに牙を向いているように見えますから。そのうち慣れると思います」
セシルの案内で大広間に通される。これからソフィアの妹である女王陛下との謁見だ。
ティアの『神装』は流石に置いていく。預けようとしても、使い手のティア以外には触れることができない。箱の中に入れられた剣がカタカタと震えていた。周りにいた兵士たちがギョッとする。説明するのが面倒なので放っておいた。
「な、なんかたくさん人がいるわよ?」
「周りからの視線をすごく感じる。……落ち着かない」
「国に仕えている高官や貴族たちです。みなさんのことが気になるのでしょう。特に、エドワーズ様に対して向けられる関心がもっとも多いはずです」
「えっ?俺ですか?」
「はい。あなたは『ローレン様の意思を引き継がれた若者』ですから。今朝の時点で亡くなられたことは周知してあります。見定めようとしているのですよ。
あの方が、この国に遺されていった最後の希望を」
話が大きくなってきた。しかし、もともとそのつもりである。セシルも信じているらしい。両脇に立つ大勢の大人。皆、確かに俺を見ている。
せめてローレンの名前にだけは泥を塗らないようにしたいと思った。
「イルシア様が来られます。三人とも、膝をつけて頭を下げてください」
言われた通りにする。ティアが少しだけ遅れたが、リーゼが面倒をみてくれた。静まり返る空間。こういう場は初めてなので緊張してくる。
足音を響かせながらやって来た人物が、奥にある立派な椅子の上に腰掛けた。ソフィアの妹と聞いていたが、彼女の方が歳上に見える。主に身長と胸の辺りが。
「遠い南の国からよく着てくれました。ようこそオストレリア王国へ。わたくしが現女王のイルシアです」
「エドワーズです。右にいるのがリーゼ、左がティア。二人とも、俺の旅の仲間です」
「ティア様以外は存じています。ローレン様から送られてきた手紙に書いてありましたから。……亡くなられてしまったことは残念です。
とにかく今は、あなた方が無事にここまでやって来れたことを喜びましょう」
形式上のやり取りが続いていく。短い時間で全て終えると、その場はお開きとなった。うまく説明できない違和感を感じ取る。
周りにいる大人たち。大国にしては微妙というか、大した人材ではなさそうだ。失礼だが、そう思う。どこにでもいる普通のモブたち。それが真っ先に思い浮かんだ印象である。
「この城の中は自由に出歩いてもらっても構いません。必要なものがあれば、何でも用意させましょう。――セシル、あとのことは頼んでもいいですか?」
「お任せください、女王陛下」
去り際、イルシアの口元が僅かに動いた。
――またあとで会いましょう。
「みなさんこちらへ。私に付いてきてください」
城の上階に部屋が用意されているらしい。だが、向かったのはそちらではなく、地下の方。
長い階段の下。分厚い鋼鉄製の扉の先に、あり得ない光景が広がっていた。
「見て!エドワーズ。どこもかしこも、まるで夜空の真下に映る湖みたい!」
「魔石……じゃないの?でも、なんだか少しだけ似ている気がする」
「(前に『暗がり山の洞窟』内で見かけた、あの動き出す通路とそっくりだな)
螺旋の階段。地底深くにまで伸びている。複数の階層が存在しているようであり、何故これで崩れないのか不思議だった。
廊下、壁、天井のすべてに魔力が流れている。それで強度を上げているのだろう。床板の上に足を乗せると、僅かに沈んだ。そのままエレベーターのように降下していく。
「ちょっと!?これ、いきなり動き出したわよ!」
「ティア様、大丈夫ですよ。これはそういうものですから。身を乗り出したりしなければ、比較的安全です」
「石板を魔力で支える仕組みですか。セシルさん、ここは一体……?」
「ファラウブム城の地下迷宮。かつてローレン様が考案され、王国の秘宝を守るために設計されたものですよ」
「おじいちゃんが?この場所を造ったの?」
「はい、リーゼ様。そのように聞いています。素晴らしい才能をお持ちだったと。
過去に追放された身の上だとしても、ローレン様がオストレリアの『知』であることは変わりありません」
安定した速度とバランスを保っている。信じられない規模だ。日ごとに正しい経路が変わるという。ローレンが手がけた場所。俺には決して真似できない。
やがて最下層に到着する。長い廊下の突き当たり。円卓を囲う大勢の人々が視界に入った。その中に銀髪の少女の姿を見つけて、俺はここに連れてこられたわけを理解する。
「あら、ようやく来たのね?」
「これで動きやすくなったわね!」――ティアは、遠足前の子どものようにはしゃいでいた。目を離すと何をしでかすか分からないので、リーゼに見張っておいてもらおう。
ティアのケモ耳と尻尾は隠させた。あとでソフィアにでも相談すればいい。ここでも獣人族は差別されているのだろうか?用心するに越したことはないだろう。
すべての準備を終えた頃、屋敷の玄関口にある扉が叩かれる。開けてみると、昨日話していた通り、そこには軽装備姿のセシルが立っていた。
「約束通り、迎えに参りました。エドワーズ様」
「すごく綺麗な人……!」
「くんくんくん。この匂い、覚えがあるわ。あなたがソフィアね!エドワーズのことを狙っているんでしょ?隠さなくても全部知っているわ!」
「あの……エドワーズ様。こちらの方は?」
「仲間のティアです。青髪の子がリーゼ。
――人違いだ、バカ!この人はセシルさん。昨日の夜、寝る前に話しておいただろ?」
「そうだっけ?忘れちゃったわ!」
「この人がフレアと同じ、騎士団の副団長さん?」
「初めまして、リーゼ様。そしてティア様。ようこそオストレリア王国へ。女王陛下の命により、みなさんを王城まで案内させていただきます」
馬車に乗って城へと向かう。フカフカのソファー。中は縦に長い作りになっている。同乗者のセシルと合わせて四人乗っても、十分にくつろげる広さがあった。
「まるでベッドみたいね!」
ティアが早速、座席の上に寝転がる。リーゼが「どうしようもない」と言わんばかりに俺を見た。気持ちは分かる。
「女王陛下に謁見後、ソフィア様の元にまで連れていく手筈です。滞在中は、城内に住んでもらうことになるでしょう。まずはしっかりと長旅の疲れを癒してください」
「ソフィアは元王族でしたよね?ってことは、その女王陛下は――」
「はい。実の妹君です。ちなみにお二人の関係は良好ですよ。その辺りの事情については、ソフィア様から説明があると思います」
「全てソフィア様の指示ですよ」と、セシルは言った。なら、それに従おう。
リーゼが珍しくそわそわしている。俺は昨日済ませているが、やはりどうしても気になるらしい。
「フレアは?フレアとはいつ会えるの?」
「謁見式を終えたらすぐにでも。団長も、リーゼ様と再会できることを心待ちにしていましたから。
夜には歓待の席を用意してあるので、話をする時間は十分にありますよ」
「かん……たい?それってなんなの?」
リーゼとセシルの会話を横から聞いていたティアが首を傾げる。
「俺たちをもてなしてくれるんだよ。まぁつまり、ティアの大好きなご馳走が出るってことさ」
「ホントに!?」――ティアは大喜びだ。その様子を微笑みながら眺めるセシル。こうも素直に喜ばれると嬉しいのだろう。
ティアとフレア、二人の性格は似ているからな。お互い気が合うはずである。
「お城にはまだ着かないのかしら?今から楽しみね!」
「ティア。言っておくけど、ひとりで全部食べ尽くすのは無しだからな?」
「エドワーズ様、心配には及びませんよ。参加される方は他にも大勢いますから」
セシルは勘違いをしている。パーティーは小規模なものではないと言いたいのだろう。気にしているのはそこではない。
ティアの食欲には限りがないのだ。滞在期間中、城にある食糧庫が空になってしまわないことを祈ろう。
「遠くからだとよく分からなかったけど。近づいてみると結構大きいわね!」
「こんなに高い壁、『魔力防御』を使っていても、飛び越えるのは難しそう」
その迫力を目の当たりにして、ティアとリーゼが驚いている。
昨日とは違い、城の正面口を通って中に入った。内側の構造は複雑で、簡単には奥の方にまでたどり着けないようになっている。いくつもの塀で区画を分けられているようだ。開閉式の門を通って、先に進んでいく仕組みとなっている。
「警備がやけに厳重ですね?」
「かつての失敗があるので。これでもやり過ぎということはありませんよ」
「……かつての失敗?」
「ここには王国の守りの要、古代魔導具が設置されていますから。何がなんでも絶対に守り通さなければなりません」
「(そうか。やっぱりここにあるのか)」
予想通り。セシルが口にした「かつての失敗」。それが『古代魔導具』の破壊という、起きてはならない結果に繋がったのだろう。
「セシル。あなたってかなり鍛えているのね。見れば分かるわ!」
「王国最強と呼ばれている騎士団の一員なので。
ティア様の方こそ、相当なものなのでは?腰に付けた剣。おそらくそれは魔剣でしょう。先ほどからただならぬ感じがしていましたから」
「えーっと。これは魔剣じゃないわ。確か『神装』っていうのよね?エドワーズ?」
「……まさか」
「本物ですよ。使い手のティア自身が、その力をまったく引き出せていないんで。今のところは宝の持ち腐れなんですけど」
自らの意思で使い手を選ぶ武装。ものによっては半世紀以上、誰も目にも触れられないままである。人々の記憶の中から忘れ去られてしまうまで。故に『神装』。最上の武器である。
「今はこれの扱い方について習っている途中なの。エドワーズが言うには、あたしでもそのうち出来るようになるって!」
「十年後くらいにな」
それ以上掛かるかもしれない。全ては本人次第だが。
「エドワーズは、私とティアの師匠。誰よりも強くて賢い。でもたまに――」
「抜けている」「抜けているのよね!」
「お前らなあ……」
リーゼとティアが口を揃える。「仲が良いんですね」と、セシルに言われた。毎度のことながら納得いかない。
馬車が止まる。どうやら着いたようだ。白銀の世界の中にそびえ立つ、巨大な王城。いくつもの塔が連なっており、青い屋根の一部には雪を被っていた。息をのむほど美しい。
ここにもハーマイルの像が立っていた。都市の中央にあるものと同サイズ。合わせて三匹の神獣が王国を守護しているのだろう。
「ウゥ……!何度見てもおっかないわね」
「ティアは恐がりすぎ。何も悪いことはしていないんだから。堂々とすればいい」
「すみません、セシルさん。ティアのやつ、初めて見た時からこんな感じで……」
「大丈夫ですよ。確かに牙を向いているように見えますから。そのうち慣れると思います」
セシルの案内で大広間に通される。これからソフィアの妹である女王陛下との謁見だ。
ティアの『神装』は流石に置いていく。預けようとしても、使い手のティア以外には触れることができない。箱の中に入れられた剣がカタカタと震えていた。周りにいた兵士たちがギョッとする。説明するのが面倒なので放っておいた。
「な、なんかたくさん人がいるわよ?」
「周りからの視線をすごく感じる。……落ち着かない」
「国に仕えている高官や貴族たちです。みなさんのことが気になるのでしょう。特に、エドワーズ様に対して向けられる関心がもっとも多いはずです」
「えっ?俺ですか?」
「はい。あなたは『ローレン様の意思を引き継がれた若者』ですから。今朝の時点で亡くなられたことは周知してあります。見定めようとしているのですよ。
あの方が、この国に遺されていった最後の希望を」
話が大きくなってきた。しかし、もともとそのつもりである。セシルも信じているらしい。両脇に立つ大勢の大人。皆、確かに俺を見ている。
せめてローレンの名前にだけは泥を塗らないようにしたいと思った。
「イルシア様が来られます。三人とも、膝をつけて頭を下げてください」
言われた通りにする。ティアが少しだけ遅れたが、リーゼが面倒をみてくれた。静まり返る空間。こういう場は初めてなので緊張してくる。
足音を響かせながらやって来た人物が、奥にある立派な椅子の上に腰掛けた。ソフィアの妹と聞いていたが、彼女の方が歳上に見える。主に身長と胸の辺りが。
「遠い南の国からよく着てくれました。ようこそオストレリア王国へ。わたくしが現女王のイルシアです」
「エドワーズです。右にいるのがリーゼ、左がティア。二人とも、俺の旅の仲間です」
「ティア様以外は存じています。ローレン様から送られてきた手紙に書いてありましたから。……亡くなられてしまったことは残念です。
とにかく今は、あなた方が無事にここまでやって来れたことを喜びましょう」
形式上のやり取りが続いていく。短い時間で全て終えると、その場はお開きとなった。うまく説明できない違和感を感じ取る。
周りにいる大人たち。大国にしては微妙というか、大した人材ではなさそうだ。失礼だが、そう思う。どこにでもいる普通のモブたち。それが真っ先に思い浮かんだ印象である。
「この城の中は自由に出歩いてもらっても構いません。必要なものがあれば、何でも用意させましょう。――セシル、あとのことは頼んでもいいですか?」
「お任せください、女王陛下」
去り際、イルシアの口元が僅かに動いた。
――またあとで会いましょう。
「みなさんこちらへ。私に付いてきてください」
城の上階に部屋が用意されているらしい。だが、向かったのはそちらではなく、地下の方。
長い階段の下。分厚い鋼鉄製の扉の先に、あり得ない光景が広がっていた。
「見て!エドワーズ。どこもかしこも、まるで夜空の真下に映る湖みたい!」
「魔石……じゃないの?でも、なんだか少しだけ似ている気がする」
「(前に『暗がり山の洞窟』内で見かけた、あの動き出す通路とそっくりだな)
螺旋の階段。地底深くにまで伸びている。複数の階層が存在しているようであり、何故これで崩れないのか不思議だった。
廊下、壁、天井のすべてに魔力が流れている。それで強度を上げているのだろう。床板の上に足を乗せると、僅かに沈んだ。そのままエレベーターのように降下していく。
「ちょっと!?これ、いきなり動き出したわよ!」
「ティア様、大丈夫ですよ。これはそういうものですから。身を乗り出したりしなければ、比較的安全です」
「石板を魔力で支える仕組みですか。セシルさん、ここは一体……?」
「ファラウブム城の地下迷宮。かつてローレン様が考案され、王国の秘宝を守るために設計されたものですよ」
「おじいちゃんが?この場所を造ったの?」
「はい、リーゼ様。そのように聞いています。素晴らしい才能をお持ちだったと。
過去に追放された身の上だとしても、ローレン様がオストレリアの『知』であることは変わりありません」
安定した速度とバランスを保っている。信じられない規模だ。日ごとに正しい経路が変わるという。ローレンが手がけた場所。俺には決して真似できない。
やがて最下層に到着する。長い廊下の突き当たり。円卓を囲う大勢の人々が視界に入った。その中に銀髪の少女の姿を見つけて、俺はここに連れてこられたわけを理解する。
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